5.2.3.3 運動量保存と力学的エネルギー

運動量保存と力学的エネルギー

これまで説明してきたように、物体の衝突においては運動量が保存されるわけですが、力学的エネルギーに関しては衝突に際して保存されるとは限りません衝突について考えるときは衝突直前から衝突直後の短い時間についてだけ考えるので位置の変化について考慮しません。つまり位置エネルギーは一定とみなします。ですので力学的エネルギーというのはこの場合運動エネルギーのことです。閉じる。本項ではそのことを説明します。

以下の例で考えてみます。

片方が静止していて e = 0

速度 v 、質量 m1 の物体A が、速度 0(つまり静止)、質量 m2 の物体B に完全非弾性衝突e = 0)し、合体し速度 v' になったとします。

このときの衝突前の力学的エネルギーは

    (物体A の運動エネルギー)+(物体B の運動エネルギー)= m1v² + 0 = m1v² …… ①

次に衝突後の力学的エネルギーを求めます。まず、衝突後の速度を求めるために運動量保存の法則の式を立てると

    m1v + 0 = ( m1 + m2 ) v'

  ⇒ v' = v

よって衝突後の力学的エネルギーは

     ( m1 + m2 ) v' ² =  ( m1 + m2 ) v² =  v² =  m1v² …… ②

< 1 であるので、① > ② 、つまり衝突後の力学的エネルギーの方が小さくなっています。

同質量、同速度で向かい合い、e = 1

同質量、同速度厳密ないい方をしますと、「速度の大きさが同じで向きが逆の2つの物体」です。「同速度」といいますと向きも同じという意味になってしまいますので。(3-1-1-1参照。)閉じるで向い合って弾性衝突e = 1)する2物体の力学的エネルギーを考えてみます。

質量を m 、速度をそれぞれ v 、-v としますと

衝突前の力学的エネルギーは
    12mv² + 12m(-v)² = mv² (-v)² と書いたのはわかりやすくするためであり答案を書く際には普通に v² で構いません。
あえて書くなら ( |-v| )² でしょうか。閉じる

衝突後の速度はそれぞれ -vv 前項の e = 1 で m1 = m2 の場合 参照。閉じるだから衝突後の力学的エネルギーは
    12m(-v)² + 12mv² = mv²

よってこの場合は衝突の前後とも力学的エネルギーが mv² で変化がありません。

e = 1 のときは力学的エネルギーは保存されるのです力学的エネルギーが保存される場合というのは保存力のみがはたらく場合です。e = 1 の弾性衝突というのは弾性力が無駄なくきれいにはたらく場合です。弾性力は保存力なので e = 1 の場合は力学的エネルギーが保存されるのです。e = 1 の場合は運動量も力学的エネルギーも保存されるということです。

衝突面にばねが設置されている場合、これは下で説明する物体の形が変形する場合のように感じてしまうかもしれませんが違います。ばねは元の形に戻るのでこれは物体の形が変形する場合ではなく弾性力がはたらく場合です。

同質量、同速度で向かい合い、e = 0.5

同質量、同速度で向い合って反発係数 e = 0.5 の衝突をする2物体の力学的エネルギーを考えます。

衝突前の力学的エネルギーは
     mv² + m(-v)² = mv²

衝突後の速度はそれぞれ -0.5v 、0.5v 運動量保存の法則より
    mv + m(-v) = mv1' + mv2'
  ⇒ 0 = v1' + v2'
  ⇒ v1' = - v2'
e = 0.5 だから 反発係数の式に代入しますと
    0.5 =
  ⇒ 0.5・2v = - v1' + v2'
  ⇒ v = - v1' + v2'
ここに上で求めた v1' = - v2' を代入して
    v = - v1' - v1'
  ∴ v1' = -0.5v
同様に代入して
    v = - (-v2') + v2'
  ∴ v2' = 0.5v 閉じる
だから衝突後の力学的エネルギーは
     m(-0.5v)² + m(0.5v)² = 0.25mv² + 0.25mv² = 0.25mv²

力学的エネルギーは しか残らないということです。 は熱エネルギーになってしまったということです。物体の温度が上昇したということです。

同質量、同速度で向かい合い、e = 0

同質量、同速度の2物体が向い合って完全非弾性衝突( e = 0 )をする、つまり合体する場合の力学的エネルギーを考えます。

衝突前の力学的エネルギーは
     mv² + m(-v)² = mv²

合体後の速度は 0 前項の e = 0 で m1 = m2 の場合 参照。閉じるだから衝突後の力学的エネルギーは
     ( m + m ) 0² = 0

力学的エネルギーはまったく残らず、すべて熱エネルギーに使われたということです。

この例では運動量の和は衝突前も衝突後も 0 運動量保存の法則の式を書いてみますと
mv + m(-v) = ( m + m )・0閉じる
でありますし、力学的エネルギーの和は衝突前は mv² で衝突後は 0 です。このことを考えると、運動量というものと運動エネルギーというものの違いがはっきり認識できるのではないでしょうか。(5.2.1.1 運動量と力積 参照。)