変圧器_補足

変圧器の補足

電力輸送の電圧はなぜ高い方がいいのか

発電所から一般家庭に送られてくる電気は直流ではなく交流なのですが、それは交流であれば電圧が容易に変えられるからです。そしてこのとき、電圧をなるべく高くした方が送電損失を少なくすることができます。各家庭に引き込む直前に電柱をよく見ると、大きいグレーの円筒状の物体が付いてたりしますが、これが電圧を下げるための変圧器です。
 
 
 
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、人間が感電しても大丈夫なように電圧は下げられますが、それ以外の箇所ではなるべく電圧は高くした方が有利なのです。この理屈がちょっとややこしいのでここで説明してみます。

電源と抵抗が接続された単純な回路について、

電圧V-電流Iグラフを描くと左図のようになります。

青色の長方形の面積が電力P=IV)で、対角線の傾きは抵抗の大きさを表しています。

発電所から各家庭に送られる送電の様子を、単純化して回路で表すと、

このようになります。変圧器(transformer)は省略しています。

V-Iグラフを描くと左図のようになります。

発電所で作り出される電力(青色長方形の面積)は決まっていて、電圧とそれに伴う電流は変圧器によって自在に変えられます。

電力以外にもう一つ決っているものがあって、それは送電における電線の抵抗です。それをグラフに描き込むと左図のようになります。この直線の傾きが決っているということです。

このグラフにおいて、青の部分が家庭で消費可能な電力で、緑の部分が送電のために消費されてしまう電力です。

これを見ると、電圧はなるべく高くした方が緑の部分の面積が小さい、つまり、無駄なく電力を送ることができることが分かると思います。

例を挙げて計算してみます。

たとえば、発電所で作り出される電力が P = 80W 、送電における電線の抵抗が Rtr = 2Ω であるときに、

(i) 変圧器によって電圧を V = 40V にしたとします。

すると電流は I = P/V = 80W/40V = 2A 、全体の抵抗は R = V/I = 40V/2A = 20Ω 、送電線の電圧は Vtr = Rtr×I = 2Ω×2A = 4V 、送電線の電力は Ptr = I×Vtr = 2A×4V = 8W 、家庭(home)の抵抗は Rho = R - Rtr = 20Ω - 2Ω = 18Ω 、家庭の電圧は Vho = Rho×I = 18Ω×2A = 36V 、家庭の電力は Pho = I×Vho = 2A×36V = 72W

(ii) 変圧器によって電圧を V = 20V にしたとします。

すると電流は I = P/V = 80W/20V = 4A 、全体の抵抗は R = V/I = 20V/4A = 5Ω 、送電線の電圧は Vtr = Rtr×I = 2Ω×4A = 8V 、送電線の電力は Ptr = I×Vtr = 4A×8V = 32W 、家庭の抵抗は Rho = R - Rtr = 5Ω - 2Ω = 3Ω 、家庭の電圧は Vho = Rho×I = 3Ω×4A = 12V 、家庭の電力は Pho = I×Vho = 4A×12V = 48W

電圧が 40V のときは 8W しか送電でロスしないのに対し、電圧が 20V のときは 32W も送電でロスしてしまいます。

あと、もし電圧があまりにも小さかったりする場合は、電流は一切流れなくなります。青い部分の面積が無くなるということは家庭には電圧が届かないということなので電流が流れなくなります。(?いや、電力が余っていれば再び電圧が上昇して電流が流れだす?かも。。電流が切れたとき発電所のタービンはどうなるのだろう?空回りするのだろうか?変圧器はどうなるのだろう??すみません、正確なことは分かりません。)