熱の仕事当量

熱の仕事当量

ジュールの実験

まだ熱がエネルギーの一種であることが知られていない19世紀に、イギリスの物理学者ジェームズ⋅プレスコット⋅ジュール仕事の単位の [J] はこの人が由来です。ジュールの法則を発見した人でもあります。
 閉じる
は以下のような実験をして、熱が仕事と等価であることを明らかにしました。

実験には左図のような装置が用いられました。重りがゆっくり降下すると滑車と回転軸と羽根車が回り、断熱された(熱が外に逃げない)水熱量計の中の水を撹拌し、摩擦熱によって水温が上がります。その上昇温度と重りが動いた距離を測定します。

重り1個の質量を M [kg]、降下した距離を h [m] とすると、重力が重りにした仕事 W [J] は2個合計で

    W = 2Mgh

です

この実験当時は熱量の単位として [cal] カロリー を用いていました。1g の水を 1℃ 上昇させるのに必要な熱量が 1cal 、と定められていました。ですので、この実験で、水の質量を m [g]、上昇した温度を Δt [℃]とすると、水の得た熱量 Q [cal]は

    Q = mΔt

です。

ジュールは、MhmΔt の値を変えながら精密な実験を繰り返し、仕事 W と熱量 Q の間に比例関係があることを発見しました。その比例定数 4.19 を熱の仕事当量といいますW = 2Mgh 式における質量の単位は [kg] で、
Q = mΔt 式における質量の単位は [g] であり、
単位がズレているのですが、そのまま 4.19 を使います。1000倍したりするようなことはありません。質量の単位がズレていることを前提にして 4.19 と定められています。
 閉じる

熱の仕事当量 J = 4.19 J/cal

 W = JQ

上式は [J] と [cal] の単なる変換式とみなすこともできます。1cal = 4.19J です。また、4.19 という数値は水の比熱の数値のことでもあります。

この実験によって、熱と仕事が変換可能であることが分かり、エネルギーの概念がより明確になり、のちのエネルギー保存則の発見へとつながっていきました。

摩擦熱

熱運動』項で説明したように物体が固体であっても、その分子は熱運動をしています。物体と物体がぶつかると、その熱運動は激しくなります。ぶつかったときに発生する熱を摩擦熱といいます。

動摩擦

質量 m [kg] の物体が、動摩擦係数 μ' のあらい水平面上を s [m] だけ滑った摩擦というのは、(主に)微小な山と微小な山の衝突のことです。
 閉じる
ときに発生する熱量 Q [J] は、

    Q = F's = μ'mgs

です。(F' は動摩擦力、g は重力加速度)

運動エネルギー

質量 1.0kg の物体があらい水平面上を初速 10m/s で滑り、スピードが落ちていってやがて静止した場合に発生する熱量 Q [J] は、

    Q = \(\large{\frac{1}{2}}\)mv2 = \(\large{\frac{1}{2}}\)×1.0×102 = 50 [J]

です。これは、始めに物体が持っていた運動エネルギーの大きさでもあります。

位置エネルギー

高さ 10m から質量 1.0kg の物体を落下させて静止させたとき、位置エネルギーがすべて摩擦熱に変わったとすると音が鳴れば音エネルギーにも変わったことになるし、形が変形すれば変形させるためのエネルギーとして使われたことにもなりますが、高校物理ではとりあえず全て摩擦熱に変わったとみなします。
 閉じる
、そのとき発生する熱量 Q [J] は、

    Q = mgh = 1.0×9.8×10 = 98 [J]

です。