qH422

長さ L の質量が無視できる棒の一端を、鉛直面内でなめらかに回転できるように支点に取り付け、他端におもりを取り付けた。支点の鉛直上方でおもりを静かに離すと、棒は重力によって鉛直面内で図2のように反時計回りに回転し始めた。鉛直上方から測った棒の角度 θ とおもりの速さ v との関係を表すグラフとして最も適当なものを、下の①~④のうちから一つ選べ。ただし、グラフには 0° < θ ≦ 180° の範囲が示されている。重力加速度の大きさを g とし、空気の影響は無視できるものとする。

図 2
    

#センター11本試

摩擦が無いので力学的エネルギー保存の法則が成り立っているはずです。おもりの質量を m 、90°の位置でのおもりの速さを v90 、180°の位置でのおもりの速さを v180 、最下点を位置エネルギーの基準位置としますと、

最上点での力学的エネルギーは

(運動エネルギー)+(位置エネルギー)=(\(\large{\frac{1}{2}}\)m⋅02)+(mg2L)  ……➊

90°の位置での力学的エネルギーは

(運動エネルギー)+(位置エネルギー)=(\(\large{\frac{1}{2}}\)mv902)+(mgL)  ……➋

最下点での力学的エネルギーは

(運動エネルギー)+(位置エネルギー)=(\(\large{\frac{1}{2}}\)mv1802)+(mg⋅0)  ……❸

力学的エネルギー保存の法則より➊=➋であるから、

    (mg2L)=(\(\large{\frac{1}{2}}\)mv902)+(mgL

 ∴  2gL = \(\large{\frac{1}{2}}\)v2 + gL

 ∴  \(\large{\frac{1}{2}}\)v902 = gL

 ∴  v90 = \(\sqrt{2gL}\)

さらに、力学的エネルギー保存の法則より➊=❸であるから、

    (mg2L)=(\(\large{\frac{1}{2}}\)mv1802

 ∴  g2L = \(\large{\frac{1}{2}}\)v1802

 ∴  4gL= v1802

 ∴  v180 = 2\(\sqrt{gL}\)

v90 = \(\sqrt{2gL}\) 、v180 = 2\(\sqrt{gL}\) となっているグラフはです。

 

(もうちょっと一般化して考えてみる)
角度が θ のときのおもりの高さは

    L + Lcosθ

であり、この位置での力学的エネルギーは

(運動エネルギー)+(位置エネルギー)=(\(\large{\frac{1}{2}}\)mv2)+(mg(L + Lcosθ))  ……❹

力学的エネルギー保存の法則より➊=❹であるから、

    (mg2L)=(\(\large{\frac{1}{2}}\)mv2)+(mg(L + Lcosθ))

 ∴  g2L = \(\large{\frac{1}{2}}\)v2 + g(L + Lcosθ)

 ∴  g(L - Lcosθ) = \(\large{\frac{1}{2}}\)v2

 ∴  2gL(1 - cosθ) = v2

 ∴  v = \(\sqrt{2gL(1-\cosθ)}\)

この式に θ = 60° を代入してみますと、

    v60 = \(\sqrt{2gL(1-\frac{1}{2})}\) = \(\sqrt{gL}\)

θ = 120° を代入してみますと、

    v120 = \(\sqrt{2gL(1+\frac{1}{2})}\) = \(\sqrt{3gL}\)

これらの値は、②のグラフにマッチしています。

 

(勘違いしやすい)
本問で示されたグラフは、横軸が θ です。t ではありません。横軸が t であると思い込むと思わず③が妥当ではないかと勘違いしてしまいます。

また、この運動は単振動とも別物です。単振動は等速円運動を射影した動きです。グラフの曲線は正弦波(サインカーブ)ではありません。本問の運動は力学的エネルギーが保存されるような特徴を持った運動です。ジェットコースターの動きに近い運動です。