レンズを通る光

本項は先に補足ページを読むことをお勧めします。光線と像の基本事項を解説しています。

レンズを通る光

レンズ

レンズというものは、眼鏡やカメラや望遠鏡などに使われているもので、像を拡大・縮小させるものです。ガラス(あるいはプラスチックなど)と空気の屈折率の差を利用して、狙い通りに光線を屈折させ、光線の束を収束・発散させます。像をうまく映すために、レンズの側面の形状は球面になっています。

中心部が膨れているものを凸レンズ(とつれんず)といいます。

中心部がえぐれているものを凹レンズ(おうれんず)といいます。

高校物理で学ぶのはこの代表的な2種類のレンズです。他に、片面が球面でなく平面であったり、ノコギリの断面のような形状をしているものなど、様々な形状のものがあります。
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焦点

レンズの中心を通り、レンズ面に垂直な直線を光軸(主軸)といいます。

左図のように、光軸に平行な光線を凸レンズの左側から当てると、 光線はレンズで屈折し、右側の光軸上の1点を通過します。この点Fを凸レンズの焦点といい、レンズの中心からの距離 f焦点距離といいます。このとき、厳密には、光が白色光だったりすると光の分散が起こってしまって、なかなか1点に光を集められないのですが、そのような問題は無視します。
さらに厳密なことをいうと、たとえ単色光であってもザイデル収差という問題が起こり、光を1点に集めることができなかったりします。
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光を右から当てた場合も、左側の同じ距離の場所に光が集まります。焦点はレンズの両側にあります。

レンズが厚くなるほど(球面の曲率が大きくなるほど)焦点距離は短くなります。レンズが厚くなったり、境界面の角度が斜めになると、光線はより大きく曲げられます。

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光軸に平行な光線を凹レンズの左側から当てると、レンズで屈折し広がって行きます。これらの光線を反対向きに延長すると光軸上の1点に集まります。この点が凹レンズの焦点です。

凹レンズの場合も焦点は両側にあり、両方の焦点距離は等しくなってます。両方の焦点距離が等しくないレンズも存在しますが、難し過ぎるので高校物理では扱いません。
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光の逆行

光が1度通ってきた路(みち)に逆向きの光を当てると、来た路をそっくりたどります。光の逆行といいます。

違う路を通ることはありません。

鏡による反射でも同様です。


レンズによる像

物体から出た光線がレンズを通ってどのような像を作るかということを考えるとき、無数の光線のうち、進み方の明確な3本の光線について考えるとわかりやすくなります。

(凸レンズ)
(1)光軸に平行な光線は、凸レンズを通った後、焦点を通る。上で説明しました。
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(2)凸レンズの中心を通る光線は、そのまま真っ直ぐ進む。厳密なことをいうと、厚みのあるレンズでは少し屈折してしまいます。しかし高校物理ではレンズには厚みが無いものとして取り扱います。
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(3)焦点を通る光線は、凸レンズを通った後、光軸に平行に進む。

 

(凹レンズ)
(1)光軸に平行な光線は、凹レンズを通った後、レンズ手前にある焦点から出たように進む。

(2)凹レンズの中心を通る光線は、そのまま真っ直ぐ進む。

(3)レンズ後方の焦点に向かう光線は、凹レンズを通った後、光軸に平行に進む。

 

凸レンズにおいて、焦点より遠いところに置かれた物体AA'の像BB'は左図のようになりますが、像BB'はAA'を逆立ちさせたような像なので倒立像といいます。

この位置にスクリーンを置くと実際に映し出されるので、この像を実像といいます。スクリーンを置いても映し出されない像は、虚像といいます。  
 
実像 = 倒立像
 ↕   ↕
虚像 = 正立像

という関係になっています。
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物体の先っぽだけでなく、中ほどの部分の像や、根元の部分の像についても(1)、(2)、(3)にのっとって考えてみると、左図のようになるので、確かに倒立像ができることがわかると思います。

この場合、光線は3本ずつしか発生していないわけではなく、無数の光線がレンズを通り、像を作っています。(1)、(2)、(3)というのは、考えるときに考えやすい代表的な3本ということです。

補足ページもご参照ください。)

また、頭の中で混乱してしまいそうになるのが、スクリーンを置かないとき、そこに像が見えるのか、という問題ですが、答えは、見えません。

たとえば、像ができる場所の炎の位置Bからレンズを見れば、レンズ全体が赤く見えます。

ロウ本体の像ができる位置B''からレンズを見れば、レンズ全体がグレーに見えます。

遠く離れた位置からレンズを見れば、レンズの下半分に倒立したロウソクが見えます。レンズから目に届く光線は、光軸に平行な光線(=レンズ手前の焦点を通る光線)だけです。それ以外の光線は上や下に行ってしまって目には届きません。

像ができる場所と無関係な場所からレンズを見ても、何も映っていません。

なんとなく感じがつかめたでしょうか。よけいな説明をしてしまって返って混乱させてしまったかもしれませんが、高校物理のレンズの問題は人間の目でみてどう見えるかということはあまり考えません。物体から出た光線がレンズを通ってどのように進むのかということを考えるのが主です。「像」という言葉が何度も出てきますがそれは観念的なもので、人間が見てそこに像が浮かんで見えるというわけではないことを頭に入れておいてください。

レンズの厚みの無視

高校物理ではレンズの厚みを無視して考えることが多いので、そのことをことわっておきます。

本当は であるのに とみなします。また、

と作図したり、

と作図したりします。