反発係数
反発係数
ある物体をある壁に垂直に 10m/s の速さでぶつけて 8m/s の速さで戻ってきたとき、
今度は 5m/s の速さで壁にぶつけると、4m/s の速さで戻ってきます。
20m/s でぶつければ 16m/s で戻ってきます。
この物体とこの壁の組合せのときは、10 : 8 の比率の速さで戻ってくるということです。この比率を反発係数(はねかえり係数)といいます。物体と壁それぞれの組合せに特有の数値です。
反発係数を e *量記号として e を使うのはおそらく elasticity(弾力性)からだと思われますが、はっきりしたことはわかりません。
閉じる、衝突前の速度を v 、衝突後の速度を v' (v も v' も正の値だけでなく負の値をとることがあり、v が正のときは v' は負の値をとるものとする)とすると次のように表せます。
反発係数
e = - \(\large{\frac{v'}{v}}\) = \(\large{\frac{|v'|}{|v|}}\)
もし v と v' が正の値しか持たない(方向情報を持たない)とした場合は次のようになります。
e = \(\large{\frac{v'}{v}}\)
上で示した壁にぶつける例では、反発係数は e = - \(\large{\frac{-8\ }{10}}\) = 0.8 です。
0 ≦ e ≦ 1
10m/s の速さで物体を壁や床にぶつけたとき、それが 11m/s になってはねかえってくることはありません。もしあるとすれば、衝突の瞬間に手で押すとか、爆薬を爆発させるとか、人為的なことをしなければなりません。人為的なことをせず、速さが増すということはないので、上の e の値の最大値は 1 です。
- e = 1 となる衝突を弾性衝突(完全弾性衝突)といいます。よく弾むゴムボールを硬い床にたたきつけたときのような衝突です。
- 0 ≦ e < 1 の衝突は非弾性衝突といいます*教科書によっては、非弾性衝突と完全非弾性衝突を別のものと区別して、0 < e < 1 のとき非弾性衝突、e = 0 のとき完全非弾性衝突、としている場合もあります。細かい話ですが。
閉じる。現実世界での衝突はほとんどこの非弾性衝突です。
- 非弾性衝突のうち e = 0 の衝突を完全非弾性衝突といいます。壁に粘土をたたきつけて速度が 0 になったときのような衝突です。
e の値は負になることはありません。e は衝突前の速さと衝突後の速さの比のことなので負になることはありません。0 ≦ e ≦ 1 です。
自由落下
ある物体が高さ h から自由落下して水平な床に衝突し、再び高さ h' まではね上がったときの反発係数を求めてみます。
床に衝突する直前の速さを v 、衝突直後の速さを v' 、重力加速度を g としますと
v2 - 02 = 2gh 02 - v'2 = 2(-g)h'
∴ v2 = 2gh v'2 = 2gh'
∴ v = \(\sqrt{2gh}\) v' = \(\sqrt{2gh'}\)
よって反発係数は、
e = \(\large{\frac{v'}{v}}\) = \(\large{\frac{\sqrt{2gh'}}{\sqrt{2gh}}}\) = \(\large{\sqrt{\frac{h'}{h}}}\)
これは逆にいいますと、反発係数を求めるときは、速さの比からだけでなく自由落下させたときの高さの比からも求められるということです。
そして、
- e = 1 のときは、h' = h 、つまり同じ高さまではね上がる
- 0 ≦ e < 1 のときは、h' = e2 h 、つまり e2 倍の高さまではね上がる
- e = 0 のときは、h' = 0 、つまり床に張り付く
といえます。
斜め衝突
次に、小球がなめらかな面*なめらかな面ではなく、あらい面(摩擦のある面)に斜めに衝突した場合は x方向の速度も摩擦力によって減少します。
閉じるに斜めに衝突する場合を考えてみます。
面に平行な成分と面に垂直な成分に分けて考えます。
平行方向には力がはたらかないので速度の平行方向成分は変化せず、垂直方向成分に関しては衝突前後の速さの比は上で説明した反発係数 e の比になりますので、
衝突前の速度 \(\vec{v}\) の、面に平行な成分を vx 、面に垂直な成分を vy 、
衝突後の速度 \(\vec{v}'\) の、面に平行な成分を vx' 、面に垂直な成分を vy' としますと、
平行な成分 : vx' = vx
垂直な成分 : vy' = - e vy *∵ e = - \(\large{\frac{v_y{'}}{v_y}}\)
閉じる
となります。