回折格子
回折格子による光の干渉
ガラス板の表面に1cm当たり数百本~数千本もの割合で直線の溝を等間隔に刻んだものを回折格子(かいせつこうし
読み方注意!かいせきでもなければ、かくしでもない
)といいます。溝の部分では光は散乱して通りにくく、溝以外の平らな部分を光が通ります
イラストでは
このように表現したり、
このように表現したりします。
。つまり回折格子は、ヤングの干渉実験における2つのスリットを多数のスリットに置き換え、間隔 \(d\) をとても小さくしたものといえます。そして回折格子におけるこの間隔 \(d\) を格子定数といいます。
回折格子の手前からレーザー光線(単一波長の光)を当てると回折格子の後方のスクリーンに干渉縞が現れます。原理はヤングの干渉実験とまったく同じです。ヤングの干渉実験では波源であるスリットが2つだったのに対し、回折格子の実験では波源であるスリットが多数あるので、干渉縞はよりくっきりと映ります。また、ヤングの干渉実験に比べ、スリットの間隔 \(d\) がとても小さいので干渉縞の縞の間隔が大きくなります。
明線・暗線の条件
回折格子の実験における \(d\) と \(λ\) の関係を求めてみます。
ヤングの干渉実験とまったく同じように考えますと、隣り合うスリット間の光路差は \(d\sinθ\) で、この光路差が波長のちょうど整数倍になるところに明線ができ、波長の整数倍に半波長足したようになるところに暗線ができます。
回折格子
明線の条件 \(d\sinθ\) = \(m λ\)
暗線の条件 \(d\sinθ\) = (\(m\)+\(\large{\frac{1}{2}}\))\( λ\)
(\(m\) = 0,1,2,…)
ヤングの干渉実験においては、\(\sinθ ≒ \tanθ\) という近似を行ったのですが、それは \(θ\) があまりにも小さかったからです。回折格子の干渉実験においてはその必要はありません。
\(m\)次の干渉縞
左図は \(m = 1\) の明線ができている場面です。1次の干渉縞といいます。
たとえば、
AP=100\(λ\)、BP=101\(λ\) で |AP-BP|=1\(λ\)
BP=101\(λ\)、CP=102\(λ\) で |BP-CP|=1\(λ\)
CP=102\(λ\)、DP=103\(λ\) で |CP-DP|=1\(λ\)
DP=103\(λ\)、EP=104\(λ\) で |DP-EP|=1\(λ\)
… ということです。
左図は \(m = 2\) の明線ができている場面です。2次の干渉縞といいます。
たとえば、
AP=110\(λ\)、BP=112\(λ\) で |AP-BP|=2\(λ\)
BP=112\(λ\)、CP=114\(λ\) で |BP-CP|=2\(λ\)
CP=114\(λ\)、DP=116\(λ\) で |CP-DP|=2\(λ\)
DP=116\(λ\)、EP=118\(λ\) で |DP-EP|=2\(λ\)
… ということです。
上の式では \(m = 0,1,2,…\) として定義しましたが、教科書によっては \(m = 0,±1,±2,…\) と定義しているものもあります。
その場合、左図のようになります。
ここまではレーザー光(単色光)を当てた場合の話でしたが、様々な波長の光を含んだ太陽光や白熱電球の光(白色光)を当てた場合は、干渉縞の様子が少し異なります。
明線の条件の式 \(d\)\(\sinθ\) = \(m\)\(λ\) において、同じ \(m\) でも波長 \(λ\) が異なると角度 \(θ\) が変わるからです。\(λ\) が大きくなると \(\sinθ\) が大きくなります。波長の長い赤は、わずかに外側に角度がつきます。(\(λ\) が大きくなったので \(θ\) も大きくなったのです)。波長の短い紫は、わずかに内側に寄ります。(\(λ\) が小さくなったので \(θ\) も小さくなったのです)。