質量 m の人工衛星が、地球のまわりを速さ v で円運動している。人工衛星の地表面からの高さを h 、地球の質量を M 、地球の半径を R 、万有引力定数を G とする。また、地球の自転や公転の影響、他の天体の及ぼす影響は無視できるものとする。
(問3)人工衛星が地球から受ける万有引力の大きさ F を式で表わせ。
(問4)人工衛星の速さ v を表す式として最も適当なものを、次の①~⑨のうちから一つ選べ。
① \(\sqrt{\large{\frac{hF}{m}}}\) ② \(\sqrt{\large{\frac{RF}{m}}}\) ③ \(\sqrt{\large{\frac{(R+h)F}{m}}}\)
④ \(\large{\frac{hF}{m}}\) ⑤ \(\large{\frac{RF}{m}}\) ⑥ \(\large{\frac{(R+h)F}{m}}\)
⑦ \(\large{\frac{h^2F}{m}}\) ⑧ \(\large{\frac{R^2F}{m}}\) ⑨ \(\large{\frac{(R+h)^2F}{m}}\)
(問5)人工衛星の運動には、惑星の運動に関する法則と同様の法則が適用できる。人工衛星の周期 T の2乗と、地球の中心からの距離 a の3乗の比 k = \(\large{\frac{T^2}{a^3}}\) について述べた文として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① k は m と v に比例する。
② k は m と v に反比例する。
③ k は v にはよらないが、m に比例する。
④ k は v にはよらないが、m に反比例する。
⑤ k は m にも v にもよらない。
#センター16追試物理
(問3)
『人工衛星の速さ』のところで説明したように、
力 F は地球と人工衛星の間の万有引力 G\(\large{\frac{Mm}{r^2}}\) のことであり、G\(\large{\frac{Mm}{(R+h)^2}}\) です。
答えは F = G\(\large{\frac{Mm}{(R+h)^2}}\) です。
(問4)
これも『人工衛星の速さ』で説明したように、
m\(\large{\frac{v^2}{R+h}}\) = G\(\large{\frac{Mm}{(R+h)^2}}\)
という運動方程式が立てられるのですが、選択肢に G が含まれておらず F が含まれているので、
m\(\large{\frac{v^2}{R+h}}\) = F
と書き直しますと、
v2 = \(\large{\frac{(R+h)F}{m}}\)
∴ v = \(\sqrt{\large{\frac{(R+h)F}{m}}}\)
答えは ③ です。
(問5)
k = \(\large{\frac{T^2}{a^3}}\) という式はケプラーの第3法則を表したものです。その導出は楕円軌道であるとすると難しいですが円軌道であるとすると簡単です。
問4で示した運動方程式
m\(\large{\frac{v^2}{R+h}}\) = G\(\large{\frac{Mm}{(R+h)^2}}\)
において R + h は本問では a であるので、これを代入して、
m\(\large{\frac{v^2}{a}}\) = G\(\large{\frac{Mm}{a^2}}\)
また、周回の速さ(v)は円周の長さ(2πa)を一周に掛かる時間(T)で割ったものだから、
v = \(\large{\frac{2πa}{T}}\) ……❶
これを代入して、
m\(\large{\frac{(\frac{2πa}{T})^2}{a}}\) = G\(\large{\frac{Mm}{a^2}}\)
∴ \(\large{\frac{(\frac{2πa}{T})^2}{a}}\) = G\(\large{\frac{M}{a^2}}\)
∴ \(\large{(\frac{2πa}{T})^{\small{2}}}\) = G\(\large{\frac{M}{a}}\)
∴ \(\large{\frac{4π^2a^2}{T^2}}\) = G\(\large{\frac{M}{a}}\)
∴ \(\large{\frac{a^3}{T^2}}\) = G\(\large{\frac{M}{4π^2}}\)
∴ \(\large{\frac{T^2}{a^3}}\) = \(\large{\frac{4π^2}{GM}}\)
つまり、
k = \(\large{\frac{T^2}{a^3}}\) = \(\large{\frac{4π^2}{GM}}\)
この式には m も v も含まれていないので、
答えは ⑤ k は m にも v にもよらない。
(余談:紛らわしい)
\(\large{\frac{T^2}{a^3}}\) に❶式を代入すると、
\(\large{\frac{T^2}{a^3}}\) = \(\large{\frac{(\frac{2πa}{v})^{\small{2}}}{a^3}}\) = \(\large{\frac{\frac{4π^2a^2}{v^2}}{a^3}}\) = \(\large{\frac{4π^2}{v^2a}}\)
となって、k は v と無関係とはいえないことになります。しかしよく見ると、v2 に反比例しているのであり、そのような選択肢はないのでやはり答えは ⑤ ということになります。
(余談:式の意味)
k = \(\large{\frac{T^2}{a^3}}\) = \(\large{\frac{4π^2}{GM}}\)
という式の一番右の辺の G は定数だし、M は地球の質量であるので、k の値は結局地球の質量のみによって決まるということになります。地球を周回する人工衛星は(月も含めて)、k の値が共通ということです。
これが水星や金星や地球などの太陽系の惑星の場合になると M の部分が太陽の質量となります。太陽の周りを回る惑星に関して k の値が共通になります。
また、\(\large{\frac{T^2}{a^3}}\) の分母と分子で指数の大きさが違います。2倍遠くに離れている物体の周回時間は2倍よりちょっと大きい値になります。中心から遠い物体は回転スピードが遅く、中心に近い物体は回転スピードが速いということです。