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図4(a)のように、熱をよく通す断面積 S のシリンダーに気体を閉じ込め、鉛直に立てた。シリンダーには、なめらかに動く軽いピストンがついている。ピストンの位置をシリンダーの目盛りで表し、気体の温度が T0 のときの目盛りを 0 とする。このときの気体の体積は V0 であった。また、大気の温度が上がり気体の温度が T1 になると、図4(b)のように目盛りの読みは h1 になった。大気圧 P0 は一定とする。

図 4

(問5)図4(a)の状態から(b)の状態へ気体が膨張するとき、気体が外部からされた仕事を W 、気体が外部から吸収した熱量を Q とする。W は正であるか、負であるか、0 であるか。また、Q は正であるか、負であるか、0 であるか。

(問6)気体の温度が T のときの目盛りの読み h を表す式として正しいものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。

① \(\large{\frac{T}{T_0}}\)h1  ② \(\large{\frac{T}{T_1}}\)h1  ③ \(\large{\frac{T-T_0}{T_1-T_0}}\)h1  ④ \(\large{\frac{T_0}{T}}\)h1  ⑤ \(\large{\frac{T_1}{T}}\)h1  ⑥ \(\large{\frac{T_1-T_0}{T-T_0}}\)h1

(問7)次の文章中の空欄7に入る式を求めよ。ただし、重力加速度の大きさを g とする。

 図4(a)の状態で、ピストンの上に質量 m のおもりを置いた。十分に時間がたちピストンが静止すると、図5のように、気体の温度は T0 に、目盛りの読みは - h2 (h2 > 0) になった。このとき、ボイルの法則から P0V0 =7が成り立つ。

図 5

#センター15本試物理Ⅰ

(問5)
外部の温度が上がったことにより、状態(a)から状態(b)になったということなので、これは気体が外部から熱量を吸収して、気体が膨張したということであり、気体が膨張したということは気体が外部に仕事をしたということであり、今、W は「気体が外部からされた仕事」と定義されているので、気体が外部に仕事をした場合にはこれは負、ということになります。Q に関しては「気体が外部から吸収した熱量」と定義されているので、そのまま正、ということになります。

答えは W は負、Q は正。

 

仕事 W2通りの定義の仕方があり、注意が必要です。

 

 

(問6)
気体の温度が T1 のときの気体の体積を V1 、気体の温度が T のときの気体の体積を V と置くと、シャルルの法則   \(\large{\frac{V_1}{T_1}}\) = \(\large{\frac{V_2}{T_2}}\)

あるいは、ボイル⋅シャルルの法則より、
  \(\large{\frac{P_0V_1}{T_1}}\) = \(\large{\frac{P_0V_2}{T_2}}\)
∴ \(\large{\frac{V_1}{T_1}}\) = \(\large{\frac{V_2}{T_2}}\)
より、

    \(\large{\frac{V_0}{T_0}}\) = \(\large{\frac{V_1}{T_1}}\) = \(\large{\frac{V}{T}}\)

目盛り 0 の高さを h0 と置くと、上式は以下のように書き変えられ、

    \(\large{\frac{h_0S}{T_0}}\) = \(\large{\frac{(h_0+h_1)S}{T_1}}\) = \(\large{\frac{(h_0+h)S}{T}}\)

 ∴  \(\large{\frac{h_0}{T_0}}\) = \(\large{\frac{(h_0+h_1)}{T_1}}\) = \(\large{\frac{(h_0+h)}{T}}\)

この式をこねくり回して、自分で設定した h0 を消去しますと、

\(\large{\frac{h_0}{T_0}}\) = \(\large{\frac{(h_0+h_1)}{T_1}}\) より、

    h0T1 = (h0 + h1)T0

 ∴  h0(T1 - T0) = h1T0

 ∴  h0 = \(\large{\frac{h_1T_0}{T_1-T_0}}\)  ……➊

\(\large{\frac{h_0}{T_0}}\) = \(\large{\frac{(h_0+h)}{T}}\) より、

    h0T = (h0 + h)T0

 ∴  h0(T - T0) = hT0

 ∴  h0 = \(\large{\frac{hT_0}{T-T_0}}\)  ……➋

➊式、➋式より、

    \(\large{\frac{hT_0}{T-T_0}}\) = \(\large{\frac{h_1T_0}{T_1-T_0}}\)

 ∴  \(\large{\frac{h}{T-T_0}}\) = \(\large{\frac{h_1}{T_1-T_0}}\)

 ∴   h = \(\large{\frac{T-T_0}{T_1-T_0}}\)h1

答えは です。

 

(別解)
暗算で計算するとしたら、

    \(\large{\frac{ΔV_1}{ΔT_1}}\) = \(\large{\frac{ΔV}{ΔT}}\)

 ⇔  \(\large{\frac{(h_1-0)S}{T_1-T_0}}\) = \(\large{\frac{(h-0)S}{T-T_0}}\)

 ∴  \(\large{\frac{h_1}{T_1-T_0}}\) = \(\large{\frac{h}{T-T_0}}\)

 ∴  h = \(\large{\frac{T-T_0}{T_1-T_0}}\)h1

 

 

(問7)
図4(a)の状態のときの気体の圧力は大気圧と同じ P0 です。そして、十分に時間がたった後の気体の圧力を P2 、体積を V2 とすると、ボイルの法則より、

    P0V0 = P2V2

気体の圧力 P2 は、大気圧とおもりによる圧力を合わせたものとつり合っています。おもりによる圧力というのは \(\large{\frac{mg}{S}}\) です。つまり、

    P2 = P0 + \(\large{\frac{mg}{S}}\)

体積 V2 については

    V2 = V0 - h2S

よって、

     P0V0 = P2V2

       = \(\Big(\)P0 + \(\large{\frac{mg}{S}}\)\(\Big)\)(V0 - h2S)