単振り子の力学的エネルギー

単振り子

単振り子

糸の一端を固定し、他端におもりを付けて吊るし、重力の作用で鉛直面内を振らせたものを単振り子といいます。糸は伸び縮みせず、質量が無いものとします。質量があると、糸の運動エネルギー位置エネルギーを考慮しなければならず、問題が複雑になってしまいます。質量があるのはおもりだけです。

また、糸もおもりも空気抵抗を受けないものとします。

「単振り子」の「単」は、たぶん「1つ」という意味だと思います。あるいは「単純」の「単」かもしれません。おもりが1つで鉛直面内で運動する単純な振り子が単振り子です。
おもりが2つある振り子は二重振り子といいます。とても複雑な動きをします。高校物理では扱いません。他に、円錐振り子、球面振り子などというものもあります。
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本項では、単振り子のおもりの各瞬間の速さが力学的エネルギー保存の法則によって求められるという話をします。

単振り子を微小振動させてその周期などを求める話は『単振り子』項でします。

振り子の張力は仕事をしない

振り子の運動では糸に張力がはたらきます。この張力はおもりの運動方向と常に垂直の方向を向いているので、おもりに対して仕事をしません。すなわち、おもりのエネルギーの増減に関わりません。力学的エネルギーに無関係なのです。

振り子のおもりには、糸の付け根方向の張力と、鉛直下向きの重力の2つの力がはたらきますが、力学的エネルギーに関しては、張力は考える必要はなく重力のみを考えます。重力は保存力であるので力学的エネルギー保存の法則が成り立ちます。


単振り子の力学的エネルギー

おもりの速さを求める

力学的エネルギー保存の法則を使って、単振り子のおもりの速さを求めてみます。

長さ l [m] の軽い糸に、質量 m [kg] のおもりを付けた単振り子があるとします。このおもりを最下点から高さ h [m] の最上点の位置最上点というのは手を放す位置、つまりスタート地点という意味です。天井と同じ高さの位置というわけではありません。
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で静かに放したときのおもりの速さを求めます。重力加速度の大きさを g [m/s2] とし、空気抵抗は無視できるものとします。

その他、以下のように定義します。
力学的エネルギー 運動エネルギー 位置エネルギー 鉛直線との角度 高さ* 速さ
最上点 E K U θ h = l (1-cosθ) v = 0
任意の位置 E K U θ h = l (1-cosθ) v
最下点 E K U θ = 0 h = 0 v

*高さについて:上図を見てもらうとわかると思いますが h = l - l cosθ = l (1-cosθ) です。

力学的エネルギー保存の法則により、常に E = E = E です。

最上点でのおもりの力学的エネルギーと速さ

自由落下運動のときのように力学的エネルギーを考えてみます。

E = K + U = 0 + mgh = mgh = mgl (1 - cosθ)

最上点でのおもりの速さは v = 0 です。振り子のおもりは最上点では一瞬止まるので 0 です。

任意の位置でのおもりの力学的エネルギーと速さ

E = K + U = \(\large{\frac{1}{2}}\)mv2 + mgh = \(\large{\frac{1}{2}}\)mv2 + mgl (1 - cosθ)

力学的エネルギー保存の法則より E = E だから、

   mgl (1 - cosθ) = \(\large{\frac{1}{2}}\)mv2 + mgl (1 - cosθ)

⇒  mgl (1 - cosθ) - mgl (1 - cosθ) = \(\large{\frac{1}{2}}\)mv2

⇒  - mgl cosθ + mgl cosθ = \(\large{\frac{1}{2}}\)mv2

⇒  mgl cosθ - mgl cosθ = \(\large{\frac{1}{2}}\)mv2

⇒  mgl (cosθ - cosθ) = \(\large{\frac{1}{2}}\)mv2

⇒  2gl (cosθ - cosθ) = v2

⇒  v = \(\sqrt{2gl(\cos\theta_任 - \cos\theta_上)}\)

これを θ を使わず、h を使って表現してみます。
h = l (1-cosθ)  より  h = l - lcosθ  よって  h - l = - lcosθ  であり、これを上式に代入しますと、

   v = \(\sqrt{2gl(\cos\theta_任 - \cos\theta_上)}\)

     = \(\sqrt{2g(l\cos\theta_任 - l\cos\theta_上)}\)

     = \(\sqrt{2g(l\cos\theta_任 + h_上 - l)}\)

     = \(\sqrt{2g(h_上 - l + l\cos\theta_任)}\)

     = \(\sqrt{2g\{h_上 - l(1 - \cos\theta_任)\}}\)

最下点でのおもりの力学的エネルギーと速さ

E = K + U = \(\large{\frac{1}{2}}\)mv2 + 0 = \(\large{\frac{1}{2}}\)mv2

力学的エネルギー保存の法則より E = E だから、

   mgl (1 - cosθ) = \(\large{\frac{1}{2}}\)mv2

⇒  2gl (1 - cosθ) = v2

⇒  v = \(\sqrt{2gl(1 - \cos\theta_上)}\)

Emgl (1 - cosθ) であると同時に mgh でもあるので、 E = E は以下のようにも表せます。

   mgh = \(\large{\frac{1}{2}}\)mv2

⇒  2gh = v2

⇒  v = \(\sqrt{2gh_上}\) 上式に h = l (1-cosθ) を代入したものと考えることもできます。

θ を使わず、h を使って表現したということです。
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このように

力学的エネルギー保存の法則を使うことにより、単振り子のおもりの速さが求められます。

なお、文中で θv などという表記を用いましたが、これはわかりやすくするためであり、物理の数式表記の慣習には反します。答案用紙に解答を書く際は、このような記号は用いず、θ'v0 などと表記してください。また、問題文中の記号が上記の記号のどれに当てはまるのか、たとえば問題文中で θ が出てきた時、上記のうちの θ なのか θ なのか θ なのか、どれに当てはまるのか慎重に考えてください。それらに気を付ければ上記の式のうちいずれかを使って問題を解くことができるはずです。

たとえば

単振り子の支点と同じ高さまでおもりを持ち上げて放したとき、角度60°の地点でのおもりの速さは?と問われたら、

v = \(\sqrt{2gl(\cos\theta_任 - \cos\theta_上)}\) の式を使えば求まります。

θ = 60°、θ = 90° を代入すると、

    v60° = \(\sqrt{2gl(\cos\theta_任 - \cos\theta_上)}\)

       = \(\sqrt{2gl(\cos60° - \cos90°)}\)

       = \(\sqrt{2gl(\frac{1}{2} - 0)}\)

       = \(\sqrt{gl\ }\)

さらに、このときの最下点でのおもりの速さは?と問われたら、

θ = 0°、θ = 90° を代入して、

    v = \(\sqrt{2gl(\cos\theta_任 - \cos\theta_上)}\)

       = \(\sqrt{2gl(\cos0° - \cos90°)}\)

       = \(\sqrt{2gl(1 - 0)}\)

       = \(\sqrt{2gl}\)

これは v = \(\sqrt{2gh_上}\) に h = l を代入しても求まります。

逆に、最下点で初速を与えたとき、おもりがどのくらいの高さまで持ち上がるかを問われたら、 2gh = v2 の式に v の値を代入すれば h が求まります。高さでなく角度を問われたなら、 2gl (1 - cosθ) = v2 の式に代入すれば求まります。