qHBF9

なめらかな斜面上での小物体の運動を考えよう。空気抵抗は無視できるものとする。

(問3)図2に示すように、斜面上の点Pで小物体を時刻 t = 0 で静かに放したところ、小物体は斜面を滑り落ちた。小物体の速度の変化を表すグラフとして最も適当なものを、下の①~④のうちから一つ選べ。ただし、斜面に沿って下向きを速度の正の向きとする。

図 2
    

(問4)図3(a)〜(c)に示すように、斜面上の点Pから、3通りの方法で小物体を運動させた。その後、いずれの場合も小物体は点Pより下方の点Qを通過した。(a)〜(c)の場合の点Qでの速さを、それぞれ、vavbvc とする。vavbvc の大小関係として最も適当なものを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。

 
(a) 斜面に沿って上向きに速さ v で打ち出す。
 
(b) 斜面に沿って下向きに速さ v で打ち出す。
 
(c) 斜面上で静かに放す。
図 3

va > vb > vc  ② vc > vb > va  ③ va > vc > vb  ④ vb > vc > va  ⑤ va = vb = vc  ⑥ va = vb > vc

#センター15本試物理基礎

(問3)
小物体には重力が掛かり、その力によって加速していくわけですが、その力は一定であり、摩擦も無いので、すなわち運動方程式より、加速度も一定です。加速度が一定ということは、等加速度直線運動あるいは自由落下運動のように、速度は一定の割合で大きくなっていきます。

答えはです。

 

③と間違えやすいですが、③は速度でなく変位を表すグラフです。

 

 

(問4)
小物体の質量を m 、斜面の仰角を θ 、小物体の斜面方向の加速度を a 、重力加速度の大きさを g 、点Pと点Qの距離を l 、高低差を h とします。

(解法1)
小物体に掛かる重力は mg で、運動方向の成分mgsinθ であり、運動方程式を立てますと、

    ma = mgsinθ

 ∴  a = gsinθ

となりますが、g の値は一定であるので gsinθ も一定であるわけです。そうしますとこの運動は鉛直投射運動において、ggsinθ としたもの、と考えることができます。(たとえば sinθ=0.6 なら g を 0.6g に変更しただけのもの。あるいは単なる等加速度直線運動、と考えてもいいです。)

それぞれの場合について、鉛直投射(あるいは等加速度直線運動)の時間 t を含まない式を立てますと(右下方向を正とする)、

(a)
    va2 - (-v)2 = 2(gsinθ)l

 ∴  va2 = v2 + 2glsinθ

 ∴  va = \(\sqrt{v^2+2gl\sinθ}\)

(b)
    vb2 - v2 = 2(gsinθ)l

 ∴  vb2 = v2 + 2glsinθ

 ∴  vb = \(\sqrt{v^2+2gl\sinθ}\)

(c)
    vc2 - 02 = 2(gsinθ)l

 ∴  vc2 = 2glsinθ

 ∴  vc = \(\sqrt{2gl\sinθ}\)

答えはva = vb > vc です。

 

(解法2)
もう一つの解法はエネルギーに着目するやり方です。

それぞれの場合について、力学的エネルギー保存の法則の式を立てますと、

(a)
    \(\large{\frac{1}{2}}\)mv2 + mgh = \(\large{\frac{1}{2}}\)mva2

 ∴  va2 = v2 + 2gh

 ∴  va = \(\sqrt{v^2+2gh}\)

(b)
    \(\large{\frac{1}{2}}\)mv2 + mgh = \(\large{\frac{1}{2}}\)mvb2

 ∴  vb2 = v2 + 2gh

 ∴  vb = \(\sqrt{v^2+2gh}\)

(c)
    0 + mgh = \(\large{\frac{1}{2}}\)mvc2

 ∴  vc2 = 2gh

 ∴  vc = \(\sqrt{2gh}\)

よって、va = vb > vc です。

 

h = lsinθ ですので、2種類の解法で得られた双方の値は同じものです。

また、慣れてくれば解法2の各式の左辺だけを思い浮かべ、

  \(\large{\frac{1}{2}}\)mv2 + mgh

  \(\large{\frac{1}{2}}\)mv2 + mgh

  0 + mgh

これらを比較して、答えは va = vb > vc だな、と暗算できるようになります。

 

(『qI2Q9』もご参照ください)