仕事率_補足

仕事のことについて考えているのに「ゆっくり」動かさなくていいのか

本編で示した P = \(\large{\frac{W}{t}}\) = F v という式は、「一定の力」を加え続けて、「一定の速さ」で動かし続けたときの式です。

『仕事_補足』の項では、仕事について考えるとき、問題を複雑にしないよう、物体を「ゆっくり」動かす、と説明しました。実は「ゆっくり」でなくても「一定の速さ」なら問題ないのです。「一定の速さ」も「ゆっくり」も、加速度を発生させません。加速度が 0 であれば、そのためのも発生しないので、問題は複雑になりません。

「一定の速さ」でもなく「ゆっくり」でもない場合は、問題が複雑になってしまいます。最初スタート地点で止まっていた物体に、力を加えて加速させ、ゴール地点で減速させて止まらせた、というような場合、摩擦力に対抗する力以外に、物体を加速、減速させるための力も登場することになってしまいます。ma = F の力です。a が 0 でないとすると F も 0 ではない、ということになってしまいます。この力も考慮しなければならないとなると、問題はかなり複雑になってしまいます。

シンプルにするため、摩擦力とそれに対抗する力だけを考えたいのです。ですので、たいていの場合、「ゆっくり」か「一定の速さ」で動かすということを前提として試験問題は作られます。

さらにいいますと、「一定の速さ」ということは、スタート地点ですでにその速さになっているということです。仕事率について述べるときの速さというのは、スタート地点でその速さになっていて、ゴール地点でもその速さのまま通過するということです。加えられた「一定の力」というのは摩擦力に対抗するだけの力です。摩擦力と「一定の力」は同じ大きさでつり合っていて、その合力は 0 です。合力が 0 なので慣性の法則により、等速直線運動をします。