凹面鏡

凹面鏡のつくる像

各量の関係を求める

物体から出る光線が凹面鏡で反射して像を作るとき、以下の各量の関係を考えてみます。

物体と鏡との距離:a
鏡と像との距離:b
焦点距離:f
球の半径:R

代表的な光線

どのような像が作られるかは、あらゆる光線の進み方について考えればいいわけですが、

物体の先端から出る左図のような光線を考えれば、どの位置にどの大きさの像ができるか特定できます。

  光軸に平行な光線は反射して焦点を通る
  反射の法則により入射角=反射角である。
  焦点を通る光線は反射して光軸に平行に進む
  球の中心を通る光線は反射して再び中心を通る

これらのうちのどれか2本を使って考えていきます。解法は何通りもあります。

曲率の小さい球

球面鏡』において少し説明しましたが、焦点を結ぶときというのは球面の小さい部分閉じるを使ったときです。半径の大きい球です。カーブの緩い球です。曲率の小さい球です。

本項では光線の経路を、

このようであるはずのところを、カーブを無視して、

このように描いて説明していきますので、ご了承ください。


物体を焦点より遠くに置いたとき

上で示した光線のうち、たとえばの光線によってできる三角形を用いて考えてみます。

左図のように符号を振ります。

△AA'F△PB″Fは相似である(とみなせる)から、

  \(\large{\frac{\rm{PB″}}{\rm{AA'}}}\) = \(\large{\frac{\rm{PF}}{\rm{AF}}}\) = \(\large{\frac{f}{a-f}}\)

であり、また、PB″ = BB' であるから上式に代入して、

  \(\large{\frac{\rm{BB'}}{\rm{AA'}}}\) = \(\large{\frac{f}{a-f}}\)  ……①

△PA″F△BB'Fは相似だから、

  \(\large{\frac{\rm{BB'}}{\rm{PA″}}}\) = \(\large{\frac{\rm{BF}}{\rm{PF}}}\) = \(\large{\frac{b-f}{f}}\)

であり、また、PA″ = AA' であるから上式に代入して、

  \(\large{\frac{\rm{BB'}}{\rm{AA'}}}\) = \(\large{\frac{b-f}{f}}\)  ……②

①式と②式は左辺が共通だから、

    \(\large{\frac{f}{a-f}}\) = \(\large{\frac{b-f}{f}}\)

 ∴  f2 = (b - f)(a - f)

 ∴  f2 = ab - bf - af + f2

 ∴  0 = ab - bf - af + 0

 ∴  bf + af = ab   両辺を abf で割って

 ∴  \(\large{\frac{bf}{abf}}\) + \(\large{\frac{af}{abf}}\) = \(\large{\frac{ab}{abf}}\)

 ∴  \(\large{\frac{1}{a}}\) + \(\large{\frac{1}{b}}\) = \(\large{\frac{1}{f}}\)  ……③

この式を写像公式といいます。レンズの場合の写像公式と同じです。abf の正負を適切に設定することによって同じ式で表現することができるのです。

レンズの場合の写像公式は別名として「レンズの公式」と呼ばれることがありますが、球面鏡の写像公式は「球面鏡の公式」とはあまり言いません。

この式をよく見ますと、a → ∞ のとき(左辺第一項が 0 になって) b = f となることが分かります。放物線の定義に一致します。さらに、下で説明するように倍率は \(\large{\frac{b}{a}}\) でありますから、a → ∞ の場合はほぼ 0 です。物体を凹面鏡から遠く離して置くと、焦点付近に極小の像ができるということです。

倍率

レンズのときのように倍率についても考えてみます。m とおきますmagnification(倍率)より。閉じる

倍率というのは物体がどのくらい拡大、縮小されたかという割合で、つまり \(\large{\frac{\rm{BB'}}{\rm{AA'}}}\) のことであり、①式より

    m = \(\large{\frac{\rm{BB'}}{\rm{AA'}}}\) = \(\large{\frac{f}{a-f}}\)  ……④

です。また、③式より、

    \(\large{\frac{1}{a}}\) + \(\large{\frac{1}{b}}\) = \(\large{\frac{1}{f}}\)

 ∴  \(\large{\frac{b+a}{ab}}\) = \(\large{\frac{1}{f}}\)

 ∴  \(\large{\frac{ab}{a+b}}\) = f

これを④式に代入しますと、

    m = \(\Large{\frac{\frac{ab}{a+b}}{a-\frac{ab}{a+b}}}\) = \(\large{\frac{ab}{(a^2+ab)-ab}}\) = \(\large{\frac{ab}{a^2}}\) = \(\large{\frac{b}{a}}\)

となります。

といいますか、

で示した代表的な光線のうち、の線によって作られる左図のような相似の三角形、△AA'Pと△BB'Pを考えれば m = \(\large{\frac{b}{a}}\) であることは一目瞭然です。

像の倍率というのは、鏡からの距離の比率と同一です。

OとFの間

球の中心Oと焦点Fの間に物体AA'を置いた場合も同じ関係式が得られます。念のため確認しておきます。

△AA'F△PB″Fは相似だから、

  \(\large{\frac{\rm{PB″}}{\rm{AA'}}}\) = \(\large{\frac{\rm{PF}}{\rm{AF}}}\) = \(\large{\frac{f}{a-f}}\)

であり、また、PB″ = BB' であるから上式に代入して、

  \(\large{\frac{\rm{BB'}}{\rm{AA'}}}\) = \(\large{\frac{f}{a-f}}\)  …… 上の①式と同一

△PA″F△BB'Fは相似だから、

  \(\large{\frac{\rm{BB'}}{\rm{PA″}}}\) = \(\large{\frac{\rm{BF}}{\rm{PF}}}\) = \(\large{\frac{b-f}{f}}\)

であり、また、PA″ = AA' であるから上式に代入して、

  \(\large{\frac{\rm{BB'}}{\rm{AA'}}}\) = \(\large{\frac{b-f}{f}}\)  …… 上の②式と同一

これらを計算していくと上と同じ結果が得られます。


倒立実像

ここまで説明してきた像はすべて倒立であり、BB'の位置にスクリーンを置けば像が映し出されるので実像です。一方、下で説明する『物体を焦点より近くに置いたとき』の像は虚像です。人間が脳内で感じる像です。

物体を焦点より近くに置いたとき

物体を焦点Fより近くに置いたときは、b が負になります。鏡の向こう側(後方、裏側)に像ができます。

で示した代表的な光線のうち、の線によって作られる三角形を考えてみます。

△AA'F△PB″Fは相似だから、

  \(\large{\frac{\rm{PB″}}{\rm{AA'}}}\) = \(\large{\frac{\rm{PF}}{\rm{AF}}}\) = \(\large{\frac{f}{f-a}}\)

であり、また、PB″ = BB' であるから上式に代入して、

  \(\large{\frac{\rm{BB'}}{\rm{AA'}}}\) = \(\large{\frac{f}{f-a}}\)  ……①'

△PA″F△BB'Fは相似だから、

  \(\large{\frac{\rm{BB'}}{\rm{PA″}}}\) = \(\large{\frac{\rm{BF}}{\rm{PF}}}\) = \(\large{\frac{b+f}{f}}\)

であり、また、PA″ = AA' であるから上式に代入して、

  \(\large{\frac{\rm{BB'}}{\rm{AA'}}}\) = \(\large{\frac{b+f}{f}}\)  ……②'

①'式と②'式は左辺が共通だから、

    \(\large{\frac{f}{f-a}}\) = \(\large{\frac{b+f}{f}}\)

 ∴  f2 = (b + f)(f - a)

 ∴  f2 = bf + f2 - ab - af

 ∴  0 = bf + 0 - ab - af

 ∴  ab = bf - af

 ∴  bf - af = ab   両辺を abf で割って

 ∴  \(\large{\frac{bf}{abf}}\) - \(\large{\frac{af}{abf}}\) = \(\large{\frac{ab}{abf}}\)

 ∴  \(\large{\frac{1}{a}}\) - \(\large{\frac{1}{b}}\) = \(\large{\frac{1}{f}}\)  ……③'

この式は

    \(\large{\frac{1}{a}}\) + \(\large{\frac{1}{(-b)}}\) = \(\large{\frac{1}{f}}\)

とみなすことができます。

倍率

このときの倍率については、

で示した代表的な光線のの線によって作られる三角形に着目しますと、

  m = \(\large{\frac{b}{a}}\)

と分かります。


正立虚像

このときできる像は、鏡の手前(左図における左側)から見たときに、鏡の向こうに像があるように人間が脳内で感じるものです。つまり虚像です。そして倒立像ではなく正立像です。


焦点距離は半径の半分

次に、焦点距離と半径の関係を探ってみます。

で示した代表的な光線のの線によって作られる三角形について考えてみますと、△AA'Oと△BB'Oは相似だから、

  \(\large{\frac{\rm{BB'}}{\rm{AA'}}}\) = \(\large{\frac{\rm{BO}}{\rm{AO}}}\) = \(\large{\frac{R-b}{a-R}}\)

上で説明した倍率の式

    m = \(\large{\frac{\rm{BB'}}{\rm{AA'}}}\) = \(\large{\frac{b}{a}}\)

と合わせますと、

    \(\large{\frac{R-b}{a-R}}\) = \(\large{\frac{b}{a}}\)

 ∴  aR - ab = ab - bR

 ∴  aR + bR = 2ab  両辺を abR で割って

 ∴  \(\large{\frac{aR}{abR}}\) + \(\large{\frac{bR}{abR}}\) = \(\large{\frac{2ab}{abR}}\)

 ∴  \(\large{\frac{1}{b}}\) + \(\large{\frac{1}{a}}\) = \(\large{\frac{2}{R}}\)

 ∴  \(\large{\frac{1}{a}}\) + \(\large{\frac{1}{b}}\) = \(\large{\frac{2}{R}}\)

この式と写像公式③式

    \(\large{\frac{1}{a}}\) + \(\large{\frac{1}{b}}\) = \(\large{\frac{1}{f}}\)

を見比べますと、

    \(\large{\frac{1}{f}}\) = \(\large{\frac{2}{R}}\)

 ∴  f = \(\large{\frac{R}{2}}\)

となっていて、焦点距離は半径の半分、と分かります。

凹面鏡のまとめ

物体を焦点より遠くに置いたときと近くに置いたときの写像公式を一つにして表現してみます。つまり③式と③'式を一つにします。b は負の値もとることとします。鏡の後方に像ができるときを負とします。『球面鏡のまとめ』もご参照ください。

    \(\large{\frac{1}{a}}\) + \(\large{\frac{1}{b}}\) = \(\large{\frac{1}{f}}\)

    a > f のとき b > 0 で倒立実像
    a < f のとき b < 0 で正立虚像

    m = \(\large{\frac{|b|}{a}}\)




























  閉じる