光の散乱・分散

光の散乱

光の進路に障害物があると、波長の短い光(紫波)は反射しますが波長の長い光(赤波)は通り抜けてしまいます。中くらいの波長の光(青波)はいろいろな方向に反射します。これを光の散乱といいます。(実際にはこんな単純ではありません。詳しくは「レイリー散乱」で検索してみてください。)

太陽光は波長の長い光や波長の短い光を含んでいます。波長の比較的長い赤や橙(だいだい)の光は大気の中を真っ直ぐ進みます。波長の比較的短い青や紫の光は大気中の窒素や酸素分子により散乱します。

ハワイでの夕方は日本ではお昼に当たりますが、ハワイで夕日を見ている人には赤の光が多く届き、日本の人には青の光が多く届きます。ハワイに向かう太陽光にとっては大気が厚く、日本に向かう太陽光にとっては大気が薄いからです。

朝夕の空が赤く見え、昼間の空が青く見えるのはこのような原理です。


光の分散

光の分散

赤なら赤、青なら青といった1つの色しかない(1つの波長しかない)光を単色光といいます。それに対して、様々な波長の光を含んだ光を白色光といいます。人間の目に白く映るからです逆にいいますと、様々な波長を含んでいないと人間は「白」と感じません。
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。この様々な波長を含んだ白色光を、ガラスでできた三角形の角柱(プリズム)に通すと屈折によって様々な色に分離されます。波長の比較的長い赤はあまり曲げられず、波長の比較的短い青は大きく曲げられます。これを光の分散といいます。「分散」に似た言葉に「分光」という言葉があります。正確なことはわかりませんが、「分光」は動詞的に使って「分散」は名詞的に使うような気がします。「白色光はプリズムで分光することができる。このことを光の分散という。」といった使い方をすると思います。
高校物理では「分散」という言葉だけを使います。
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色の種類はきっちり7つに分けられるわけではありませんが、以下の順番は一応覚えておいた方がいいです。
<波長が長い><波長が短い>「せきとうおうりょくせいらんし」と覚えます。
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一般的な物質中では波長が短いほど光速が遅い

真空中での光速はその値が決まっていますが、物質に侵入した光は波長によって光速の値が違ってきます。可視光線が物質に侵入すると、一般に、波長が短い(振動数が大きい)光の方が光速が遅くなります。その理由は難しくて説明できません。ガラスなどを構成する原子では、赤色波より紫色波の方がガラス構成原子の固有振動数に近く、波を吸収してから再放出するまでに時間が掛かる、というような話です。大学に行って学んでください。

光速が遅いということは絶対屈折率が大きいということであり、波長によって速さが違うということは波長によって絶対屈折率が違う、ということになるのですが、絶対屈折率の項で紹介した表ではその数値を確定的に列挙していますが、これは厳密には、波長が 589.3 nm の光が各媒質の中を進むときの値のことです。589.3 nm より小さい波長の光においては(光速が遅くなるので)列挙された数値よりちょっと大きくなります。ややこしいです。

ホイヘンスの原理による説明

白色光には、赤や緑や紫など様々な波長の光が含まれていて、プリズムに入射すると波長によって速さに違いが出て、速さに違いがあるということは屈折率が違うということであり、つまり、波長によって曲がり方が違うということで、そのことによって光の分散が起こるわけです。

このことをホイヘンスの原理を使って説明してみます。

左図は『波の屈折』項で示した図です。その項では異なる媒質を通過するときに屈折が起こることを説明しましたが、

いま説明したいのは、波長の違い(色の違い)によって曲がる角度が違うということです。

屈折の法則の式

  \(\large{\frac{\sin i}{\sin r}}\) = \(\large{\frac{v_1}{v_2}}\)

において、赤色波、青色波、紫色波によって v2 の値が異なりv2 の値が、媒質2固有の値というよりも、媒質2と各種波固有の値、ということです。
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、角度 r の大きさが異なります。

同じ方向に進む様々な波長の光が別の媒質に当って通過するとき、波長によって速さが違うので各々の屈折角が異なる、ということです。

これが光の分散です。


スペクトル

右図のように波長の順に並んだ色の帯をスペクトルといいます。

様々な色が連続しているスペクトルを連続スペクトルといいます。白熱電球の光最近は白熱電球が売られなくなってきたので、若い方はこれを知らないかもしれません。「はだか電球」といわれてたやつです。触るとヤケドするくらい熱いです。

蛍光灯の光は連続スペクトルではなく線スペクトルです。人工的な雰囲気の灯りです。

初期の頃のLED照明は線スペクトルでしたが、最近のは連続スペクトルです。自然な雰囲気の灯りです。
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や太陽光によって得られるスペクトルで、主に高温の固体から出されます。

一方、水素やナトリウムから出る光のスペクトルは細い線状になっていて線スペクトルまたは輝線スペクトルといいます。これは原子から発せられるものなので原子スペクトルともいいます。

また太陽光のスペクトルにはところどころに暗線(吸収線ともいう)が入っていて、フラウンホーファー線といいます18世紀のドイツの物理学者ヨゼフ・フォン・フラウンホーファーが発見しました。
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。これは太陽光が太陽のまわりの元素や地球の大気の酸素などによって特定の波長の光が吸収されてしまうためで、吸収スペクトルといいます。太陽光のスペクトルは連続スペクトルであり、吸収スペクトルでもあります。この吸収スペクトルを調べることによって太陽のまわりにどのような元素があるのかがわかります。