光の分散
赤なら赤、青なら青といった1つの色しかない(1つの波長しかない)光を単色光といいます。それに対して、様々な波長の光を含んだ光を白色光といいます。人間の目に白く映るからです*逆にいいますと、様々な波長を含んでいないと人間は「白」と感じません。
閉じる。この様々な波長を含んだ白色光を、ガラスでできた三角形の角柱(プリズム)に通すと屈折によって様々な色に分離されます。波長の比較的長い赤はあまり曲げられず、波長の比較的短い青は大きく曲げられます。これを光の分散といいます。*「分散」に似た言葉に「分光」という言葉があります。正確なことはわかりませんが、「分光」は動詞的に使って「分散」は名詞的に使うような気がします。「白色光はプリズムで分光することができる。このことを光の分散という。」といった使い方をすると思います。
高校物理では「分散」という言葉だけを使います。
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色の種類はきっちり7つに分けられるわけではありませんが、以下の順番は一応覚えておいた方がいいです。
<波長が長い>赤→橙→黄→緑→青→藍→紫<波長が短い>*「せきとうおうりょくせいらんし」と覚えます。
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一般的な物質中では波長が短いほど光速が遅い
真空中での光速はその値が決まっていますが、物質に侵入した光は波長によって光速の値が違ってきます。可視光線が物質に侵入すると、一般に、波長が短い(振動数が大きい)光の方が光速が遅くなります。その理由は難しくて説明できません。ガラスなどを構成する原子では、赤色波より紫色波の方がガラス構成原子の固有振動数に近く、波を吸収してから再放出するまでに時間が掛かる、というような話です。大学に行って学んでください。
光速が遅いということは絶対屈折率が大きいということであり、波長によって速さが違うということは波長によって絶対屈折率が違う、ということになるのですが、絶対屈折率の項で紹介した表ではその数値を確定的に列挙していますが、これは厳密には、波長が 589.3 nm の光が各媒質の中を進むときの値のことです。589.3 nm より小さい波長の光においては(光速が遅くなるので)列挙された数値よりちょっと大きくなります。ややこしいです。
ホイヘンスの原理による説明
白色光には、赤や緑や紫など様々な波長の光が含まれていて、プリズムに入射すると波長によって速さに違いが出て、速さに違いがあるということは屈折率が違うということであり、つまり、波長によって曲がり方が違うということで、そのことによって光の分散が起こるわけです。
このことをホイヘンスの原理を使って説明してみます。
左図は『波の屈折』項で示した図です。その項では異なる媒質を通過するときに屈折が起こることを説明しましたが、
いま説明したいのは、波長の違い(色の違い)によって曲がる角度が違うということです。
屈折の法則の式
\(\large{\frac{\sin i}{\sin r}}\) = \(\large{\frac{v_1}{v_2}}\)
において、赤色波、青色波、紫色波によって v2 の値が異なり*v2 の値が、媒質2固有の値というよりも、媒質2と各種波固有の値、ということです。
閉じる、角度 r の大きさが異なります。
同じ方向に進む様々な波長の光が別の媒質に当って通過するとき、波長によって速さが違うので各々の屈折角が異なる、ということです。
これが光の分散です。