図1(a)、(b)のように、薄いプラスチック板でできた斜面の裏に、図1(C)で示したようなエナメル線を巻いて作った円形コイルを取り付けた。この斜面の上端で磁石を静かに離すと、磁石は図1(a)に示した破線に沿って斜面をすべり、コイルの真上を通った。ただし、斜面と磁石の間の摩擦は無視できるとする。また、磁石の上面はN極、下面はS極であり、磁石は斜面上で常に等加速度直線運動をするものとする。
(問1)コイルの両端の端子に検流計を接続した。最初、磁石を斜面の上端で静かに離すと、磁石はコイルの真上を通過して検流計の針が振れた。次に、下のアまたはイのいずれかの操作のみを行って、それぞれ磁石を同じように斜面の上端からコイルの真上を通過させた。このときに検流計の針の振れの大きさは、ア・イのいずれの操作も行っていない最初の場合と比べてそれぞれどのようになるか。語句の組合せとして最も適当なものを、下の①~⑨のうちから一つ選べ。ただし、コイルのエナメル線の抵抗は無視できるものとする。
ア 磁石を、より強い磁石と取り替える。
イ コイルの巻き数を半分にする。
ア | イ | |
---|---|---|
① | 大きくなる | 大きくなる |
② | 大きくなる | 小さくなる |
③ | 大きくなる | 変わらない |
④ | 小さくなる | 大きくなる |
⑤ | 小さくなる | 小さくなる |
⑥ | 小さくなる | 変わらない |
⑦ | 変わらない | 大きくなる |
⑧ | 変わらない | 小さくなる |
⑨ | 変わらない | 変わらない |
(問2)次に、図2のように、形状と巻き数がともに同じ二つのコイルA、Bを用意し、これらを斜面の裏側に同じように取り付けた。磁石を斜面の上端で静かに離し、これら二つのコイルの真上を通過させるときにコイルに生じる電圧をオシロスコープで測定した。このとき、コイルA、Bのそれぞれの両端に生じる電圧の時間変化を表すグラフとして最も適当なものを、下の①~④のうちから一つ選べ。ただし、図2の矢印の向きに電流が流れたときの測定電圧を正とする。また、グラフにおいて、電圧と時間の一目盛あたりの値および原点の時刻は、A、Bの場合で同じとする。
#センター13本試
コイルの近くで磁石を動かしたときにコイルに電流が生じる現象を電磁誘導といいますが、その法則には以下のような特徴があります。
磁石を速く動かすほど、
磁石の磁力が強いほど、
コイルの巻き数が多いほど、
発生する誘導起電力(電圧)が大きくなり、
その向きはレンツの法則に従う。
あと、エナメル線というのは銅線のことです。銅線のまわりにエナメルを塗布したものです。エナメル線=銅線=導線です。
(問1)
「ア 磁石を、より強い磁石と取り替える」の操作を行うと電圧(電流)は大きくなります。
「イ コイルの巻き数を半分にする」の操作を行うと電圧(電流)は小さくなります。
答えは ② です。
(問2)
磁力線はN極から湧き出してS極に吸い込まれます。
コイルAに磁石が迫ってくると、
レンツの法則により、コイルAには下向きの磁場が発生します。S極が迫ってくるので「来ちゃいやよ」とS極がコイルAの上面に発生します。
このような向きの磁場を発生させるのは右ねじの法則により、左図のような向きの電流(電圧)です。題意よりこの向きは正です。
磁石がコイルAを通り過ぎようとする頃には、逆に「行っちゃ-いやよ」と、コイルAに上向きの磁場が発生します。
このような磁場を発生させる電流の向きは負です。
磁石が迫ってくる瞬間と逃げていく瞬間では電流(電圧)の向きが逆になります。
同じように、コイルBに磁石が迫ってくるとコイルBには正の電流が流れ、磁石が逃げていくと負の電流が流れます。
ただしこのとき、磁石のスピードがコイルAのときより速くなっています。磁石が等加速度直線運動をしているからです。コイルBを通過する時間は短くなり、そして誘導起電力(電圧)はコイルAのときより大きくなります。
ここまで説明してきたことを表しているグラフは ③ です。