次の文章中の空欄ア~ウに入れる式の組合せとして正しいものを、下の①~⑧のうちから一つ選べ。
図2のような、電圧が一定の直流電源を含む回路を考える。この回路に用いたすべり抵抗器では、AP間の抵抗値はAPの長さに比例し、Pが右端Bにあるとき最大となる。起電力 E0 、内部抵抗 r0 の電池を用いたとき、検流計に流れる電流が 0 になるようにPの位置を調整すると、AP間の抵抗値は R0 になり、電流計の示す電流値は I0 であった。このとき、起電力 E0 と電流値 I0 の間にアの関係が成り立つ。
次に、Pの位置を動かさずに、電池を起電力 E1 、内部抵抗 r1 の別の電池に置き換えると、検流計に電流が流れた。その電流が 0 になるようにPの位置を右に移動して調整すると、電流計の示す電流値は再び I0 となった。このとき、電池の起電力の間の大小関係はイであり、すべり抵抗器のAP間の抵抗値はウと表される。
ア | イ | ウ | |
---|---|---|---|
① | E0 = (R0 + r0)I0 | E0 > E1 | \(\large{\frac{E_1}{E_0}}\)R0 |
② | E0 = (R0 + r0)I0 | E0 > E1 | \(\large{\frac{E_0}{E_1}}\)R0 |
③ | E0 = (R0 + r0)I0 | E0 < E1 | \(\large{\frac{E_1}{E_0}}\)R0 |
④ | E0 = (R0 + r0)I0 | E0 < E1 | \(\large{\frac{E_0}{E_1}}\)R0 |
⑤ | E0 = R0I0 | E0 > E1 | \(\large{\frac{E_1}{E_0}}\)R0 |
⑥ | E0 = R0I0 | E0 > E1 | \(\large{\frac{E_0}{E_1}}\)R0 |
⑦ | E0 = R0I0 | E0 < E1 | \(\large{\frac{E_1}{E_0}}\)R0 |
⑧ | E0 = R0I0 | E0 < E1 | \(\large{\frac{E_0}{E_1}}\)R0 |
#センター16追試物理
ア
検流計に電流が流れていないので電池の内部抵抗にも電流は流れていません。よって電池の内部抵抗による電圧降下は、オームの法則より、
(抵抗)×(電流)= r0 × 0 = 0
0 です。電流が流れていないということは自由電子の衝突が無いということです。抵抗による電圧降下は起こりません。
そうしますとこの回路は左図のような回路であるとみなすことができ、
左図の緑色の経路について右回りを正とするキルヒホッフの第2法則の式を立てますと、
+ E0 - R0I0 = 0
R0 の抵抗に流れる電流は I0 です。
(また、基本事項の確認ですが)
R0 の抵抗に掛かる電圧が、
直流電源からの電圧と電池からの電圧とで足される、
というようなことは起こりません。
直流電源と電池は”並列接続”です。
∴ E0 = R0I0 ……❶
イ
Pの位置を右に移動した後のAP間の抵抗値を R1 と置くと、アと比べて、R0 が R1 に、E0が E1 に変わっただけで状況としては全く同じなので上と同じように、キルヒホッフの第2法則より、
E1 = R1I0 ……❷
R0 < R1 であるから、
R0I0 < R1I0
よって、❶、❷より、
E0 < E1
ウ
❶式を❷式で割りますと、
\(\large{\frac{E_0}{E_1}}\) = \(\large{\frac{R_0I_0}{R_1I_0}}\)
∴ \(\large{\frac{E_0}{E_1}}\) = \(\large{\frac{R_0}{R_1}}\)
∴ R1 = \(\large{\frac{E_1}{E_0}}\)R0 (下の『水位に例えてみる』参照)
答えは ⑦ です。
(電流が流れないということ)
検流計に電流が流れないとき、電流計を流れる I0 の電流はすべてすべり抵抗器に向かうわけですが、
この部分はどうなっているかというと、
押し合いが起こっていて
正電荷から見たときに「押し合い」です。
自由電子から見たときは「引き合い」です。
、その力がちょうどつり合っています。
この部分はどうなっているかというと、
引っ張り合いが起こっていて
正電荷から見たときに「引き合い」です。
自由電子から見たときは「押し合い」です。
、その力がちょうどつり合っています。
紫色部分の経路は電流が流れていないわけですが、圧力は掛かっています。あっちからの圧力とこっちからの圧力がたまたまつり合っているわけです。電池の起電力も力を発揮しています。電池の内部抵抗は圧力を受けていますが、たまたまつり合っていて自由電子が動かないでいます。自由電子が動かないのでジュール熱も発生しませんし電圧降下も起こりません。
電池が無ければ紫色部分にも電流が流れます。電池は紫色部分に電流が流れないように踏ん張っているといえます。
(水位に例えてみる)
この回路の様子を水位に例えると左図のようになります。
電池は力を発揮して電流の流れを食い止めています。AP間が長くなれば電圧降下も大きくなり、電池も力強くしなければ電流が流れ込んできていまいます。
PとBが一致する場合には、電池の起電力は直流電源の起電力と同じ大きさにしなければなりません。