qG7T4

図1のように、斜面S0、S1と水平な床がなめらかにつながっている。斜面S0および床は摩擦のない面であり、斜面S1は粗い面である。床から高さ h の斜面S0上の点Pより、質量 m の小物体Aを斜面に沿って下方に速さ v0 で打ち出したところ、床に置かれた質量 M の小物体Bに衝突した。ただし、斜面S1の水平面からの角度を θ とし、重力加速度の大きさは g とする。また、斜面S1と小物体Bの間の動摩擦係数を μ' とする。

図 1

(問1)小物体Bに衝突する直前の小物体Aの速さ v1 はどれだけか。

(問2)小物体Aは小物体Bに衝突した直後に静止した。衝突直後の小物体Bの速さ v2 はどれだけか。

(問3)図2のように、小物体Bは斜面S1をのぼり、点Qにおいて速さが 0 になった。点Qの床からの高さはいくらか。

図 2

#センター03本試

(問1)
小物体Aの点Pにおける力学的エネルギー

    \(\large{\frac{1}{2}}\)mv02 + mgh  ……①

小物体Aの衝突直前の力学的エネルギーは

    \(\large{\frac{1}{2}}\)mv12 + mg×0  ……②

力学的エネルギー保存の法則より ① = ② であるから、

    \(\large{\frac{1}{2}}\)mv12 = \(\large{\frac{1}{2}}\)mv02 + mgh

 ∴  v12 = v02 + 2gh

 ∴  v1 = \(\sqrt{{v_0}^2+2gh}\)

と求まります。

 

(問2)
2物体の衝突直前の運動量の和は

    mv1 + M×0  ……③

2物体の衝突直後の運動量の和は

    m×0 + Mv2  ……④

運動量保存の法則より ③ = ④ であるから、

    Mv2 = mv1

 ∴  v2 = \(\large{\frac{m}{M}}\)v1

(問3)図2のように、小物体Bは斜面S1をのぼり、点Qにおいて速さが 0 になった。点Qの床からの高さはいくらか。

図 2

求める高さを h1 と置きます。

小物体Bの斜面S1をのぼり始める直前の力学的エネルギーは

    \(\large{\frac{1}{2}}\)Mv22 + Mg×0  ……⑤

小物体Bの点Qでの力学的エネルギーは

    \(\large{\frac{1}{2}}\)M×0 + Mgh1  ……⑥

摩擦がはたらいているので力学的エネルギーは保存されません。摩擦が無ければもっと高くまでのぼっていたはずです。力学的エネルギー⑥は力学的エネルギー⑤より小さくなっています。その差分は摩擦力にされた仕事です。摩擦熱です。つまり、

    ⑤ - ⑥ = (摩擦力にされた仕事)

⇔  \(\large{\frac{1}{2}}\)Mv22 - Mgh1 = (摩擦力にされた仕事)  ……⑦

です。

摩擦力にされた仕事というのは、(摩擦力)×(移動距離)で、
(摩擦力)というのは(動摩擦係数)×(垂直抗力)で、
(垂直抗力)は Mgcosθ で、
(移動距離)は l = \(\large{\frac{h_1}{\sinθ}}\) で、
つまり、
(摩擦力にされた仕事)= μ'Mgcosθ×\(\large{\frac{h_1}{\sinθ}}\)
です。

よって、⑦式は

    \(\large{\frac{1}{2}}\)Mv22 - Mgh1 = μ'Mgcosθ×\(\large{\frac{h_1}{\sinθ}}\)  ……⑦'

となります。

これは、

始めに \(\large{\frac{1}{2}}\)Mv22 のエネルギーがあって、摩擦力が - μ'Mgcosθ×\(\large{\frac{h_1}{\sinθ}}\) の仕事をして、Mgh1 のエネルギーになった(摩擦力が仕事をしなければもっと高くまでのぼって Mgh2 とかになっていた)と考えれば、

    \(\large{\frac{1}{2}}\)Mv22 - μ'Mgcosθ×\(\large{\frac{h_1}{\sinθ}}\) = Mgh1

と立式することもできますし、

始めにあった \(\large{\frac{1}{2}}\)Mv22 のエネルギーが、摩擦熱 μ'Mgcosθ×\(\large{\frac{h_1}{\sinθ}}\) と位置エネルギー Mgh1 に変わった、と考えれば、

    \(\large{\frac{1}{2}}\)Mv22 = μ'Mgcosθ×\(\large{\frac{h_1}{\sinθ}}\) + Mgh1

と立式することもできます。

いずれも同じ式です。

⑦'式を解きます。

    \(\large{\frac{1}{2}}\)Mv22 - Mgh1 = μ'Mgcosθ×\(\large{\frac{h_1}{\sinθ}}\)

 ∴  \(\large{\frac{1}{2}}\)v22 - gh1 = μ'gcosθ×\(\large{\frac{h_1}{\sinθ}}\)

 ∴  v22sinθ - 2gh1sinθ = 2μ'gh1cosθ

 ∴  v22sinθ = 2gh1sinθ + 2μ'gh1cosθ

 ∴  2gh1(sinθ + μ'cosθ) = v22sinθ

 ∴  h1 = \(\large{\frac{{v_2}^2\sinθ}{2g(\sinθ + μ'\cosθ)}}\)