qNCJ2

図2のように、静止している質量 \(m\) の小物体を、同じ大きさの力 \(F\) で引いて三つの異なる向きに動かした。鉛直上向きに引いた場合をA、傾き45°の斜面に沿って上向きに引いた場合をB、水平方向に引いた場合をCとする。それぞれの場合に1秒間引いた直後の小物体の運動エネルギーを \(K_\rm{A}\)、 \(K_\rm{B}\)、 \(K_\rm{C}\) とし、それらの大小関係を表す式として正しいものを、下の①~⑥のうちから 一つ選べ。ただし、斜面と水平面はなめらかであり、空気の抵抗は無視できるものとする。また、重力加速度の大きさを \(g\) とし、 \(F>mg\) が満たされているものとする。


A

B

C
図 2

① \(K_{\rm{A}}=K_{\rm{B}}=K_{\rm{C}}\)  ② \(K_{\rm{A}}=K_{\rm{B}}>K_{\rm{C}}\)  ③ \(K_{\rm{A}}>K_{\rm{B}}>K_{\rm{C}}\)  ④ \(K_{\rm{C}}>K_{\rm{A}}=K_{\rm{B}}\)  ⑤ \(K_{\rm{C}}>K_{\rm{A}}>K_{\rm{B}}\)  ⑥ \(K_{\rm{C}}>K_{\rm{B}}>K_{\rm{A}}\)

#センター20本試物理基礎

運動エネルギーが何かといったらそれは 「\(\large\frac{1}{2}\)」 と 「物体の質量」 と 「物体の速さの2乗」 を掛けたものです。今、A、B、Cともに物体の質量は \(m\) で共通なのだから、 物体の速さだけが問題になります。

そして、A、B、Cともに同じ大きさの力で引かれているので1秒後の速さは重力にどれだけ邪魔されたかによります。Aではもろに邪魔され、Bでは斜め45°で邪魔され、Cではまったく邪魔されていません。

ですから、物体の速さは \(\rm{C}>\rm{B}>\rm{A}\) であり、つまり、運動エネルギーの大きさの大小関係は

 ⑥ \(K_{\rm{C}}>K_{\rm{B}}>K_{\rm{A}}\)

です。

 

 

(余談:いちおう \(K_\rm{A}\)、 \(K_\rm{B}\)、 \(K_\rm{C}\) それぞれの大きさを計算してみます)

(A)
加速度を \(a_\rm{A}\) としまして運動方程式を立てます。上向きの力が \(F\) で下向きの力が \(mg\) だから

   \(ma_{\rm{A}} = F - mg\)

 ∴ \(a_{\rm{A}} = \frac{F - mg}{m}\)

1秒後の速さを \(v_\rm{A}\) としますと、等加速度直線運動だから

   \(v_{\rm{A}} = 0 + a_{\rm{A}}×1 = \frac{F - mg}{m}\)

運動エネルギーは

   \(K_\rm{A} = {\large\frac{1}{2}}×m×(\frac{F - mg}{m})^2 = {\color{orange}{\large\frac{1}{2}}\frac{(F - mg)^2}{m}}\)

(B)
加速度を \(a_\rm{B}\) としまして運動方程式を立てます。斜め上向きの力が \(F\) で反対の斜め下向きの力が \(\frac{1}{ \sqrt{2}}mg\) だから

   \(ma_{\rm{B}} = F - \frac{1}{ \sqrt{2}}mg\)

 ∴ \(a_{\rm{B}} = \frac{F - \frac{1}{ \sqrt{2}}mg}{m}\)

1秒後の速さを \(v_\rm{B}\) としますと、等加速度直線運動だから

   \(v_{\rm{B}} = 0 + a_{\rm{B}}×1 = \frac{F - \frac{1}{ \sqrt{2}}mg}{m}\)

運動エネルギーは

   \(K_\rm{B} = {\large\frac{1}{2}}×m×(\frac{F - \frac{1}{ \sqrt{2}}mg}{m})^2 = {\color{orange}{\large\frac{1}{2}}\frac{(F - \frac{1}{ \sqrt{2}}mg)^2}{m}}\)

(C)
加速度を \(a_\rm{C}\) としまして運動方程式を立てます。横向きの力が \(F\) で下向きの力 \(mg\) は運動に無関係だから

   \(ma_{\rm{C}} = F\)

 ∴ \(a_{\rm{C}} = \frac{F}{m}\)

1秒後の速さを \(v_\rm{C}\) としますと、等加速度直線運動だから

   \(v_{\rm{C}} = 0 + a_{\rm{C}}×1 = \frac{F}{m}\)

運動エネルギーは

   \(K_\rm{C} = {\large\frac{1}{2}}×m×(\frac{F}{m})^2 = {\color{orange}{\large\frac{1}{2}}\frac{F^2}{m}}\)

 

というわけで見比べてみますと

 \(K_\rm{C}>K_\rm{B}>K_\rm{A}\)

となっています。