熱量

熱量

熱量

熱運動』項で、熱とは熱運動の運動エネルギーのことであると説明しましたが、その熱の量を熱量といいます 熱量のことを単に熱といってしまうこともあります。電気量のことを電荷といってしまうのと同じです。 。エネルギーの一種なので、単位は [J] ジュール です。仕事運動エネルギー位置エネルギーと同じ単位です。昔は [cal] カロリー という単位が使われていましたが、現在は物理では [J] を使うことになっています。しかし、高校物理ではときどき [cal] が出てきます。(物理とは直接関係ないですが、栄養学の分野ではもっぱら [cal] を使います。)

熱容量

物体の温度を 1K(いちけるびん)上げるのに必要な熱量を、その物体の熱容量といいます。単位は [J/K] ジュール毎ケルビン です。熱容量は熱の含有可能量とでもいうべき量です。

物体の質量が大きければ温度を 1K 上げるのにその分大きな熱量が必要になります。つまり物体の熱容量が大きいということです。また、温度を 1K でなく、もっと上げるとなるとその分大きな熱量が必要になります。ですので、熱容量 \(C\) [J/K] の物体の温度を、\(ΔT\) [K] だけ上昇させるのに必要な熱量 \(Q\) [J] は、

熱容量 \(\boldsymbol{C}\)

 \(\boldsymbol{Q = CΔT}\)

となります。 量記号の \(Q\) は heat Quantity(熱量)から、\(C\) は heat Capacity(熱容量)から、\(T\) は Temperature(温度)から。

\(T\) でなく \(ΔT\) であるので、セ氏温度 [℃] と考えても絶対温度 [K] と考えてもどちらでも大丈夫です。

比熱

物体の質量が大きければ熱容量は大きくなりますが、物質の種類によっても熱容量は変わってくるはずです。そこで、単位質量当たりの熱容量を考え、物質の種類による熱容量の違いを表したものが比熱(比熱容量)という量です。物質 1g 当たりの熱容量です。(1kg ではありません)。熱容量を [g] で割ったものです。1g の物質の温度を 1K 上げるのに必要な熱量です。単位は [J/(g⋅K)] ジュール毎グラム毎ケルビン です。比熱が大きい物質は熱の含有可能量が大きく、温まりにくく、冷めにくいです。

比熱 \(c\) [J/(g⋅K)]、質量 \(m\) [g] の物体の熱容量 \(C\) [J/K] は、

   \(C = mc\)

であり、この物体の温度を \(ΔT\) [K] だけ上昇させるのに必要な熱量 \(Q\) [J] は、

比熱 \(\boldsymbol{c}\)

 \(\boldsymbol{Q = mcΔT}\)

となります。

\(mcΔT\) : 熱量。物質の種類と量と温度による。
\(mc\color{#ddd}{ΔT}\) : 熱容量。物質の種類と量による。
\({\color{#ddd}m}c{\color{#ddd}ΔT}\) : 比熱。物質の種類による。

比熱の例
物質 比熱 [J/(g⋅K)]
4.2
2.1
なたね油 2.0
アルミニウム 0.88
0.44
0.38
0.13
約0.84
木材 約1.3

厳密には温度によって比熱の値は変わります。
水の比熱は結構大きいです。湯たんぽに適しています。水 1g の温度を 20℃ から 21℃ に上げるのに 4.2J ものエネルギーが必要であり、逆に、1g の水が 21℃ から 20℃ に下がったときには周りに 4.2J ものエネルギーを放出します。
水の比熱の値 4.2 というのはもうちょっと詳しくいいますと 4.19 であり、これは熱の仕事当量の値でもあります。

比熱と紛らわしい物理量が熱伝導率です。これは熱の伝わりやすさを表わす指標です。(比熱は熱の含有可能量を表わす指標です)。鉄や銅の熱伝導率は水よりも遥かに大きいです。

モル比熱比熱比というものもあります。

熱量保存の法則

温度の高い物体と温度の低い物体を接触させると、熱が高温物体から低温物体へ移っていきます。これを熱伝導といいます。必ず高温側から低温側へ移ります。低温側から高温側へ移ることはありません

高温物体と低温物体を接触させて十分に時間が経つと、2つの物体の温度が等しくなります。温度が等しくなると熱の移動は無くなります。この状態を熱平衡状態といいます。

このことを考えると、少ない量の検査対象物の温度を計測するときは、温度計の温度を予想される温度近くに温めておく必要があると分かると思います。高温の検査対象物に低温の温度計を差し込むと、検査対象物の温度が下がってしまいます。 電流計のジレンマ電圧計のジレンマと似た話です。

また、高温物体と低温物体を接触させたときに、外部との熱の出入りが無ければ、高温物体が失った熱量と低温物体が得た熱量は等しくなります。熱量保存の法則といいます。エネルギー保存の法則の熱力学バージョンです。

熱量保存の法則

高温物体が失った熱量 = 低温物体が得た熱量

質量 \(m_1\) [g]、比熱 \(c_1\) [J/(g⋅K)]、温度 \(t_1\) [℃] の高温物体と、質量 \(m_2\) [g]、比熱 \(c_2\) [J/(g⋅K)]、温度 \(t_2\) [℃] の低温物体を接触させて、温度 \(t\) [℃] で熱平衡状態になったとしますと、

高温物体が失った熱量 : \(m_1c_1(t_1 - t)\)
低温物体が得た熱量 : \(m_2c_2(t - t_2)\)

であるので、

   \(\boldsymbol{m_1c_1(t_1 - t) = m_2c_2(t - t_2)}\)

となります。(この式はセルシウス温度でなく絶対温度のときも成り立ちます)。この式を使えば、比熱の分かっている物質を使って、比熱の分かっていない物質の比熱を割り出すことができます。

また、熱容量は \(C = mc\) ですから、\(C_1\) = \(m_1\)\(c_1\) 、\(C_2\) = \(m_2\)\(c_2\) とすると、

   \(C_1(t_1\) - \(t) = C_2(t - t_2)\)

とも書き表せます。