平行電流間にはたらく力

平行な電流の間にはたらく力

平行な電流の間には力がはたらく

平行な導線に電流を流すと、片方の電流がつくる磁場によってもう片方の電流が力を受け、導線同士が引き合ったり反発し合ったりします。

導線Bが受ける力

左図のように、距離 r [m] だけ離れた2本の平行な長い導線A、Bにそれぞれ IA [A] 、IB [A] の電流が、同じ向きに流れているとします。

導線Aがつくる磁場は、

  H = \(\large{\frac{I_\rm A}{2\pi r}}\)  ……①

であり、

導線Bのうち、長さ l の部分が、この磁場から受ける力は、

    F = μ0IBHlsinθ   (今、空気中での話であるとして透磁率は μ0 とします。)

ですが、

今、2つの導線は平行であり、導線Aがつくる磁場と導線Bの角度は垂直です。sinθ = sin90° = 1 です。

つまり、

    F = μ0IBHl

です。この式の H のところに①式を代入すると、

    F = μ0IB\(\large{\frac{I_\rm A}{2\pi r}}\)l

     = \(\large{\frac{μ_0I_{\rm A}I_\rm{B}}{2\pi r}}\)l

となり、これが導線Bが受ける力の大きさになります。この式は l [m] の導線部分に加わる力の大きさのことですが、もし 1m 当たりに加わる力を求めるとすると、l = 1 とし、

    F = \(\large{\frac{μ_0I_{\rm A}I_\rm{B}}{2\pi r}}\)

となります。

導線Aが受ける力

上とまったく同じように考えていくと、導線Aが受ける力は、

  F = \(\large{\frac{μ_0I_{\rm A}I_\rm{B}}{2\pi r}}\)l

となり、これはつまり導線Aが受ける力は導線Bが受ける力とまったく同じになるということです。これは当たり前です。作用⋅反作用の法則です力学における作用⋅反作用はイメージしやすいですが、電磁気学における作用⋅反作用はイメージしにくいかもしれません。
でもこれは作用⋅反作用の法則の一種です。
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平行な電流の間にはたらく力

結局、平行な電流の間にはたらく力というのは、

    F = \(\large{\frac{μ_0I_{\rm A}I_\rm{B}}{2\pi r}}\)l

です。

( 導線Bが受ける力と導線Aが受ける力を足して、
    F = 2\(\large{\frac{μ_0I_{\rm A}I_\rm{B}}{2\pi r}}\)l
になる、なんて考えてはだめです。)

力の向き

力の向きについては、フレミングの左手の法則により、下図のようになります。左手を使ってよく考えてみてください。右ねじの法則も思い出してください。

導線Bが受ける力   導線Aが受ける力

つまり、同じ向きの平行な電流は引き合うのです。

逆に、反対向きの平行な電流は反発し合います。下図のようになります。

導線Bが受ける力   導線Aが受ける力

 

このことは、しばしば以下のように説明されます。( は紙面の向こう側からこちら側へ は紙面こちら側から向こう側へ、電流が流れているということを示しています。)

電流が同じ向きの場合、
2つの導線の間の部分の磁場は向きが違うので弱め合い、磁力線の密度が少なくなり、それを解消しようと導線が近づこうとする。

電流の向きが反対の場合、
2つの導線の間の部分の磁場は向きが同じなので強め合い、磁力線の密度が多くなり、それを解消しようと導線は離れようとする。

このように、電流が流れる導線は、磁力線の”粗密”が解消されるような方向に動く、という法則があります。このことは覚えておくと何かと便利です。