質量

質量

質量と重さの違い

運動方程式 m a = F は質量を定義する式ともいえます。1.0N の力を加えて 1.0m/s2 だけ加速したら、その物体の質量は 1.0kg である、と決めるということです。

この質量という量は、その物体に含まれる陽子や中性子や電子の個数によって決まり、地球上(地球表面上)であろうが月面上であろうが変わらない量です。

質量に似た言葉に重さという言葉がありますが、これは厳密には質量を表す量ではなく、の大きさを表す量です。単位で表すと厳密には [N] です。重さの単位として [kg] を使うのは厳密には不正確です。地球の重力と月の重力は違うので、同じ物体でも地球上での重さと月面上での重さは違います。月面上では約1/6です。

たとえば、質量 1.0kg の物体の重さは、地球上では 9.8N ですが、月面上では 約1.6N です。

慣性質量と重力質量

運動方程式によって質量が決まるとなると、質量というものは動かしにくさを表す量、ということができます。質量が大きければなかなか加速しません。これは慣性の大きさを示しているといえます。ですので、運動方程式により定義されたこの質量を特別に慣性質量といいます。

実はもう一つ質量を定義する方法がありまして、それは重さから導き出すものです。質量 m[kg] の物体には(地球上では)mg[N] の重力が掛かっています。これを逆に考えて、重力 mg[N] の力が掛かるような物体の質量を m[kg] と決めるのです。重さを(g=)9.8で割ったものが質量であるとするのです。このようにして定義された質量を特別に重力質量といいます。

重力がなぜ発生するかというと、それは物体には万有引力という力がはたらくからです。地球上の質量 m[kg] の物体にはたらく重力 mg[N] は、物体と地球の間にはたらく万有引力のことなのです。(いま話が複雑になりすぎないように自転による遠心力は無視します)。地球の質量を M 、地球の半径を R 、万有引力定数を G としたとき、質量 m の物体と地球との間にはたらく万有引力は、

    F = G \(\large{\frac{M}{R^2}}\) m

であるのですが、この万有引力こそが重力 mg なのです。つまり、G \(\large{\frac{M}{R^2}}\) の部分が g(=9.8)なのです。

この万有引力(=重力)を 9.8 で割ったものが質量である、とするのが重力質量です。重力質量のおおもとは万有引力なのです。

そして万有引力と運動方程式は何の関係もありません。なので運動方程式によって定義された慣性質量と、万有引力によって定義された重力質量が一致するかどうかはわからないのです。慣性質量が2倍になったときに、重力質量も2倍になるとは言い切れないのです。動きにくさが2倍になったときに、引きつけられる力は1.9倍でしかない、ということが起こるかもしれないのです。

2kgの鉄球と1kgの鉄球を同じ高さから同時に落とすと、同時に着地します(空気抵抗は無視します)。2kgの鉄球の方が地球に引きつけられる力は2倍ですから早く到着しそうですが、動きにくさも2倍なので結局同時に着地します。このことにより、重力質量と慣性質量が等しいということがいえますが、これはあくまでも経験則です。

なぜ慣性質量と重力質量が一致するのかという原理的な問題は、とても難しい理論に依ります。詳しく知りたい方は「等価原理」という言葉で検索してみてください。