ドップラー効果は正負がややこしい
前項で示したように、ドップラー効果の式は、
f = \(\large{\frac{V-v_\rm{o}}{V-v_\rm{s}}}\normalsize{f_0}\)
というものですが、vo と vs の正負の決め方が、
「音源から観測者への向きを正とする」
というものでした。これがちょっとややこしくて間違いやすいです。
たとえば、V が 340m/s で、vo、vs が 100m/s の場合、以下のようなパターンがあります。
fA = \(\large{\frac{340-100}{340}}\normalsize{f_0}\) fB = \(\large{\frac{340+100}{340}}\normalsize{f_0}\)
fA = \(\large{\frac{340}{340+100}}\normalsize{f_0}\) fB = \(\large{\frac{340}{340-100}}\normalsize{f_0}\)
fA = \(\large{\frac{340-100}{340+100}}\normalsize{f_0}\) fB = \(\large{\frac{340+100}{340-100}}\normalsize{f_0}\)
fA = \(\large{\frac{340+100}{340+100}}\normalsize{f_0}\) fB = \(\large{\frac{340-100}{340-100}}\normalsize{f_0}\)
「音源から観測者への向きを正とする」と覚えてもどうしても間違えてしまいます。『ドップラー効果1』で説明した原理をしっかり理解して、「オトブンノヒト」と覚えて、分母(分子)に足す(引く)と、振動数は大きくなるのか、小さくなるのかをよく考えてください。
音速に近い速さで動くとき
次に、ドップラー効果をより深く理解してもらうために、音源や観測者が音速に近い速さで動く場合について説明します。vo = vs = 339m/s とします。
上で挙げた1番目のパターン
fA = \(\large{\frac{340-339}{340}}\normalsize{f_0}\) = \(\large{\frac{1}{340}}\normalsize{f_0}\) ほぼ 0 です。音速とまったく同じスピード(マッハ1)で進むと音を感じなくなります。音波は鼓膜を揺らしません。*かといって、マッハ1で飛ぶ飛行機のパイロットは無音にはならないと思います。エンジン音は機体を伝わり、骨を伝わり、脳に届くはずです。
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fB = \(\large{\frac{340+339}{340}}\normalsize{f_0}\) ≒ 2 f0 ただ2倍になるだけです。1オクターブ高い音になります。
上で挙げた2番目のパターン
fA = \(\large{\frac{340}{340+339}}\normalsize{f_0}\) ≒ \(\large{\frac{1}{2}}\)f0 ただ半分になるだけです。1オクターブ低い音になります。
fB = \(\large{\frac{340}{340-339}}\normalsize{f_0}\) = 340 f0 なんと340倍です。もし vs が 339.9m/s なら3400倍です。
これは実際には、
このようになるということです。
さらに描けば、
このようになるということです。移動する音源の先頭で全ての音波が重なり合います。
大音響が発生します。ソニックブームといいます。ジェット機はソニックブームが発生しないようマッハ1に達しない速度で飛んでいます。
波の発生源の移動する速さが、波の速さを超えることも起こり得ます。
波の様子は左図のようになります。
共通する接線の部分に大きな波ができます。衝撃波といいます。ソニックブームも衝撃波の一種です。
モーターボートは水面波の速さを簡単に超えます。ですので、どうしても衝撃波が発生してしまいます。*手漕ぎボートでいちゃついてるカップルを見つけたモーターボートの操縦士は、わざと高速で間近を通過し衝撃波を浴びせたりします。
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