うなりの式
正弦波の式を足し合わせてみる
本編で \(f = | f_1 - f_2 |\) であることを図を使って説明しましたが、本項では数式を使って説明してみます。
上図のような正弦波は単振動によって形作られますが、単振動の変位を表す式は、
\(x = A\sinωt\)
です。
ここで、
赤波の変位を \(y_1\) 、振幅を 1 、角振動数を \(ω_1\) 、振動数を \(f_1\) 、(『単振動』項参照)
青波の変位を \(y_2\) 、振幅を 1 、角振動数を \(ω_2\) 、振動数を \(f_2\) 、\(| f_1 - f_2 | ≪ f_2\) 、
2つを足し合わせた波の変位を \(Y\) としますと、
赤波の式: \(y_1 = \sinω_1t\)
青波の式: \(y_2 = \sinω_2t\)
となりますが、\(ω = 2πf\) の関係がありますので(『単振動』項参照)、
赤波の式: \(y_1 = \sin(2πf_1t)\)
青波の式: \(y_2 = \sin(2πf_2t)\)
となり、この2つを足し合わせると下図の緑波の式となります。
\(Y = \sin(2πf_1t) + \sin(2πf_2t)\)
ここに、三角関数の和積の公式、
\(\sin x + \sin y = 2\sin{\large\frac{x+y}{2}}\cos{\large\frac{x-y}{2}}\)
を当てはめますと、
\(Y = 2\sin{\large\frac{2πf_1t+2πf_2t}{2}}\cos{\large\frac{2πf_1t-2πf_2t}{2}}\)
\(= 2\sin(2π{\large\frac{f_1 + f_2}{2}}t)\cos(2π{\large\frac{f_1 - f_2}{2}}t)\) ……①
となります。
人間が感じる大小の変化の振動数は2倍
一般的に \(X = \sin(at)\cos(bt)\) という式があった場合、この式は、
\({\color{#40d}x_1 = \sin(at)}\) と、
\({\color{#e60}x_2 = \cos(bt)}\) とを
掛け合わせたものであるのですが、
人間が感じる音の大小(=緑波の巨視的大小)の周期はオレンジ波 \({\color{#e60}\cos(bt)}\) の半分(振動数は倍)です。(ちょっとまぎらわしい話ですが、緑波の巨視的大小の周期とオレンジ波の周期は一致していません。)
周期が一致する波というのは以下のような波です。振動数が倍の波です。
このことからしますと、①式
\(Y = 2\sin(2π{\large\frac{f_1 + f_2}{2}}t)\cos(2π{\large\frac{f_1 - f_2}{2}}t\))
において人間が感じるうなりの振動数 は \({\large\frac{f_1 - f_2}{2}}\) の2倍であり、つまり \(f\) は、
\(f = | f_1 - f_2 |\)
となります。
例
\(f_1\)=40Hz と \(f_2\)=44Hz の音を発すると、42Hz の音が \(f\)=4Hz の振動数で大きくなったり小さくなったりします。このときの式と波形を示します。
\(y_1 = \sin(2π·40·t)\)
\(y_2 = \sin(2π·44·t)\)
\(y_1 = \sin(2π·40·t)\) 、\(y_2 = \sin(2π·44·t)\)
\(Y = 2\sin(2π{\large\frac{40+44}{2}}t)\cos(2π{\large\frac{40-44}{2}}t) = 2\sin(2π·42·t)\cos(2π·2·t)\)
\(\sin(2π·42·t)\) …… \(f_1\) と \(f_2\) の中間の音
\(\cos(2π·2·t)\) …… この波の倍の振動数がうなりの振動数
\(Y = 2\sin(2π·42·t)\cos(2π·2·t)\) 、\(\cos(2π·4·t)\) …… 1.0秒間に4回振動している