qG87D

図2のように、電気容量が 2CC のコンデンサー、起電力 V の電池、可変抵抗器、およびスイッチS1、S2からなる回路がある。点aと点bの間にある可変抵抗器を使って、接点cと点bの間の抵抗値 r を 0 から R まで変えることができる。最初、スイッチS1及びS2は開いており、二つのコンデンサーには電荷はないものとする。ただし、二つのコンデンサーをつないだ点をdとし、点eの電位は 0 とする。

図 2

(問4)スィッチS1のみを閉じて十分時間が経過した後、点dの電位はいくらになるか。V を使って表わせ。

(問5)次に、スイッチS2も閉じて、可変抵抗器の接点cをゆっくり動かし、接点cと点bの間の抵抗値 r を 0 から R まで変化させた。このとき、二つのコンデンサーに蓄えられた静電エネルギーの総和 U はどのように変化するか。最も適当なものを、次の①〜⑥のうちから一つ選べ。

      

#センター03本試

(問4)
S1のみ閉じたということなので実質的な回路は、

このようになり、

抵抗に V 、二つのコンデンサーに V の電圧が掛かります。

求める点dの電位を Vd と置くと、上のコンデンサーに掛かる電圧は V - Vd です。

また、上のコンデンサーに蓄えられた電気量を Q1 とすると、下のコンデンサーにも Q1 の電気量が蓄えられています 直列につながれたコンデンサーにおいては

上のコンデンサーの正極板に正電荷が8個あれば、


その負極板には負電荷が8個あり、


下のコンデンサーの正極板には正電荷が8個あり、


その負極板には負電荷が8個あります。


個数が一致しないことはありません。

よって、Q = CV の関係より、

 上のコンデンサー: Q1 = 2C × (V - Vd)

 下のコンデンサー: Q1 = C × Vd

であるので、

    2C(V - Vd) = CVd

 ∴  2V - 2Vd = Vd

 ∴  2V = 3Vd

 ∴  Vd = \(\large{\frac{2}{3}}\)V

と求まります。

 

下のコンデンサーに掛かる電圧が \(\large{\frac{2}{3}}\)V なので、上のコンデンサーに掛かる電圧は V - \(\large{\frac{2}{3}}\)V = \(\large{\frac{1}{3}}\)V です。直列の二つのコンデンサーに掛かるそれぞれの電圧は、電気容量の逆比ということです。

 

(別解)
まず、合成容量を求めてしまいます。

合成容量C1 としますと、

    \(\large{\frac{1}{C_1}}\) = \(\large{\frac{1}{2C}}\) + \(\large{\frac{1}{C}}\)

 ∴  \(\large{\frac{1}{C_1}}\) = \(\large{\frac{1+2}{2C}}\)

 ∴  \(\large{\frac{1}{C_1}}\) = \(\large{\frac{3}{2C}}\)

 ∴  C1 = \(\large{\frac{2}{3}}\)C

ここに V の電圧が掛かるのだから、合成容量に蓄えられた電気量を Q1 とすると、Q = CV の関係より、

    Q1 = \(\large{\frac{2}{3}}\)C × V

この電気量は、下のコンデンサーの電気量でもあるので、Q = CV の関係より、

    Vd = \(\large{\frac{Q_1}{C}}\) = \(\large{\frac{\frac{2}{3}CV}{C}}\) = \(\large{\frac{2}{3}}\)V

と求まります。

(問5)次に、スイッチS2も閉じて、可変抵抗器の接点cをゆっくり動かし、接点cと点bの間の抵抗値 r を 0 から R まで変化させた。このとき、二つのコンデンサーに蓄えられた静電エネルギーの総和 U はどのように変化するか。最も適当なものを、次の①〜⑥のうちから一つ選べ。

      

(まず、Vd を求めます)
スイッチS1とスイッチS2を閉じた場合、左図の VrVd が同じで、VR-rV - Vd が同じです。

そして、ab間を流れる電流を I1 としますと、オームの法則より、

  I1 = \(\large{\frac{V}{R}}\)

です。

よって、

    Vr = rI1 = r\(\large{\frac{V}{R}}\) = \(\large{\frac{r}{R}}\)V

であり、これが Vd です。

(慣れてる人は暗算で導き出せると思います。直列接続では、電圧の比は抵抗の比です。)

 

(次に、静電エネルギーを求めます)
上のコンデンサーの静電エネルギー:\(\large{\frac{1}{2}}\)⋅2C⋅(V - Vd)2 = C⋅(V - \(\large{\frac{r}{R}}\)V)2 = C(\(\large{\frac{R-r}{R}}\)V)2

下のコンデンサーの静電エネルギー:\(\large{\frac{1}{2}}\)CVd2 = \(\large{\frac{1}{2}}\)C(\(\large{\frac{r}{R}}\)V)2

総和 U

    U = C(\(\large{\frac{R-r}{R}}\)V)2 + \(\large{\frac{1}{2}}\)C(\(\large{\frac{r}{R}}\)V)2

です。

r = 0 のとき、

   U = C(\(\large{\frac{R-0}{R}}\)V)2 + \(\large{\frac{1}{2}}\)C(\(\large{\frac{0}{R}}\)V)2 = CV2

r = R のとき、

   U = C(\(\large{\frac{R-R}{R}}\)V)2 + \(\large{\frac{1}{2}}\)C(\(\large{\frac{R}{R}}\)V)2 = \(\large{\frac{1}{2}}\)CV2

このようになっているグラフは②か④か⑤です。

そして、r の2次関数の式になっていますので、グラフの曲線は放物線のはずです。

さらに、平方完成の形に変形しますと、

    U = C(\(\large{\frac{R-r}{R}}\)V)2 + \(\large{\frac{1}{2}}\)C(\(\large{\frac{r}{R}}\)V)2

     = C\(\Big\{\)(\(\large{\frac{R}{R}}\)V)2 - 2\(\large{\frac{r}{R}}\)V2 + (\(\large{\frac{r}{R}}\)V)2\(\Big\}\) + \(\large{\frac{1}{2}}\)C(\(\large{\frac{r}{R}}\)V)2

     = CV2 - 2C\(\large{\frac{r}{R}}\)V2 + C(\(\large{\frac{r}{R}}\)V)2 + \(\large{\frac{1}{2}}\)C(\(\large{\frac{r}{R}}\)V)2

     = CV2 - 2C\(\large{\frac{r}{R}}\)V2 + \(\large{\frac{3}{2}}\)C(\(\large{\frac{r}{R}}\)V)2

     = \(\large{\frac{3}{2}}\)C(\(\large{\frac{r}{R}}\)V)2 - 2C\(\large{\frac{r}{R}}\)V2 + CV2

     = \(\large{\frac{3CV^2}{2R^2}}\)r2 - 2C\(\large{\frac{V^2}{R}}\)r + CV2

     = \(\large{\frac{3CV^2}{2R^2}}\)\(\Big\{\)r2 - 2\(\large{\frac{2R}{3}}\)r\(\Big\}\) + CV2

     = \(\large{\frac{3CV^2}{2R^2}}\)\(\Big\{\)r2 - 2\(\large{\frac{2R}{3}}\)r + (\(\large{\frac{2R}{3}}\))2 - (\(\large{\frac{2R}{3}}\))2\(\Big\}\) + CV2

     = \(\large{\frac{3CV^2}{2R^2}}\)\(\Big\{\)r2 - 2\(\large{\frac{2R}{3}}\)r + (\(\large{\frac{2R}{3}}\))2\(\Big\}\) - \(\large{\frac{2}{3}}\)CV2 + CV2

     = \(\large{\frac{3CV^2}{2R^2}}\)\(\Big\{\)r - \(\large{\frac{2R}{3}}\)\(\Big\}\)2 + \(\large{\frac{1}{3}}\)CV2

となり、\(\large{\frac{3CV^2}{2R^2}}\) > 0 なので、グラフの曲線は下に凸であり、また、r = \(\large{\frac{2R}{3}}\) のときに最小値 U = \(\large{\frac{1}{3}}\)CV2 をとると分かります。

このようなグラフはです。

(別に平方完成の形にしなくても r2 の係数の正負を確かめれば上に凸の曲線か下に凸の曲線かが分かるので、選択肢の中のどれであるかは特定できます。)

 

(余談)
r = 0 のときというのは Vr = 0 、Vd = 0 であり、静電エネルギーの総和というのは上のコンデンサーに蓄えられた静電エネルギーのことです。下のコンデンサーには電圧が掛からず電荷も溜まりません。総和としては最大です。

逆に、r = R のときというのは、上のコンデンサーには電荷が溜まらず、静電エネルギーの総和というのは下のコンデンサーに蓄えられた静電エネルギーのことです。

総和が最小となる r = \(\large{\frac{2R}{3}}\) のときというのは、Vd = \(\large{\frac{2 }{3}}\)V であり、上の問4の場合のことであり、スイッチS2 を開いているのと同じ状態ということです。二つのコンデンサーが充電される過程でdc間に電流が流れないということです。