水平なあらい面上で物体をすべらせ、すべり始めてから停止するまでの距離が初速度または動摩擦係数によってどのように変わるかを考える。動摩擦係数が同じ場合、初速度が2倍になると、停止するまでの距離は何倍になるか。一方、初速度が同じ場合、動摩擦係数が\(\large{\frac{1}{2}}\)倍になると、停止するまでの距離は何倍になるか。
#センター09本試
初速度が大きければ停止するまでの距離も大きくなるだろうし、動摩擦係数が小さくても停止するまでの距離が大きくなりそうなのは想像つくと思います。
(この運動の加速度を求める)
物体の質量を m 、加速度の大きさを a 、初速度の大きさを v0 、動摩擦係数を μ' 、停止するまでの距離を S 、重力加速度の大きさを g と置きます。
物体にはたらいている力は重力以外では摩擦力だけです。始めに手で押して初速を与えたかもしれませんが、問題の意味は、初速を与えた後は手を離した、ということです。そしてその後、動摩擦力が進行を妨害する方向にはたらいて物体が止まったということです。このときの動摩擦力は一定であるというのが特徴です。スピードが変わったとしても動摩擦力の大きさは変化しません。
この動摩擦力の大きさは(進行方向を正としますと)
(F' = - μ'N) = - μ'mg
この物体の運動方程式を立てますと、
ma = - μ'mg
つまり、加速度は
a = - μ'g
(初速度と停止距離の関係を求める)
この加速度は一定ですから、等加速度直線運動の時間を含まない式(v2 - v02 = 2ax)を立てますと、
02 - v02 = 2aS
⇔ 02 - v02 = - 2μ'gS
∴ - v02 = - 2μ'gS
∴ v02 = 2μ'gS
(この式を読み解きますと)
動摩擦係数 μ' が同じ場合、初速度 v0 が2倍になると、停止するまでの距離 S は 4倍 、
初速度 v0 が同じ場合、動摩擦係数 μ' が\(\large{\frac{1}{2}}\)倍になると、停止するまでの距離 S は 2倍 、
になります。
(別解)
v02 = 2μ'gS の式は、エネルギーの原理の式を立てることによっても求められます。
02 - \(\large{\frac{1}{2}}\)mv02 = - μ'mgS
∴ v02 = 2μ'gS
(余談1)
このことによりわかるのは、
等加速度直線運動の時間を含まない式 v2 - v02 = 2ax と、
エネルギーの原理の式 \(\large{\frac{1}{2}}\)mv2 - \(\large{\frac{1}{2}}\)mv02 = W は、近いものである、
ということです。
(余談2)
スピードが2倍になると制動距離が4倍になるという話は、自動車の交通安全講習などでよく聞かさます。