自然の長さ l 、ばね定数 k の二つの軽いばねを、質量 m の小球の上下に取り付けた。下側のばねの端を床に取り付け、上側のばねの端を手で引き上げた。重力加速度の大きさを g とする。
(問3)図2のように、ばねの長さの合計を 2l にして小球を静止させた。小球の床からの高さ h を式で表わせ。ただし、二つのばねと小球は同一鉛直線上にあるものとする。
(問4)次に、図3のように、床から測った小球の高さが l になるまで、ばねの上端をゆっくり引き上げた。このときのばねの長さの合計 y と、高さ h から l まで小球を引き上げる間に手がした仕事 W を表す式の組合せとして正しいものを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。
y | W | |
---|---|---|
① | \(\large{\frac{mg}{2k}}\) + 2l | mg(l - h) + \(\large{\frac{k}{2}}\)(y - l)2 - k(2l - h)2 |
② | \(\large{\frac{mg}{2k}}\) + 2l | mg(l - h) + k(y - 2l)2 - k(l - h)2 |
③ | \(\large{\frac{mg}{2k}}\) + 2l | mg(l - h) + \(\large{\frac{k}{2}}\)(y - 2l)2 - k(l - h)2 |
④ | \(\large{\frac{mg}{k}}\) + 2l | mg(l - h) + \(\large{\frac{k}{2}}\)(y - l)2 - k(2l - h)2 |
⑤ | \(\large{\frac{mg}{k}}\) + 2l | mg(l - h) + k(y - 2l)2 - k(l - h)2 |
⑥ | \(\large{\frac{mg}{k}}\) + 2l | mg(l - h) + \(\large{\frac{k}{2}}\)(y - 2l)2 - k(l - h)2 |
#センター15本試物理Ⅰ #センター15本試物理
(問3)
l と h の差を x と置きますと、この x というのは、上側のばねの伸び幅のことであり、かつ、下側のばねの縮み幅ということになります。
フックの法則より、上側のばねは kx の力で上向きに引っ張り上げていて、下側のばねも kx の力で上向きに押し上げています。
そして、小球には下向きに mg の大きさの重力が掛かっています。
つり合いの式を立てますと、
kx + kx = mg
∴ x = \(\large{\frac{mg}{2k}}\)
よって、
h = l - x = l - \(\large{\frac{mg}{2k}}\)
(問4)
(y について)
下側のばねは自然長であるので力を発揮していません。小球を上に上げようとしているのは上側のばねだけであり、ばねの伸びを x' とすると x' = y - 2l であり、ばねの力と重力とのつり合いの式を立てますと、
kx' = mg
⇔ k(y - 2l) = mg
∴ (y - 2l) = \(\large{\frac{mg}{k}}\)
∴ y = \(\large{\frac{mg}{k}}\) + 2l
(W について)
手がした仕事というのは、重力による位置エネルギーや弾性エネルギーの増加分のことです。
(ⅰ) 位置エネルギーの増加分
小物体は h の高さから l の高さに引き上げられたから、重力による位置エネルギーの増加分は
mgl - mgh = mg(l - h)
(ⅱ) 上側のばねの弾性エネルギーの増加分
上側のばねの引き上げる前のばねの伸びは
(2l - h) - l = l - h
よって弾性エネルギーは
\(\large{\frac{1}{2}}\)k(l - h)2
上側のばねの引き上げた後のばねの伸びは
(y - l) - l = y - 2l
よって弾性エネルギーは
\(\large{\frac{1}{2}}\)k(y - 2l)2
弾性エネルギーの増加分は
\(\large{\frac{1}{2}}\)k(y - 2l)2 - \(\large{\frac{1}{2}}\)k(l - h)2
(ⅲ) 下側のばねの弾性エネルギーの増加分
下側のばねの引き上げる前のばねの伸びは
h - l
よって弾性エネルギーは
\(\large{\frac{1}{2}}\)k(h - l)2
下側のばねの引き上げた後のばねの伸びは
0
よって弾性エネルギーは
\(\large{\frac{1}{2}}\)k( 0 )2 = 0
弾性エネルギーの増加分は
0 - \(\large{\frac{1}{2}}\)k(h - l)2 = - \(\large{\frac{1}{2}}\)k(h - l)2
(総計)
よって、手がした仕事は
W = (ⅰ) + (ⅱ) + (ⅲ)
= mg(l - h) + \(\large{\frac{1}{2}}\)k(y - 2l)2 - \(\large{\frac{1}{2}}\)k(l - h)2 - \(\large{\frac{1}{2}}\)k(h - l)2
= mg(l - h) + \(\large{\frac{1}{2}}\)k(y - 2l)2 - \(\large{\frac{1}{2}}\)k(l - h)2 - \(\large{\frac{1}{2}}\)k(l - h)2
= mg(l - h) + \(\large{\frac{1}{2}}\)k(y - 2l)2 - k(l - h)2
= mg(l - h) + \(\large{\frac{k}{2}}\)(y - 2l)2 - k(l - h)2
すなわち答えは ⑥ です。