図1のように、なめらかな水平面上にばねがおかれ、ばねの右端は壁に固定されている。ばねの左端に小物体をおいて、自然長からばねを長さ L だけ縮めてから、静かにはなした。その後、小物体は水平面から飛び出し、水平面の端から点Pまでのちようど半分の地点に落下した。以下の問1〜5に答えなさい。解答欄には必要に応じて導出の過程を示しなさい。なお、小物体の大きさと空気抵抗は無視できるものとする。また、文中に与えられた物理量の他に解答に必要な物理量があれば、それらを表す記号はすべて各自で定義し、解答欄に明示しなさい。
(問1)小物体が水平面から飛び出す瞬間の時刻を t = 0 としたとき、t = 0 と t = T での小物体の位置がそれぞれ黒丸で解答欄の図中に描かれている。t = 2T と t = 3T での小物体の位置を黒丸ではっきりとわかるように、それぞれ図中に描きなさい。
(問2)自然長からばねを長さ L だけ縮めてからはなしたとき、小物体がばねから離れる瞬間の速さを VL とする。小物体を点Pまで飛ばすためには、水平面から小物体が飛び出す瞬間の速さを、VL の何倍にする必要があるかを答えなさい。
(問3)小物体を点Pまで飛ばすためには、ばねを自然長からどれだけの長さ縮めてから、小物体をはなせばよいかを求めなさい。
(問4)次に、図2の斜線部分 を表面のあらい水平面に置き換えた。ばねを自然長から長さ x だけ縮めてから小物体をはなしたところ、小物体は水平面から飛び出していった。このとき、小物体はあらい水平面上で等加速度運動することを説明しなさい。また、小物体がばねから離れる瞬間の速さを Vx 、小物体が水平面から飛び出す瞬間の速さを Vx' としたとき、(Vx')2 - (Vx)2 はばねを縮める長さ x によらず一定であることを説明しなさい。
(問5)図3のように、自然長からばねを長さ L だけ縮めてからはなしたとき、小物体は水平面の端から点Pまでの \(\large{\frac{1}{4}}\) の地点に落下した。次に、ばねを自然長から長さ X だけ縮めてからはなしたところ、小物体はちようど点Pまで到達した。VL 、VL' を問4の設問で x を L として定義される速さ、VX 、VX' を問4の設間で x を X として定義される速さとする。このとき、VL' 、VX' 、VX をそれぞれ VL で表しなさい。また、\(\large{\frac{X}{L}}\) を求めなさい。
#神戸大17
(問1)
水平投射においては、水平方向は等速、鉛直方向は初速 0 の等加速度運動(時間の2乗に比例)をするから、左図のようになります。
(問2)
水平投射(x = v0t、y = \(\large{\frac{1}{2}}\)gt2)においては、高さが変わらなければ(y = \(\large{\frac{1}{2}}\)gt2 の y が不変)、落下し始めてから衝突するまでの時間は変わらないので(t 不変)、水平方向の距離(x = v0t)は初速(v0)に比例するので、その距離を2倍にするには初速を 2倍 にする必要があります。
(問3)
(VL を求めてみる)
小物体の質量を m 、ばね定数を k と置きますと、
L だけ縮めたときの力学的エネルギーは
(運動エネルギー)+(弾性エネルギー)
= ( 0 )+( \(\large{\frac{1}{2}}\)kL2 ) ……①
自然長になった瞬間(小物体がばねから離れる瞬間)の力学的エネルギーは
(運動エネルギー)+(弾性エネルギー)
= ( \(\large{\frac{1}{2}}\)mVL2 )+( 0 ) ……②
力学的エネルギー保存の法則により ① = ② であるから、
\(\large{\frac{1}{2}}\)kL2 = \(\large{\frac{1}{2}}\)mVL2
∴ VL2 = \(\large{\frac{k}{m}}\)L2
∴ VL = L\(\sqrt{\frac{k}{m}}\)
(点Pに届くには)
問2より VL を2倍にすれば点Pに届くので、そのためには L を2倍にすればよい。つまり、 2L の長さだけ縮めてからはなせばよい。
(問4)
小物体が運動する方向には動摩擦力のみがはたらき、動摩擦力の大きさは運動の速さに無関係であり、小物体に掛かる重力と動摩擦係数に比例するが、その2つが一定であるので、動摩擦力も一定であり、運動方程式の関係により加速度も一定となるので、小物体は等加速度運動を行う。
また、等加速度直線運動の公式 v2 - v02 = 2ax より、 (Vx')2 - (Vx)2 は加速度とあらい水平面の長さだけに比例するので、ばねを縮める長さ x によらず一定である。
(問5)
速さが VL のままであれば半分の地点まで飛んでいき、速さが VL' になってしまったがために \(\large{\frac{1}{4}}\) の地点までしか飛ばなかったわけですが、問2より、距離が \(\large{\frac{1}{2}}\) であれば飛び出す瞬間の速さも \(\large{\frac{1}{2}}\) であるので、
VL' = \(\large{\frac{1}{2}}\)VL
速さ VX' で飛び出したときは VL' のときの 4倍飛んでいるので、
VX' = 4VL' = 4×\(\large{\frac{1}{2}}\)VL = 2VL
また、等加速度直線運動の公式より、 (VX')2 - (VX)2 = 2as であり (VL')2 - (VL)2 = 2as であるので、
(VX')2 - (VX)2 = (VL')2 - (VL)2 上の結果を代入して
∴ (2VL)2 - (VX)2 = (\(\large{\frac{1}{2}}\)VL)2 - (VL)2
∴ - (VX)2 = - (2VL)2 + (\(\large{\frac{1}{2}}\)VL)2 - (VL)2
∴ - VX2 = - 4VL2 + \(\large{\frac{1}{4}}\)VL2 - VL2
∴ - VX2 = - 5VL2 + \(\large{\frac{1}{4}}\)VL2
∴ VX2 = 5VL2 - \(\large{\frac{1}{4}}\)VL2
∴ VX2 = \(\large{\frac{20-1}{4}}\)VL2
∴ VX = \(\large{\frac{\sqrt{19}}{2}}\)VL
そして、問3より、
\(\large{\frac{X}{L}}\) = \(\large{\frac{V_X}{V_L}}\)
であり、上の結果より、
\(\large{\frac{V_X}{V_L}}\) = \(\large{\frac{\sqrt{19}}{2}}\)
であるので、
\(\large{\frac{X}{L}}\) = \(\large{\frac{\sqrt{19}}{2}}\)