音のドップラー効果について考える。音源、観測者、反射板はすべて一直線上に位置しているものとし、空気中の音の速さは V とする。また、風は吹いていないものとする。
(問1)次の文章中の空欄ア・イに入れる語句と式の組合せとして最も適当なものを、下の①~⑨のうちから一つ選べ。
図1のように、静止している振動数 f1 の音源へ向かって、観測者が速さ v で移動している。このとき、観測者に聞こえる音の振動数はア、音源から観測者へ向かう音波の波長はイである。
ア | イ | |
---|---|---|
① | f1 よりも小さく | \(\large{\frac{V-v}{f_1}}\) |
② | f1 よりも小さく | \(\large{\frac{V}{f_1}}\) |
③ | f1 よりも小さく | \(\large{\frac{V^2}{(V+v)f_1}}\) |
④ | f1 と等しく | \(\large{\frac{V-v}{f_1}}\) |
⑤ | f1 と等しく | \(\large{\frac{V}{f_1}}\) |
⑥ | f1 と等しく | \(\large{\frac{V^2}{(V+v)f_1}}\) |
⑦ | f1 よりも大きく | \(\large{\frac{V-v}{f_1}}\) |
⑧ | f1 よりも大きく | \(\large{\frac{V}{f_1}}\) |
⑨ | f1 よりも大きく | \(\large{\frac{V^2}{(V+v)f_1}}\) |
(問2)図2のように、静止している観測者へ向かって、振動数 f2 の音源が速さ v で移動している。音源から観測者へ向かう音波の波長 λ を式で表わせ。
(問3)図3のように、静止している振動数 f1 の音源へ向かって、反射板を速さ v で動かした。音源の背後で静止している観測者は、反射板で反射した音を聞いた。その音の振動数は f3 であった。反射板の速さ v を式で表わせ。
#センター17本試物理
(問1)
ア
これは『ドップラー効果2』項の『観測者が動く場合』の観測者が音源に近づいていく場合であり、振動数\(\Big(\)f1' = \(\large{\frac{V+v_\rm{o}}{V}}\)f0\(\Big)\)は(本問の量記号で表すと)
\(\large{\frac{V+v}{V}}\)f1
であり、 f1 よりも大きく なります。
イ
これは音源が動いているような場合ではなく、
観測者が動いている場合であり、
波長(λ = \(\large{\frac{v}{f}}\))が伸びたり縮んだりすることは無く、
\(\large{\frac{V}{f_1}}\)
のままです。
答えは ⑧ です。
(問2)
これは『ドップラー効果2』項の『音源が動く場合』の音源の前方の場合であり、波長\(\Big(\)λ2 = \(\large{\frac{V-v_\rm{s}}{f_0}}\)\(\Big)\)は(本問の量記号で表すと)
λ = \(\large{\frac{V-v}{f_2}}\)
(問3)
入射波を(a)、反射波を(b)として分けて考えてみます。
反射板は、青波がぶつかってきた瞬間に青波を発射します。
(a)における反射板が受ける波について考えますと、これは『ドップラー効果2』項の『観測者が動く場合』の観測者が音源に近づいていく場合であり、振動数\(\Big(\)f1' = \(\large{\frac{V+v_\rm{o}}{V}}\)f0\(\Big)\)は(fa とし、本問の量記号で表すと)
fa = \(\large{\frac{V+v}{V}}\)f1
(問1のアと同じ)
(b)においては反射板は振動数 fa の音を発する音源と考えることができ、これは『ドップラー効果2』項の『音源が動く場合』の音源の前方の場合であり、振動数\(\Big(\)f2 = \(\large{\frac{V}{V-v_\rm{s}}}\)f0\(\Big)\)は(本問の量記号で表すと)
f3 = \(\large{\frac{V}{V-v}}\)fa 上式を代入して
= \(\large{\frac{V}{V-v}}\)⋅\(\large{\frac{V+v}{V}}\)f1
= \(\large{\frac{V+v}{V-v}}\)f1 ……➊
∴ (V - v)f3 = (V + v)f1
∴ Vf3 - vf3 = Vf1 + vf1
∴ Vf3 - Vf1 = vf3 + vf1
∴ (f3 - f1)V = (f3 + f1)v
∴ (f3 + f1)v = (f3 - f1)V
∴ v = \(\large{\frac{f_3-f_1}{f_3+f_1}}\)V
(音速は一定)
空気中を進む音波の速さは一定です。気温が変化したり風が吹いたりしない限り一定です。動く反射板によって加速されるようなこともありません。右に進むときも V で、左に進むときも V です。
(壁が迫って来るとき)
上の➊式
f3 = \(\large{\frac{V+v}{V-v}}\)f1
を見ますと、分子に v が足されていて分母に v が引かれていて、ダブルで振動数が大きくなっています。
乱暴な暗記の仕方をしますと、「音源、観測者が静止していて壁が迫ってくるパターンのときは、振動数はダブルで大きくなる」となります。壁が逃げていくときは逆です。ドップラー効果の問題は他にもバリエーションがありますが、このことを頭に入れておくと便利です。