図1のような媒質1と媒質2からなる空間で、媒質1内で発生した平面波が両媒質の境界面Sに対して垂直方向に伝搬し、媒質2に入射する。Sから距離 d (d > 0) の位置に、紙面に垂直で断面が円形の無限に長い反射体Rがあり、波は反射する。この反射では波の位相は変化しないものとし、またRで反射した波がSに達した後にSから発生する反射波の影響は考えなくてよい。媒質1および媒質2の中では、平面波の波長はそれぞれ L および l である。以下の間1〜5に答えなさい。解答欄には必要に応じて導出の過程を示しなさい。
(問1)媒質1に対する媒質2の屈折率を求めなさい。
(問2)反射体Rで反射した波の媒質2内での波面の概略図を解答欄に描きなさい。反射体の断面の直径は、l に比べて十分小さいものとする。
反射前の平面波と反射体Rで反射した波は干渉し、境界面S上で強め合う点が観測された。この位置を表すために、図1のようにRが紙面と交わる点からSに下ろした垂線とSとの交点を原点Oとし、S上に反射体Rに垂直な座標 x を定義する。
(問3)2つの波の経路差が波長の n倍 (n は自然数) となるとき、2つの波は干渉して強め合う。境界面S上で強め合う干渉位置 x が満たすべき条件式を求めなさい。
(問4)x と d をそれぞれ横軸と縦軸にとり、 0 < d ≦ \(\large{\frac{5}{2}}\)l と - 3l ≦ x ≦ 3l の範囲で、間3で求めた条件式のグラフの概形を描きなさい。n は 1〜5 の範囲とする。
(問5)d = \(\large{\frac{15}{8}}\)l の場合を考える。間4のグラフを参考にして、強め合う干渉点の中で、 - 3l ≦ x ≦ 3l の範囲にある位置 x の値を全て求めなさい。
#神戸大17
(問1)
屈折の法則(スネルの法則)より、
\(\Large{\frac{\sin i}{\sin r}}\) = \(\Large{\frac{v_1}{v_2}}\) = \(\large{\frac{\lambda_1}{\lambda_2}}\) = n12
\(\large{\frac{L}{l}}\)
(これは分母と分子をとても間違えやすいです)
(問2)
反射体の直径が l に比べて大きいときは反射波の様子は左図のようになります。
直径が l に比べて小さいときは左図のようになります。
直径が l に比べて十分小さいときは左図のようになります。同心円状です。
赤色部分の長さは l というわけではありません。
任意です。
(良問)
Rを示す黒丸はもうちょっと小さい点であると考えた方がイメージしやすいかもしれません。
それにしてもこれはホイヘンスの原理をちゃんと理解しているかを問う良い問題です。
波面がハート型になると考えたり、
隙間が空くと考えたりしてはダメです。ホイヘンスの原理を理解してないことになります。
(問3)
境界面Sをスタートラインと呼びますと、スタートラインの原点Oから出発した波がRで反射してまた戻ってきて、スタートラインにいる波と干渉するわけですが、
反射波がスタートラインまで戻ってくるまでの経路の長さは
d + \(\sqrt{x^2+d^2}\)
であり、
スタートラインにいる平面波の経路の長さは 0 であるので、
両者の経路差は
d + \(\sqrt{x^2+d^2}\)
であり、この差が波長 l の n倍であれば強め合うので、
d + \(\sqrt{x^2+d^2}\) = nl
(実際の様子)
(問4)
x と d をそれぞれ横軸と縦軸にとり、
0 < d ≦ \(\large{\frac{5}{2}}\)l と - 3l ≦ x ≦ 3l の範囲で、
間3で求めた条件式
d + \(\sqrt{x^2+d^2}\) = nl
のグラフを描けということなので、
上式を変形して、
\(\sqrt{x^2+d^2}\) = nl - d
∴ x2 + d2 = (nl - d)2
∴ x2 + d2 = (nl)2 - 2dnl + d2
∴ x2 = (nl)2 - 2dnl
∴ 2dnl = - x2 + (nl)2
∴ d = - \(\large{\frac{1}{2nl}}\)x2 + \(\large{\frac{nl}{2}}\) ……①
この関数の曲線は上に凸の放物線になりますが、具体的に n の値を代入してみますと、
n = 1 のとき、
d = - \(\large{\frac{1}{2l}}\)x2 + \(\large{\frac{1}{2}}\)l
x = 0 のとき d = \(\large{\frac{1}{2}}\)l 、d = 0 のとき x = l
n = 2 のとき、
d = - \(\large{\frac{1}{4l}}\)x2 + l
x = 0 のとき d = l 、d = 0 のとき x = 2l
n = 3 のとき、
d = - \(\large{\frac{1}{6l}}\)x2 + \(\large{\frac{3}{2}}\)l
x = 0 のとき d = \(\large{\frac{3}{2}}\)l 、d = 0 のとき x = 3l
n = 4 のとき、
d = - \(\large{\frac{1}{8l}}\)x2 + 2l ……②
x = 0 のとき d = 2l 、d = 0 のとき x = 4l
n = 5 のとき、
d = - \(\large{\frac{1}{10l}}\)x2 + \(\large{\frac{5}{2}}\)l ……③
x = 0 のとき d = \(\large{\frac{5}{2}}\)l 、d = 0 のとき x = 5l
よってグラフの概形は以下のようになります。
(図1でいいますと)
d ≒ 0 のときは左図のような感じで、
d = l のときは左図のような感じです。
(問5)
問4のグラフに d = \(\large{\frac{15}{8}}\)l の線を描き込むと左図のようになりますので、強め合う干渉点が存在するのは n = 4, 5 の場合のみです。
いちおう n = 6 の場合も考えてみますと、問4の①式は
d = - \(\large{\frac{1}{12l}}\)x2 + 3l
x = 0 のとき d = 3l 、d = 0 のとき x = 6l
x = 3l のとき d = \(\large{\frac{9}{4}}\)l
よって、赤線とは交差しません。
というわけで、n = 4, 5 の放物線が赤線と交わるときの x の値を求めると、
②式と d = \(\large{\frac{15}{8}}\)l より、
\(\large{\frac{15}{8}}\)l = - \(\large{\frac{1}{8l}}\)x2 + 2l
∴ 15l2 = - x2 + 16l2
∴ x2 = l2
∴ x = ± l
③式と d = \(\large{\frac{15}{8}}\)l より、
\(\large{\frac{15}{8}}\)l = - \(\large{\frac{1}{10l}}\)x2 + \(\large{\frac{5}{2}}\)l
∴ \(\large{\frac{15}{8}}\)l×40l = - \(\large{\frac{1}{10l}}\)x2×40l + \(\large{\frac{5}{2}}\)l×40l
∴ 75l2 = - 4x2 + 100l2
∴ 4x2 = 25l2
∴ x = ± \(\large{\frac{5}{2}}\)l
よって、
x = ± l, ± \(\large{\frac{5}{2}}\)l
(この値は)
d-xグラフでいうと左図のような点であり、
図1でいうと左図のような点です。