電位差計

電位差計

電流が流れないもう一つのパターン

ホイートストンブリッジ』項で、導線でつながれているのに電流が流れない電気回路があることを紹介しました。それは電位がたまたま同じであるために電流が流れないというものでしたが、もう一つ、導線でつながれているのに電流が流れない、というパターンがあります。

電流と逆向きの起電力』で、電流の向きと起電力の向きが逆向きの場合があると説明しましたが、このとき電流の圧力(電圧のこと)の大きさと起電力(これも電圧です)の大きさがちょうど同じとき、電流の流れが静止します。

電流と逆向きの起電力』においては「回転翼は左に回ろうとするが、上から降りてくる電荷の勢いに負けて、結局右に回転してしまう」と説明しましたが、このとき、上から降りてくる電荷の勢いと、電荷を上に持ち上げようとする起電力の力がちょうど同じになると、回転翼は静止し、電荷も静止します。(回転翼というのはあくまでもたとえ話です)。起電力を発揮してはいるのですが、電荷の勢いとつり合って電流が流れない状態なのです。


電位差計

この現象を利用した装置が電位差計です。

Ex は未知の起電力、Es は既知の起電力電位差計に用いる既知の起電力としては標準電池(standard cell)という物を用います。年月が経っても劣化の少ない特別な電池です。
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検流計、AC間は一様の抵抗線、Eは大きめの起電力です。スイッチによって Ex か Es のどちらかに接続されます。どちらに接続されたかに関係なく I [A] の電流が流れています。

Ex の起電力の大きさを Ex [V] 、Es の起電力の大きさを Es [V] とします。E と E の使い分け方法はご存知でしょうか。文字を立体で書いたときは装置や位置の目印で、文字を斜体で書いたときは変数、量を表します。
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スイッチをEs側に入れ、検流計の値が 0 になるようにB点をスライドさせます。このときのAB間の抵抗を Rs [Ω] 、AB間の長さを ls [m] とします。このとき起電力 Es は電位差を作り出してはいるが電流は流れていない、という上で示したような状態です。(このとき E の起電力が Es より小さいと検流計が 0 になりません。 Es に電流が流れてしまいます。)

同様に、スイッチをEx側に入れ、検流計が 0 になったときのAB間の抵抗を Rx [Ω] 、長さを lx [m] とします。

スイッチをEs側に入れたとき、Es と AB は並列ですから電位差が同じで、
     Es = RsI  (オームの法則
  ∴ \(\large{\frac{E_s}{R_s}}\)= I

スイッチをEx側に入れたとき、Ex と AB は並列ですから電位差が同じで、
     Ex = RxI
  ∴ \(\large{\frac{E_x}{R_x}}\)= I

よって、
    \(\large{\frac{E_x}{R_x}}\) = \(\large{\frac{E_s}{R_s}}\)

  ∴ Ex = \(\large{\frac{R_x}{R_s}}\)Es

メートルブリッジ』で説明したように \(\large{\frac{R_x}{R_s}}\) = \(\large{\frac{l_x}{l_s}}\) ですから、

    Ex = \(\large{\frac{l_x}{l_s}}\)Es

となります。

たとえば、Es が 1.0V で \(\large{\frac{l_x}{l_s}}\) が 1.2 であったとすれば、未知の起電力は 1.2V と分かります。

このことの何が良いかといいますと、未知の起電力に電流を流さず電圧を測定したことです。『電圧計の内部抵抗』で電圧計に電流が流れてしまうと誤差が生じるという電圧計のジレンマ(≒電流計のジレンマ)について説明しましたが、この電位差計という装置を使って電圧を測定すると、その電圧計のジレンマを回避できます。さらに、起電力が電池であった場合、電池の内部抵抗に電流が流れないので電池の性能低下が起こらず、電池の端子電圧でなく起電力の方を測定できます。

ホイートストンブリッジと電位差計

ホイートストンブリッジ』は、回路の真ん中のブリッジ部分に電流が流れないときに回路の4辺の抵抗の大きさに一定の法則性があることから、未知の抵抗の大きさを測定するものでした。このとき電流が流れないのは、電位の高さが等しいからでした。

本項で説明した電位差計は、起電力を発揮しながらも電流を流さない方法を用いて、未知の電圧の大きさを測定するものです。内部抵抗の大きい電池(=起電力と端子電圧の差が大きい電池)の起電力を正確に測定することができます。このとき電流が流れないのは、電荷の勢いと起電力が等しいということからです。

電流が流れそうで流れないという状態を利用すると、電流計のジレンマ電圧計のジレンマ電池の内部抵抗の問題を乗り越えることができます。