qG873

図1のように、二つの滑車と伸び縮みしないひもを使い、質量 M の物体1と質量 m の物体2をつりさげた。はじめ、物体1、2は動かないように手で支えられている。静かに手を離したところ、物体1、2が運動し始めた。このときの物体1の加速度を α 、物体2の加速度を β とする。ただし、加速度は鉛直下向きを正とする。また、滑車とひもの質量は無視でき、滑車はなめらかに回転するものとする。

図 1

(問1)加速度 αβ の間に成り立つ関係として正しいものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。

β = 2α   ② β = α  ③ 2β = α

β = - 2α  ⑤ β = - α  ⑥ 2β = - α

(問2)物体1、2の運動方程式の組み合わせとして正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。ただし、ひもの張力を T とし、重力加速度の大きさを g とする。

① \(\begin{cases} Mα = Mg-2T \\ mβ = mg-T \end{cases}\)     ② \(\begin{cases} Mα = mg-2T \\ mβ = Mg-T \end{cases}\)

③ \(\begin{cases} Mα = (M+m)g-T \\ mβ = (M+m)g-2T \end{cases}\)  ④ \(\begin{cases} Mα = (M+m)g-2T \\ mβ = (M+m)g-T \end{cases}\)

(問3)次の文中の空欄3に入れる式として正しいものを、下の①~⑤のうちから一つ選べ。

 物体1は、M > 3 のとき降下するが、M < 3 のときには上昇する。

① \(\large{\frac{m}{3}}\)   ② \(\large{\frac{m}{2}}\)  ③ m

④ 2m   ⑤ 3m

#センター06追試

まず、
この問題は、物体1が上昇するのか降下するのか分かりません。

確実に言えるのは、物体1が上昇するときには物体2は降下し、物体1が降下するときは物体2が上昇する、ということです。

そして、問題文により鉛直下向きが正と定められているので、αβ の正負は常に逆になります。

Mm は正の値しかとりませんが、αβ は正の値も負の値もとります。

次に、
物体1が l だけ動くときに、物体2は 2l 動きます。物体1が l 上昇すると、ひもは 2l 短くなり、その 2l 分だけ物体2が降下します。

この l は正の値しかとりません。

 

(問1)
物体1が時間 t の間に l だけ動いたとしますと、等加速度直線運動の変位の関係( x = v0t + \(\large{\frac{1}{2}}\)at2 )より、

 物体1 : - l = \(\large{\frac{1}{2}}\)αt2  ……➊

 物体2 : 2l = \(\large{\frac{1}{2}}\)βt2  ……➋

➊式の両辺を2倍して、➊式、➋式の辺々を足しますと、

    - 2 l + 2l = \(\large{\frac{2}{2}}\)αt2 + \(\large{\frac{1}{2}}\)βt2

 ∴  0 = \(\large{\frac{2}{2}}\)αt2 + \(\large{\frac{1}{2}}\)βt2

 ∴  0 = α + \(\large{\frac{1}{2}}\)β

 ∴  β = - 2α

となります。答えはです。

 

(余談)
➊式は

 物体1 : l = \(\large{\frac{1}{2}}\)αt2  ……➊'

と立てることもできます。そのときは➋式は

 物体2 : - 2l = \(\large{\frac{1}{2}}\)βt2  ……➋'

となります。どっちみち同じことです。

 

また、等加速度直線運動の速度の関係( v = at )より、

 物体1 : v1 = αt

 物体2 : v2 = βt = - 2αt = - 2v1

 (ただし v1v2 は正の値も負の値もとるものとする)

であり、つまり、

物体2は物体1と比べて、加速度の大きさも、速度の大きさも、変位の大きさも全て2倍、となっています。(向きは全て逆です)。この手の問題のパターンです。頭に入れておいてください。

(問2)物体1、2の運動方程式の組み合わせとして正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。ただし、ひもの張力を T とし、重力加速度の大きさを g とする。

① \(\begin{cases} Mα = Mg-2T \\ mβ = mg-T \end{cases}\)     ② \(\begin{cases} Mα = mg-2T \\ mβ = Mg-T \end{cases}\)

③ \(\begin{cases} Mα = (M+m)g-T \\ mβ = (M+m)g-2T \end{cases}\)  ④ \(\begin{cases} Mα = (M+m)g-2T \\ mβ = (M+m)g-T \end{cases}\)

各物体にはたらく力を描くと左図のようになります。張力 T はどの地点でも同じ大きさです。あと、正の値しかとりません。 張力を全て描けば下図のようになりますが、

今は、物体に掛かる力について考えています。

正負に気をつけながら運動方程式を立てますと、

 物体1 : = Mg - 2T  ……❸

 物体2 : = mg - T  ……❹

となります。答えは です。

(問3)次の文中の空欄  3  に入れる式として正しいものを、下の①~⑤のうちから一つ選べ。

 物体1は、M >  3  のとき降下するが、M <  3  のときには上昇する。

① \(\large{\frac{m}{3}}\)   ② \(\large{\frac{m}{2}}\)  ③ m

④ 2m   ⑤ 3m

物体1の加速度 α を求めます。

問1の結果 β = - 2α を❹式に代入しますと、

    - 2 = mg - T

これを2倍しますと、

    - 4 = 2mg - 2T

この式と❸式の辺々を引いて T を消去しますと、

    - (- 4) = Mg - 2T - (2mg - 2T)

 ∴  + 4 = Mg - 2mg

 ∴  α = \(\large{\frac{M-2m}{M+4m}}\)g

となります。右辺の分母は常に正です。分子は正かもしれませんし負かもしれません。

物体1が降下するときというのは α > 0 のときであり M - 2m > 0 のときです。つまり M > 2m のときです。

物体1が上昇するときというのは α < 0 のときであり M - 2m < 0 のときです。つまり M < 2m のときです。

答えは です。

 

(余談)
Mm の倍より重ければ物体1は降下し、倍より軽ければ上昇します。

Mm のちょうど倍のときは、α = 0 、β = 0 であり、これはつまり、力がつり合って全てが静止するということです。

この問題の装置はテコの原理を発揮しているといえます。