qHBRC

図2のように、質量 m の小物体をのせた質量 M の台を、なめらかで水平な床の上で等速直線運動させる。台が運動する直線上には、一端が壁に固定されたばね定数 k の軽いばねがあり、台が衝突すると縮んで、台を減速させるようになっている。台の上面は水平であり、台と小物体の間の静止摩擦係数を μ 、重力加速度の大きさを g とする。

図 2

(問3)台を速さ v でばねに衝突させた。小物体は台の上で滑ることなく、ばねが自然の長さから d1 だけ縮んだところで、台の速度が 0 になった。d1 を式で表わせ。

(問4)次の文章中の空欄に入る式を示せ。

 十分に大きい速さ V で台をばねに衝突させると、ばねの縮み dd2 を超えたところで小物体が台の上で滑りはじめた。d < d2 では、台の加速度の大きさはと書ける。d2 は、小物体にはたらく最大摩擦力と慣性力がつりあう条件から、d2 =と求められる。

#センター16本試物理

(問3)
衝突前の力学的エネルギー

  (運動エネルギー)+(弾性エネルギー)= \(\large{\frac{1}{2}}\)(M + m)v2 + 0

d1 だけ縮んだときの力学的エネルギーは

  (運動エネルギー)+(弾性エネルギー)= 0 + \(\large{\frac{1}{2}}\)kd12

力学的エネルギー保存の法則より、

    \(\large{\frac{1}{2}}\)(M + m)v2 + 0 = 0 + \(\large{\frac{1}{2}}\)kd12

 ∴  (M + m)v2 = kd12

 ∴  d12 = \(\large{\frac{M+m}{k}}\)v2

 ∴   d1 = \(\sqrt{\frac{M+m}{k}}\)v

 

 

(問4)

d < d2 のときは台と小物体は一体であると考えることができ、質量 (M + m) の物体が弾性力 kd を受けて減速する運動であるとみなすことができるので、その加速度の大きさを a と置くと、

    (M + m)a = kd

という運動方程式が立てられます。つまり、加速度の大きさは

    a = \(\large{\frac{kd}{M+m}}\)

 


台がばねに衝突すると弾性力を受けて減速するわけですが、

上に載っている小物体は慣性で右へ進もうとします。つまり慣性力を受けるわけです。

ばねの弾性力というのは縮めば縮むほど大きくなるものです。つまり、で導き出した加速度 a = \(\large{\frac{kd}{M+m}}\) というのは縮めば縮むほど大きくなります。(縮めば縮むほど急激に減速するということです。これが摩擦力による減速との大きな違いです。摩擦力による減速では加速度は一定です。)

台が \(\large{\frac{kd}{M+m}}\) の加速度で減速するとき、小物体の受ける慣性力m\(\large{\frac{kd}{M+m}}\) です。

一方、台と小物体との間の静止摩擦係数が μ であるので、台と小物体との間の最大静止摩擦力μmg で、

ばねが d2 だけ縮んだ瞬間というのは、慣性力が m\(\large{\frac{kd_2}{M+m}}\) で、これが最大静止摩擦力と同じ大きさになっているという状態です。(これ以上縮むと慣性力の方が大きくなり小物体は滑り始めます。)

つまり、

    m\(\large{\frac{kd_2}{M+m}}\) = μmg

 ∴  \(\large{\frac{kd_2}{M+m}}\) = μg

 ∴  d2 = \(\large{\frac{M+m}{k}}\)μg

 

(慣性力を感じるのは台と一緒に動いている観測者です。m\(\large{\frac{kd_2}{M+m}}\) = μmg という式は小物体が静止していることを表すつり合いの式ですが、小物体が静止しているように感じるのは台と一緒に動いている観測者です。台と一緒に動いている観測者から見た世界を非慣性系といいます。)