素粒子

素粒子

素粒子とは

物質を構成する最小単位のことを素粒子といいます。素はおおもとという意味です。万物は原子からできていて、原子は陽子と中性子と電子からできていて、もともとはこれらを素粒子と呼んでいましたが、陽子や中性子はクォークなるものから構成されていることがわかり、今度はクォークなどを素粒子と呼ぶようになりました。現在、陽子と中性子のことを素粒子と呼んでいいのか微妙なところではありますが、少なくとも原子や原子核のことは素粒子とは呼びません。それより小さい、基本的で、おおもと感のある粒子を素粒子と呼びます。

本項では素粒子の概要をおおざっぱに説明します。実際の詳しい内容については大学に行って学んでください。

もっとも基本的な粒子

素粒子の種類は数百あるといわれていますが、その中でももっとも基本的な粒子と思われているのは以下のようなものです。 まだ他にもあります。
ヒッグス粒子は最近その存在が確認されました。
グラビトン(重力子)というものも存在が予想されてますが、まだ観測されてません。
下で説明しますが、それぞれの粒子にはそれと対をなす反粒子なるものがあります。

すべて覚えるべきかどうかについてはなんともいえません。素粒子分野は大学入試ではあまり出題されませんし、高校の定期テストで粒子の名前について出題されるかどうかは微妙なところです。

アップクォーク チャームクォーク トップクォーク グルーオン ヒッグス粒子
ダウンクォーク ストレンジクォーク ボトムクォーク 光子
電子 ミュー粒子 タウ粒子 ウィークボソン
電子ニュートリノ ミューニュートリノ タウニュートリノ

クォーク

陽子、中性子はクォークという粒子から構成されています。クォークは6種類あります 反粒子を含めると倍の12種類です。(以下同様) 。第一世代、第二世代、第三世代というものにわけられ、また電荷について \(+{\large\frac{2}{3}}e\) のものと \(-{\large\frac{1}{3}}e\) のものがあります 電気素量 \(e\) より小さい単位があるというわけではありません。クォークは理論上、単独では取り出すことができません。 \(+{\large\frac{2}{3}}e\) や \(-{\large\frac{1}{3}}e\) という電荷が単独で存在するわけではありません。

第一世代 第二世代 第三世代 電荷
アップクォーク u チャームクォーク c トップクォーク t \(+{\large\frac{2}{3}}e\)
ダウンクォーク d ストレンジクォーク s ボトムクォーク b \(-{\large\frac{1}{3}}e\)

レプトン

電子はレプトンという種類に分類されます。レプトンには6種類の素粒子があり、クォークと同じように世代にわかれています。電荷は \(-e\) のものと 0 のものがあります。

第一世代 第二世代 第三世代 電荷
電子 e ミュー粒子 \(μ\) タウ粒子 \(τ\) \(-e\)
電子ニュートリノ \(ν_e\) ミューニュートリノ \(ν_μ\) タウニュートリノ \(ν_τ\) 0

4つの力とゲージ粒子

物理学において力は4種類あり、それぞれに媒介する粒子があります。総称してゲージ粒子といいます。一方からゲージ粒子が放出され他方に吸収されることによって力がはたらくと考えられています。力の強い順に並べると以下のようになります。

力の種類 ゲージ粒子
強い力(強い相互作用) グルーオン
電磁気力(電磁相互作用) 光子(フォトン)
弱い力(弱い相互作用) ウィークボソン
重力(重力相互作用) グラビトン(重力子)

強い力はグルーオンを交換することによってクォークとクォークを強く結びつけています。レプトンにははたらきません。きわめて近距離でしかはたらかないため日常生活で感じることはありません。この力が(下で説明する)ハドロンの外まで漏れ出たものが核力です。グルーオンは全部で8種類あるといわれています。

電磁気力は今まで習ってきたクーロン力やローレンツ力や磁力のことです。これらの力はおおもとが同じです。これを媒介するのが光子です。意外と思われるかもしれませんが光子です。

弱い力はクォーク、レプトン両方にはたらきますが、これもきわめて近距離でしかはたらかないため日常生活で感じることはありません。β崩壊にかかわる力です。媒介するウィークボソンにはZボソンとWボソンがあります。

重力万有引力のことです。身近に感じられる力ではありますが、上の3つに比べるととても弱い力です。これを媒介するグラビトンはまだ観測されておらず、スタンダードな存在にはなっていません。4つの力の中で一番謎なのが重力です。

ヒッグス粒子

ヒッグス粒子は他の素粒子に質量を与える素粒子です。最近発見されました。

ハドロン

バリオン

陽子や中性子、つまり核子は、3つのクォークからできていて、バリオンとよばれます 陽子、中性子以外にΛ粒ラムダΣ粒シグマなどたくさんあります。

陽子の電荷は \(+e\) ですが、これは電荷 \(+{\large\frac{2}{3}}e\) のアップクォーク u 2つと電荷 \(-{\large\frac{1}{3}}e\) のダウンクォーク d 1つからできているからです。

中性子の電荷は 0 ですが、これは電荷 \(+{\large\frac{2}{3}}e\) のアップクォーク u 1つと電荷 \(-{\large\frac{1}{3}}e\) のダウンクォーク d 2つからできているからです。

陽子は uud、中性子は udd です。

メソン

核子同士はメソン中間子)という粒子を媒介して引きつけ合っています π中パイ間子K中ケー間子などがあります。 。2つのクォーク(クォークと反クォーク)からできています 核子(バリオン)はクォーク3つからできていてメソンはクォーク2つからできているので、結構大きいものを媒介しているということになります。 。クォークと反クォークの間でグルーオンを媒介することによって「強い力」がはたらいているのですが、この力が外にまで漏れ出て、その力で核子と核子を引きつけ合わせています。これが核力です。

ハドロン

バリオンとメソンを合わせてハドロンといいます。「強い力」によって複数のクォークがくっついた粒子ということです。

レプトンやゲージ粒子と合わせてまとめて表示すると以下のようになります。

\[ 素粒子 \left\{ \begin{array}{l} ハドロン \left\{ \begin{array}{l} バリオン\rm(核子など)・・(クォーク3つ)\\ メソン\rm(中間子)・・・・(クォーク2つ) \end{array} \right.\\ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・レプトン\\ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゲージ粒子\\ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヒッグス粒子 \end{array} \right. \]

「素粒子」という言葉はハドロン、バリオン、メソンを含める場合と最後の列のクォーク、レプトン、ゲージ粒子、ヒッグス粒子だけを指す場合とがあります。

上図をもうちょっと詳しくわかりやすく書いてみます。 \[ \left\{ \begin{array}{l} ハドロン \left\{ \begin{array}{l} バリオン{\scriptsize{\rm(陽子、中性子など)}}・・・・・・{\scriptsize{\rm(アップクォーク、ダウンクォークなど)}}\\ メソン{\scriptsize{\rm(π中間子、\tiny{K}中間子など)}}・・・・・{\scriptsize{\rm(アップクォーク、反ダウンクォークなど)}} \end{array} \right.\\ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・レプトン{\scriptsize{\rm(電子、ミュー粒子、ニュートリノなど)}}\\ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゲージ粒子{\scriptsize{\rm(グルーオン、光子、ウィークボソンなど)}}\\ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヒッグス粒子 \end{array} \right. \]

反粒子

それぞれの素粒子には、質量は同じですが電荷などの正負が反対になっている反粒子というものが存在します。たとえば、電子に対して陽電子 \(e^+\)、陽子に対して反陽子 \(\bar{p}\)、アップクォークに対して反アップクォーク \(\bar{u}\) というものがあります。性質が中性の粒子、たとえば光子などはそれ自身が反粒子となっています ただし中性子は中性のはずですが中身のクォークに反クォークがあるので反中性子 \(\bar{n}\) というものが存在します。

対消滅・対生成

粒子とその反粒子が合体して消滅し、他の粒子やエネルギーに転化することがあり、この現象を対消ついといいます。

対消滅の反対の現象は対生成といいます。

対消滅、対生成では運動量やエネルギーが保存されます。