電荷
電荷
電気のことを物理的、あるいは微視的にいうとき、電荷といいます。電荷の量を電気量といいます*電気量のことを電荷といってしまうこともあります。
どっちを意味するかは文脈で読み取ってください。
閉じる。電気とは何か、電荷とは何かと聞かれると、それはあまりにも根本的すぎて答えられません。あらゆる電磁気現象の大本となるものであり、万有引力における質量のようなもの、とでもいえます。
電荷には正と負がありそれぞれ正電荷、負電荷といいます。同じ符号同士の電荷は反発し合い(斥力、せきりょく)、異なる符号同士の電荷は引きつけ合います(引力)。
電気量(電荷の量)の単位は [C] クーロン です*18世紀のフランスの物理学者、クーロン Coulomb から。
閉じる。1C という量は、1A の電流が流れているとき、その導線の断面を1秒間に通過する電気量、と定められています。量記号には q や Q を用います*quantity of electricity の頭文字。Q の文字は熱力学でも使われます。
閉じる。
電気量には最小値があり電気素量といいます。正電荷の陽子、負電荷の電子が持つ電荷の絶対値です。e で表します*具体的な数値は 約1.60×10-19C です。約1.60×10-19 という数値を e と表す、ということです。9.8 を g と表したり、3.141592 を π と表すのと一緒です。
閉じる。陽子1個の電気量は e C であり、電子1個の電気量は - e C であり、この世のすべての物体の電気量はこれらの整数倍となっています。
原子の構造
世の中の物質は分子からできていて、分子は原子からできています。原子は原子核と電子からできています。原子核の周りを電子が回っています。(『原子の構造』 参照)
原子核は陽子と中性子からできています。
電子は負の電荷を持ち、陽子は正の電荷を持ちます。中性子は電荷を持ちません。
普通の状態のときは、電子の数と陽子の数は等しく、負の電荷の量と正の電荷の量はつり合っています。
電子は比較的自由に動くことができ、電子を失った原子はトータルで正の電荷を持ち、電子を得た原子はトータルで負の電荷を持ちます。
陽子は固定されていて動くことができません。原子が正電荷を帯びているときというのは電子が欠損しているときで、原子が中性のときは陽子と電子の数が同数になっているときで、原子が負電荷を帯びているときというのは電子が過剰なときです。(『正電荷』 参照)
帯電
物体が電気を帯びることを帯電するといいます。帯電した物体を帯電体といいます。
帯電した粒子を荷電粒子といいます。
大きさが無視できるほど小さい帯電体を点電荷といいます。力学における質点のようなものです。
電気量保存の法則
電荷は何も無いところから生まれたり、あるいは消滅してしまったりすることはありません。電荷をやりとりするとき、その前後で電荷の量(電気量)の総和は変化しません。このことを電気量保存の法則(あるいは電荷保存則)といいます。
静電気
物質に帯電した電気を静電気といいます。冬季、鉄製のドアノブに触れようとした際にバチッとくるのも静電気の仕業です。+に帯電した人の手と-に帯電したドアノブとの小さい空間を電子が飛び、瞬間的に何千ボルトもの電気が走ります。夏に静電気が発生しないのは夏の方が湿度が高く、目には見えませんが空気中の水分を伝って電気が逃げるからです。
+の電気を帯びやすいか、-の電気を帯びやすいかは原子の中の電子の構成によります。電子を放出しやすい原子は+の電気を帯びやすいし、電子を取り込みやすい原子は-の電気を帯びやすいのですが、どの原子が放出しやすいのか取り込みやすいのかは、高校化学の『物質の構成粒子』の項で詳しく説明されています。一応、どちらに帯電しやすいか、物質を列挙してみます。*下のような表を帯電列といいます。同じ物質でも、温度、湿度、形状によってどちらに帯電しやすいかは変わります。下記はおおまかな順序です。
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← +に帯電しやすい -に帯電しやすい →
人の手 髪の毛 ガラス 絹 紙 鉄 金 ポリエチレン 塩化ビニール
頭を下敷きでこすると髪の毛が持ち上がるのは、髪の毛が+に帯電しやすく、下敷きが(塩化ビニールでできているのですが)-に帯電しやすいからです。髪の毛と塩化ビニールをこすり合わせると髪の毛の電子、細かくいうと髪の毛を構成している原子の中の電子が、塩化ビニールに移り、髪の毛は+の電気を帯び、塩化ビニールは-の電気を帯び、+の電気と-の電気が磁石のように引きつけ合うのです。