手回し発電機は、ハンドルを回転させることによって起電力を発生させる装置である。リード線に図1に示すa~cのような接続を行い、いずれの接続の場合でも同じ起電力が発生するように、同じ速さでハンドルを回転させた。a~cの接続について、ハンドルの手ごたえが軽いほうから重いほうに並べた順として正しいものを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。
ハンドルの手ごたえ 軽い → 重い | |
---|---|
① | a b c |
② | a c b |
③ | b a c |
④ | b c a |
⑤ | c a b |
⑥ | c b a |
#センター09本試
これは手回し発電機を使った経験の無い人には難しい問題かもしれません。しかし、直流発電機と電磁誘導の原理を理解していればなんとか解けます。
直流発電機というのは、コイルを動かして電磁誘導を起こして起電力を発生させる装置です。
電磁誘導というのは、コイルを貫く磁場が変化すると電流が発生する現象です。左図ではコイルが静止していて磁石が動いていますが、逆に、磁石が静止していてコイルが動いている場合でも同じです。相対的なものです。
このとき、コイルの抵抗値が大きいときと小さいときでは、どちらが動かしやすいか、というのが本問の主旨です。
b : リード線どうしを接続する場合は抵抗がほとんどありません。大きい電圧を掛ければ電流が流れすぎて火花が出ます。
a : 豆電球を接続した場合は、抵抗はbの場合よりは大きいですがcよりは小さいです。
c : 不導体は元々電気をあまり通さない物質です。抵抗は最も大きいです。
抵抗の大きい順に c → a → b です。
たとえば、コイルの導線の材質が同じで、
細くて抵抗が大きければ、電流があまり流れず、レンツの法則の「行っちゃーいやよ来ちゃいやよ」の力が弱く、磁石が簡単に動きます。究極的に細ければ導線が無いのと等しくなり、磁石はなんの抵抗も無く軽く動かせます。
太くて抵抗が小さければ、電流がたくさん流れ、「行っちゃーいやよ来ちゃいやよ」の力が強いです。磁石を動かすのが重いです。
つまり、抵抗が大きいときの方が電流が小さく、磁石が動かしやすいです。渦電流のときと同じです。「抵抗が大きいほど抵抗が小さい」と覚えてください。
というわけで、ハンドルの手ごたえは軽い方から順に ⑤ c → a → b となります。
(余談)
抵抗が大きいときの方が軽い、というのは電力の式 P = \(\large{\frac{V^2}{R}}\) にも矛盾しません。起電力 V が一定のときは、抵抗 R が大きいときの方が電力 P が小さく、電力が小さいというのは力をあまり使わないということです。