箱の中に砂を質量 M だけ入れ、壁との間をばね定数 k のばねでつないだ。箱をつかみ、ばねを自然長から l だけ引き伸ばして静かに手を離したところ。図1のように箱は静止したままであった。ただし、床と箱との間の静止摩擦係数 μ 、動摩擦係数 μ' は場所によらず一定であり、重力加速度の大きさを g とする。また、箱とばねの質量は無視できるものとする。
(問1)
(問2)qG7F5
(問3)(箱の中の砂を質量 m だけ取り除いたとき、箱が動き始めた。)その後、ばねが自然長より y だけ伸びた位置で、箱は止まった。このとき成り立つエネルギーの関係式として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① \(\large{\frac{k}{2}}\)y2 + (M - m)μ'gy = \(\large{\frac{k}{2}}\)l2
② \(\large{\frac{k}{2}}\)y2 + (M - m)μ'gl = \(\large{\frac{k}{2}}\)l2
③ \(\large{\frac{k}{2}}\)y2 - (M - m)μ'g(l - y) = \(\large{\frac{k}{2}}\)l2
④ \(\large{\frac{k}{2}}\)y2 + (M - m)μ'g(l - y) = \(\large{\frac{k}{2}}\)l2
#センター04追試
荷物が重いときは、最大静止摩擦力も大きくて、弾性力に負けることがないので箱は動きません。
荷物が軽くなってくると、最大静止摩擦力も小さくなっていき、やがて弾性力よりごく僅かに小さくなった瞬間に箱が動き出します。
いったん動き出すと摩擦力はガクっと弱くなって、弾性力に負けて、どんどん左に動いていくわけですが、
自然長に近くなってくるにつれて弾性力の方も小さくなっていくわけですから、やがて、摩擦力とつり合うことになります。
こうして、いったん動いた箱が再び止まるのです。
(始めの位置と終わりの位置での力学的エネルギー)
l だけ伸びた位置にいる、砂入りの箱の力学的エネルギーは
(弾性エネルギー)+(運動エネルギー)
= ( \(\large{\frac{1}{2}}\)kl2 ) + ( 0 ) ……①
y だけ伸びた位置にいる、砂入りの箱の力学的エネルギーは
(弾性エネルギー)+(運動エネルギー)
= ( \(\large{\frac{1}{2}}\)ky2 ) + ( 0 ) ……②
(差分は摩擦熱)
l > y であるので、①より②の方が小さいです。力学的エネルギーが減ったのです。摩擦が無ければ②の運動エネルギーの項が 0 ではなく \(\large{\frac{1}{2}}\)(M-m)vy2 となって力学的エネルギーは減らないのですが、摩擦がある分、減ったのです。
摩擦力(動摩擦力)の大きさは μ'(M - m)g
垂直抗力の大きさが (M - m)g で、
それに動摩擦係数 μ' を掛けて μ'(M - m)g です。
です。
動いている間、動摩擦力は変化しません。
動く距離は l - y です。
つまり、摩擦力がした仕事(床や箱を温めた摩擦熱)は
μ'(M - m)g × (l - y)
です。
これが①と②の差分であり、
① - ② = μ'(M - m)g × (l - y)
⇔ \(\large{\frac{1}{2}}\)kl2 - \(\large{\frac{1}{2}}\)ky2 = μ'(M - m)g × (l - y)
∴ \(\large{\frac{1}{2}}\)kl2 = \(\large{\frac{1}{2}}\)ky2 + μ'(M - m)g(l - y)
∴ \(\large{\frac{1}{2}}\)ky2 + (M - m)μ'g(l - y) = \(\large{\frac{1}{2}}\)kl2
となり、答えは ④ です。