図3のように、振動数 f の単色光が、空気中から一様な厚さ d の薄膜に垂直に入射している。境界面Aで反射した光と、境界面Bで反射した光は、空気中で干渉する。空気の絶対屈折率を 1 、薄膜の絶対屈折率を n とする。光の位相は、境界面Aで反射するときには π だけ変化するが、境界面Bで反射するときには変化しない。
(問3)次の文章中の空欄ウ・エに入れる式の組合せとして正しいものを、下の①~⑧のうちから一つ選べ。
境界面Aから薄膜に入り境界面Bで反射した光は、再び境界面Aに到達する。この光が薄膜内を往復するのに要する時間 t は、真空中における光の速さを c として、ウと表される。また、境界面Aと境界面Bで反射した二つの光が強めあう条件は、m を正の整数として、t =エと表される。
ウ | エ | |
---|---|---|
① | \(\large{\frac{2d}{nc}}\) | \(\large{\frac{m}{f}}\) |
② | \(\large{\frac{2d}{nc}}\) | \(\big(m-\large{\frac{1}{2}}\)\(\big)\large{\frac{1}{f}}\) |
③ | \(\large{\frac{2d}{nc}}\) | \(\large{\frac{mn}{f}}\) |
④ | \(\large{\frac{2d}{nc}}\) | \(\big(m-\large{\frac{1}{2}}\)\(\big)\large{\frac{n}{f}}\) |
⑤ | \(\large{\frac{2nd}{c}}\) | \(\large{\frac{m}{f}}\) |
⑥ | \(\large{\frac{2nd}{c}}\) | \(\big(m-\large{\frac{1}{2}}\)\(\big)\large{\frac{1}{f}}\) |
⑦ | \(\large{\frac{2nd}{c}}\) | \(\large{\frac{mn}{f}}\) |
⑧ | \(\large{\frac{2nd}{c}}\) | \(\big(m-\large{\frac{1}{2}}\)\(\big)\large{\frac{n}{f}}\) |
(問4)次の文章中の空欄オ〜キに入れる語の組合せとして最も適当なものを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。
厚さを調節できる薄膜に対して垂直に単色光を入射させた。薄膜が光の波長より十分に薄いとき、単色光の色によらず二つの反射光はオあった。その状態から薄膜を徐々に厚くしていくと、二つの反射光は一度カあった後、厚さ d1 のとき再びオあった。単色光が赤色、緑色、青色の場合で比較すると、d1 が最も小さいのはキ色の場合であった。
オ | カ | キ | |
---|---|---|---|
① | 弱め | 強め | 赤 |
② | 弱め | 強め | 緑 |
③ | 弱め | 強め | 青 |
④ | 強め | 弱め | 赤 |
⑤ | 強め | 弱め | 緑 |
⑥ | 強め | 弱め | 青 |
#センター16本試物理
(問3)
ウ
媒質aでの光速は
va = \(\large{\frac{c}{\ n_a}}\)
であるので、絶対屈折率 n の薄膜での光速は
\(\large{\frac{c}{n}}\)
です。
よって、薄膜内を往復する時間 t は、道のりを速さで割って、
t = 2d ÷ \(\large{\frac{c}{\ n}}\) = \(\large{\frac{2nd}{c}}\) ……➊
エ
空気中の光の波長を λ としますと、薄膜に垂直に当たる場合の光が強めあう(明るくなる)条件は
2nd = \(\big(m-\large{\frac{1}{2}}\)\(\big)\)λ
(m = 1,2,3,…)
『薄膜による干渉』においては
2nd = \(\big(m+\large{\frac{1}{2}}\)\(\big)\)λ
としていますが、これは
(m = 0,1,2,…)
であるためです。
であり、これを➊式に代入しますと、
t = \(\large{\frac{2nd}{c}}\) = \(\big(m-\large{\frac{1}{2}}\)\(\big)\)\(\large{\frac{λ}{c}}\) ……➋
波の速さというものは振動数と波長を掛けたものだから、
c = fλ
であり、変形すると、
\(\large{\frac{1}{f}}\) = \(\large{\frac{λ}{c}}\)
であり、➋式に代入すると、
t = \(\big(m-\large{\frac{1}{2}}\)\(\big)\)\(\large{\frac{1}{f}}\)
答えは ⑥ です。
(問4)
薄膜が光の波長より十分に薄いとき、というのは、
このような状態ではなく、
このような状態ということです。
境界面A(上面)で反射した光の位相は π だけ変化し(点対称)、
境界面B(下面)で反射した光の位相は変化しないので(線対称)、
二つの反射光は位相が π だけズレていることになり、 弱め あいます。
そしてこの状態から薄膜を徐々に厚くしていくと、やがて位相がそろい、二つの反射光は 強め あいます。
さらに厚くしていくと、位相が π ズレて、二つの反射光は再び弱めあいます。
このときの厚さ d1 は半波長分 『動滑車を使うと必要距離が2倍』の話と通ずるものがあります。 の長さですが、
赤色の光と緑色の光と青色の光で最も波長が小さいのは 青 色です。
答えは ③ です。