一様な電場、または一様な磁場の中で、正に帯電した粒子が平面内を運動した。図3に示すように、平面内の直線 l 上に距離 L だけ離れた2点P、Qがあり、粒子は、点Pを直線 l と 45° をなす方向に速さ v で通過した後、点Qを直線 l と 45° をなす方向に同じ速さ v で通過した。
(問3)このとき、電場の向き、磁場の向きとして最も適当なものを、次の①~⑥のうちから一つずつ選べ。ただし、同じものを繰り返し選んでもよい。
電場の場合:3
磁場の場合:4
(問4)磁場の場合に、点Pから点Qまでの粒子の軌跡と、その間を運動するのに要した時間を表す式の組合せとして最も適当なものを、次の①~⑨のうちから一つ選べ。
軌跡 | 時間 | |
---|---|---|
① | 放物線 | \(\large{\frac{\sqrt2πL}{4v}}\) |
② | 放物線 | \(\large{\frac{\sqrt2πL}{2v}}\) |
③ | 放物線 | \(\large{\frac{\sqrt2L}{v}}\) |
④ | 円弧 | \(\large{\frac{\sqrt2πL}{4v}}\) |
⑤ | 円弧 | \(\large{\frac{\sqrt2πL}{2v}}\) |
⑥ | 円弧 | \(\large{\frac{\sqrt2L}{v}}\) |
⑦ | 双曲線 | \(\large{\frac{\sqrt2πL}{4v}}\) |
⑧ | 双曲線 | \(\large{\frac{\sqrt2πL}{2v}}\) |
⑨ | 双曲線 | \(\large{\frac{\sqrt2L}{v}}\) |
#センター16本試物理
(問3)
問題の趣旨がわかりにくいかもしれませんが、これは、ある一つの荷電粒子を電場空間に放り込んだときに点P、点Qを通ったが、このとき電場はどちらの方向を向いていたか、という問いであり、また、磁場空間に放り込んだとき(このとき電場は無い)、同じように点P、点Qを通ったが、このとき磁場はどちらの方向を向いていたか、という問いです。
3
粒子の運動の l 方向の成分には変化が無く、
l と垂直な方向の成分だけが変化しています。
正に帯電した粒子は電場の方向へ力(静電気力)を受けますから、
電場の向きは紙面下向きです。
答えは ③
4
磁場の中を進む荷電粒子が受ける力はローレンツ力ですが、ローレンツ力の向きは磁場の方向と速度の方向に垂直です。粒子は紙面と平行な平面内を運動しているわけですから、磁場の向きは紙面に垂直ということになります。つまり、紙面こちら向きか紙面向こう向きのどちらかであり、フレミングの左手の法則を適用すれば、紙面こちら向きと分かります。
答えは ⑤
(問4)
磁場に垂直に入射した荷電粒子はローレンツ力によって等速円運動をしますが、円の中心の位置を探りますと、
それは運動方向と垂直の方向にあるはずだから、左図の2つの緑線の交点が円の中心となっているはずです。
そして、円の半径が \(\large{\frac{\sqrt2L}{2}}\) であることが分かり、
円周の長さが
2π × (半径) = 2π × \(\large{\frac{\sqrt2L}{2}}\) = \(\sqrt2\)πL
であることが分かり、
円弧 \(\stackrel{\frown}{\rm{PQ}}\) の長さは円周の (\(\large{\frac{90°}{360°}}\)=) \(\large{\frac{1}{4}}\) であるので、
\(\large{\frac{1}{4}}\) × \(\sqrt2\)πL = \(\large{\frac{\sqrt2πL}{4}}\)
であり、
点Pから点Qまで掛かる時間は、道のりを速さで割って、
\(\large{\frac{\sqrt2πL}{4}}\) ÷ v = \(\large{\frac{\sqrt2πL}{4v}}\)
と求まります。
答えは ④ です。
(余談)
「磁場空間の場合」はローレンツ力の向きが刻々と変わり、結果的に等速円運動となるわけですが、
「電場空間の場合」は静電気力(クーロン力)の向きが電場の向きと同じで、絶えず紙面下向きであり、
粒子の軌跡は放物線となります。重力空間における斜方投射と同じです。
『トムソンの実験』もご参照ください。