qH7D6

 自然界に見られる等速円運動に近い運動に、天体の運行がある。恒星のまわりを回る惑星の運動に関して以下の問1〜5に答えなさい。解答の導出過程も示しなさい。ここで恒星と惑星の質量をそれぞれ Mm で表し、恒星の質量 M は惑星の質量 m より十分大きいとする。また、万有引力定数を G とする。

(問1)半径 r の等速円運動をする惑星の速さ v を求めなさい。

(問2)問1の惑星の力学的エネルギーを r を用いて表しなさい。

(問3)等速円運動をする惑星の公転周期 T の2乗が、円の半径 r の3乗に比例することを示しなさい。

(問4)次に、惑星が楕円軌道を描く場合を考える。恒星に最も近づいたときの恒星からの距離を r1 、最も離れたときの距離を r2 とする。恒星に最も近づいたときの惑星の速さ v1r1r2 を用いて表しなさい。

(問5)楕円軌道を描く惑星の力学的エネルギーが、楕円の半長軸の長さ a を用いて - \(\large{\frac{GmM}{2a}}\) で表されることを示しなさい。

#神戸大16

(問1)
惑星と恒星の間の万有引力の大きさは

    G\(\large{\frac{mM}{r^2}}\)  万有引力の法則』において
  G\(\large{\frac{Mm}{r^2}}\)
と表現したものを、ここでは
  G\(\large{\frac{mM}{r^2}}\)
としていますがこれは、問題文の問5の mM の順番に合わせただけで
特に意味はありません。
  \(\large{\frac{MmG}{r^2}}\)
としたって間違いではありません。

等速円運動する惑星の加速度

    \(\large{\frac{v^2}{r}}\)

よって、運動方程式ma = F)は

    m\(\large{\frac{v^2}{r}}\) = G\(\large{\frac{mM}{r^2}}\)

 ∴  v2 = G\(\large{\frac{M}{r}}\)

 ∴   v = \(\large{\sqrt{\frac{GM}{\large{r}}}}\)

万有引力 G\(\large{\frac{mM}{r^2}}\) が
半径 r の等速円運動の向心力となるから、
 m\(\large{\frac{v^2}{r}}\) = G\(\large{\frac{mM}{r^2}}\)
と考えてもいいです。

 

 

(問2)
この惑星の運動エネルギーは

    \(\large{\frac{1}{2}}\)mv2

この惑星の万有引力による位置エネルギー

    - G\(\large{\frac{mM}{r}}\)

よって力学的エネルギー(運動エネルギー + 位置エネルギー)は

    \(\large{\frac{1}{2}}\)mv2 + \(\big(\)- G\(\large{\frac{mM}{r}}\)\(\big)\)  問1の結果を代入して

    = \(\large{\frac{1}{2}}\)m\(\large{\frac{GM}{r}}\) - G\(\large{\frac{mM}{r}}\)

    = \(\big(\)\(\large{\frac{1}{2}}\) - 1\(\big)\)\(\large{\frac{GmM}{r}}\)

    = - \(\large{\frac{GmM}{2r}}\)

 

(3種のエネルギーの大きさ比べ)
問1の結果を運動エネルギーの式に代入しますと、
    \(\large{\frac{GmM}{2r}}\)
位置エネルギーは
    - G\(\large{\frac{mM}{r}}\)
力学的エネルギーは
    - \(\large{\frac{GmM}{2r}}\)
であるので、絶対値の大きさを比べると 1:2:1 になっています。

 

 

(問3)
周期というのは(1周の長さ)÷(周回する速さ)であるから、

    T = \(\large{\frac{2πr}{v}}\)  両辺2乗しますと

 ∴  T2 = \(\large{\frac{4π^2r^2}{v^2}}\)  問1の結果を代入しますと

 ∴   T2 = 4π2r2\(\large{\frac{r}{GM}}\)

      = \(\large{\frac{4π^2}{GM}}\)r3

 

Tr のこの関係はケプラーの第3法則を表しています。

 

 

(問4)
恒星から最も離れたときの惑星の速さを v2 と置きます。そうしますと、ケプラーの第2法則より、

    \(\large{\frac{1}{2}}\)r1v1 = \(\large{\frac{1}{2}}\)r2v2

 ∴  v2 = \(\large{\frac{r_1}{r_2}}\)v1  ……①

最も近づいたときの惑星の力学的エネルギーは

    \(\large{\frac{1}{2}}\)mv12 + (- G\(\large{\frac{mM}{r_1}}\))  問2の結果
  - \(\large{\frac{GmM}{2r}}\)
に代入するのは間違いです。
問2は円運動、問4は楕円運動です。
  ……②

最も離れたときの惑星の力学的エネルギーは

    \(\large{\frac{1}{2}}\)mv22 + (- G\(\large{\frac{mM}{r_2}}\))

力学的エネルギー保存の法則より、

    \(\large{\frac{1}{2}}\)mv12 + (- G\(\large{\frac{mM}{r_1}}\)) = \(\large{\frac{1}{2}}\)mv22 + (- G\(\large{\frac{mM}{r_2}}\))

 ∴  \(\large{\frac{1}{2}}\)v12 - G\(\large{\frac{M}{r_1}}\) = \(\large{\frac{1}{2}}\)v22 - G\(\large{\frac{M}{r_2}}\)  ①式を代入して

 ∴  \(\large{\frac{1}{2}}\)v12 - G\(\large{\frac{M}{r_1}}\) = \(\large{\frac{1}{2}}\)⋅\(\large{\frac{{r_1}^2}{{r_2}^2}}\)v12 - G\(\large{\frac{M}{r_2}}\)

 ∴  \(\large{\frac{1}{2}}\)v12 - \(\large{\frac{1}{2}}\)⋅\(\large{\frac{{r_1}^2}{{r_2}^2}}\)v12 = G\(\large{\frac{M}{r_1}}\) - G\(\large{\frac{M}{r_2}}\)

 ∴  \(\large{\frac{1}{2}}\)\(\big(\)1 - \(\large{\frac{{r_1}^2}{{r_2}^2}}\)\(\big)\)v12 = \(\big(\)\(\large{\frac{1}{r_1}}\) - \(\large{\frac{1}{r_2}}\)\(\big)\)GM

 ∴  \(\big(\)1 - \(\large{\frac{{r_1}^2}{{r_2}^2}}\)\(\big)\)v12 = 2\(\big(\)\(\large{\frac{1}{r_1}}\) - \(\large{\frac{1}{r_2}}\)\(\big)\)GM

 ∴  \(\large{\frac{{r_2}^2-{r_1}^2}{{r_2}^2}}\)v12 = 2\(\large{\frac{r_2-r_1}{r_1r_2}}\)GM

 ∴  \(\large{\frac{(r_2+r_1)(r_2-r_1)}{r_2}}\)v12 = 2\(\large{\frac{r_2-r_1}{r_1}}\)GM

 ∴  \(\large{\frac{(r_2+r_1)}{r_2}}\)v12 = 2\(\large{\frac{1}{r_1}}\)GM

 ∴  v12 = 2\(\large{\frac{r_2}{r_1(r_2+r_1)}}\)GM

 ∴   v1 = \(\large{\sqrt{\frac{2GMr_2}{r_1(r_1+r_2)}}}\)

 

r1 = r2 のときは \(\large{\frac{2r_2}{(r_2+r_1)}}\) = 1 であり、

    v1 = \(\large{\sqrt{\frac{GM}{r_1}}}\)

となり、問1の円運動の場合と一致します。

 

 

(問5)
惑星の力学的エネルギーは(問4の結果を②式に入れ戻して ②式の下の
「最も離れたときの惑星の力学的エネルギー」の式に
①式と共に入れ戻してもいいです。同じです。

    \(\large{\frac{1}{2}}\)mv12 + (- G\(\large{\frac{mM}{r_1}}\))

    = \(\large{\frac{1}{2}}\)m×\(\large{\frac{2GMr_2}{r_1(r_1+r_2)}}\) + (- G\(\large{\frac{mM}{r_1}}\))

    = m×\(\large{\frac{GMr_2}{r_1(r_1+r_2)}}\) - G\(\large{\frac{mM}{r_1}}\)

    = \(\Big\{\)\(\large{\frac{r_2}{r_1(r_1+r_2)}}\) - \(\large{\frac{(r_1+r_2)}{r_1(r_1+r_2)}}\)\(\Big\}\)GmM

    = \(\Big\{\) - \(\large{\frac{r_1}{r_1(r_1+r_2)}}\)\(\Big\}\)GmM

    = - \(\large{\frac{GmM}{r_1+r_2}}\)

ところで、

r1r2 を足したものが楕円の長軸 2a になるから、

  r1 + r2 = 2a

これを上式に代入すると、惑星の力学的エネルギーは

     - \(\large{\frac{GmM}{2a}}\)

と表せます。

 

r1 = r2 のとき、つまり円のとき、上式は
    - \(\large{\frac{GmM}{2r_1}}\)
となり、問2の結果と一致します。