力のモーメント
名称がたくさんある
物体を回転させる力を力のモーメントといいます。回転力、トルク、力の能率、回す力、ねじる力、などともいいます。全て同じ意味です。*慣れないうちは、「力のモーメント」を「回転力」と言い換えた方がわかりやすいかもしれません。
閉じる
やっかい
ある回転軸を持つ棒に、ある力がはたらいているとき、その力が2倍になれば、回転軸を回転させるための影響力も当然、2倍になります。単純なことです。
*
このとき、力のモーメント(回転力)を、曲げた矢印のようなもので描くようなことはしません。力のモーメント自体は図示しません。あるいは、作用する力と回転軸が描いてあれば、それをもって力のモーメントが描かれているとみなします。
また、作用する力の方向に棒が進んでいくわけではありません。
あくまでも、棒は回転します。
棒に作用する力を表現している矢印は、物体が進む方向を指しているわけではありません。
力が作用する点と、
力の向きと、
力の大きさを表現しています。矢印の長さはあくまでも力の大きさを表現しています。その瞬間、その地点における力の大きさを示しています。
閉じる
しかしこれ以外に、慎重に考えなければいけないことがあります。
ある一定の力があったとして、
回転軸を回転させるための影響力は、2倍離れた位置では、2倍になります。*
ビン詰めのジャムの蓋を開けるとき、蓋の大きさが大きい方が力が伝わりやすく開けやすいです。
シーソー勝負において、同じ体重同士なら外側に座った方が有利です。真ん中の支点に対して大きな力を加えられます。
てこの原理を思い出してください。小さい力でも支点から離れることによって重いものを持ち上げることができます。
閉じる
回転軸と力との距離が半分であれば、影響力は半分になります。
つまり、力のモーメントというものは、距離に比例するものであり、そのため、回転軸を意識することが重要で、「物体を回転させる力」というより「回転軸を回転させる力」ととらえるべきものといえます。*極端なことをいうと、
形状的な中心と回転運動の中心が同じでないこともあるかもしれません。
閉じる
さらに、
作用する力が棒に対して垂直でない場合、影響力は弱くなります。
力の方向が棒の伸びる方向と同じときは、回転軸を回転させる力は 0 になってしまいます。*
回転軸方向を向いているときも同様です。
閉じる
つまり、力のモーメントというものは、作用する力の向きに大きく左右されます。垂直のとき最大で、平行のときは 0 です。
力のモーメントの式
作用する力の大きさが F [N] で、回転軸から力の作用点までの距離を r [m]、回転軸から力の作用点までの向きと作用する力の向きが垂直である、としますと、力のモーメント M *M は moment の頭文字。教科書によっては M ではなく N を使うものもあります。この場合はおそらく Newton の頭文字。
閉じるは、
M = Fr
で、単位は [N・m] ニュートンメートル です。この単位は仕事の単位 [N・m]=[J] とたまたま同じになってますが、まったく別物です。大学に行って内積と外積を習うとはっきりします。
垂直でない場合、作用する力 F のうち垂直の成分 Fsinθ だけが、回転に寄与します。つまり力のモーメントは、
M = Frsinθ
です。
これは別の考え方として、力を作用線に沿って移動して、直角になったところで改めて力のモーメントを考える、とすることができます。このとき、回転軸からの距離は rsinθ です。すると、力のモーメントは、
M = F×rsinθ = Frsinθ
となります。つまり、同じです。F に sinθ を掛けるのか、r に sinθ を掛けるのか、の違いだけで、実質的に同じです。
rsinθ というのは、数学的にいうと、点と直線の距離のことです。点と直線の距離というのは、点から直線に下ろした垂線の長さのことです。この距離のことを腕の長さといいます。回転軸から力の作用線までの距離のことです。
腕の長さを l [m] *length(長さ)より。閉じる(=rsinθ)、左回り(反時計回り)を正 *右回りを正とすることもありますし、これは自分で勝手に決めていいことですし、答案用紙にはどちらが正なのかを明記するべきだし、明記しなくても結果が同じになるのでやっぱり明記しなくてもよかったりすることです。
閉じる、としますと、以下のようにまとめられます。
力のモーメント
M = Fl = Frsinθ
なお、θ の基準位置を変えると、sinθ の部分が cosθ になるので、覚えておいてください。
回転軸から半径 r が伸びる方向に θ の基準をとれば、sinθ ですし、
半径 r の円の接線の方向に θ の基準をとれば、cosθ です。*sin(90°-θ) = cosθ です。三角比に慣れてない方は難しいかもしれません。
閉じる
どちらも内容はまったく同じです。