図1のように、なめらかで水平な床の上の点Oを通る鉛直線上に点Pがあり、先端に質量 M の小球Aをつけた長さ l の軽い糸の他端が点Pに固定されている。小球Aが静止して最下点Qの位置にあるとき、床から小球Aまでの高さは h であった。質量 m(m < M)をもった小球Bが飛んで来て、静止している小球Aに衝突した。衝突直前の小球B、および衝突直後の小球Aと小球Bの運動の方向は水平面内の同一直線上にあった。図1の右向きを正の向きとする。小球Bは負の向きに飛んできて速さ u で小球Aに衝突し、衝突直後、小球Aは負の向きに、小球Bは正の向きに運動し、それぞれの速さは vA 、vB であった。衝突後の2つの小球の運動に関する問1〜5に答えなさい。解答欄には必要に応じて導出の過程も示しなさい。空気の抵抗は無視できるものとし、重力加速度の大きさを g とする。
(問1)小球間の衝突が弾性衝突であるとして、衝突直後の小球Aの速さ vA と小球Bの速さ vB を求めなさい。
以下の解答には vA と vB を用いてよい。衝突後の小球Aの運動について考えてみよう。
(問2)衝突後、小球Aは点Pを中心とする円の円周にそった往復運動を行った。鉛直線に対する最大振れ角が小さいときの小球Aの運動の周期を書きなさい。また、小球Aが最下点Qを通過するときの糸の張力を求めなさい。
次に、衝突後の小球Bの運動について考えてみよう。
(問3)衝突後、小球Bが床に最初に衝突するまでの時間 t0 を求めなさい。
(問4)小球Bが床と最初に衝突してから2回目に衝突するまでの時間 t1 を求めなさい。ただし、小球Bと床との間の反発係数を e(< 1)とする。
(問5)その後、小球Bはどのような運動を行うか。e = 0.5 として、小球Bが行う運動の概要がわかるように、水平方向と鉛直方向それぞれについて位置の時間変化の概略を描きなさい。ただし、点Oを原点とし、水平方向に x軸、鉛直方向に z軸をとり、小球Aと衝突した時刻を t = 0 としなさい。鉛直方向については、時刻 t0 までの位置の時間変化が描き入れてある。
#神戸大15
(問1)
衝突前の運動量の和: M⋅0 + (- mu)
衝突後の運動量の和: (- MvA) + mvB
運動量保存の法則より、
M⋅0 + (- mu) = (- MvA) + mvB
∴ - mu = - MvA + mvB
∴ mvB = MvA - mu
∴ vB = \(\large{\frac{M}{m}}\)vA - u ……①
また、弾性衝突(e = 1)であることから反発係数の式(e = \(-\large{\frac{v_1{'}-v_2{'}}{v_1-v_2}}\))に各量を代入して vA を求めますと、
1 = \(-\large{\frac{-(v_\rm{A})-v_\rm{B}}{0-(-u)}}\)
∴ 1 = \(\large{\frac{v_\rm{A}+v_\rm{B}}{u}}\)
∴ u = vA + vB ①式を代入して
∴ u = vA + \(\large{\frac{M}{m}}\)vA - u
∴ 2u = (1 + \(\large{\frac{M}{m}}\))vA
∴ 2u = \(\large{\frac{m+M}{m}}\)vA
∴ 2u\(\large{\frac{m}{m+M}}\) = vA
∴ vA = \(\large{\frac{2m}{M+m}}\)u
これを①式に代入しますと、
vB = \(\large{\frac{M}{m}}\)vA - u
= \(\large{\frac{M}{m}}\)⋅\(\large{\frac{2m}{M+m}}\)u - u
= \(\large{\frac{2M}{M+m}}\)u - u
= \(\large{\frac{2M-(M+m)}{M+m}}\)u
= \(\large{\frac{M-m}{M+m}}\)u
vB は速度でなく速さを表す量であり、M > m であるので、上式を読み取るとちゃんと正になってます。ここが負になっていると何かしら間違っているということです。
(問2)
「最大振れ角が小さい」という意味は、運動が単なる単振り子ではなく微小振動の単振り子であるということであり、微小振動の単振り子の周期の公式( T = 2π\(\sqrt{\frac{\large{l}}{\large{g}}}\) )が使えるということです。
求める周期を T と置きますと、
T = 2π\(\sqrt{\frac{\large{l}}{\large{g}}}\)
求める張力を S と置きますと、
重力が Mg で、
遠心力が \(M\large{\frac{{v_\rm{A}}^2}{l}}\) で、
これらが張力とつり合っているので、
S = Mg + \(M\large{\frac{{v_\rm{A}}^2}{l}}\)
あるいは、
円運動の運動方程式として、
\(M\large{\frac{{v_\rm{A}}^2}{l}}\) = S - Mg
と立式してもいいです。
= \(M(g +\large{\frac{{v_\rm{A}}^2}{l}}\normalsize{)}\)
(問3)
衝突後、小球Bは水平投射運動をします。水平投射の鉛直方向の位置の式(y = \(\large{\frac{1}{2}}\)gt2)に各量を代入しますと、
h = \(\large{\frac{1}{2}}\)gt02
∴ \(\large{\frac{2h}{g}}\) = t02
∴ t0 = \(\sqrt{\frac{\large{2h}}{\large{g}}}\)
(問4)
(床への衝突直前の速度の鉛直成分の大きさ)
小球Aとの衝突後、小球Bの鉛直成分は g の加速度で t0 の時間進むわけですから、床への衝突直前の速度の鉛直成分の大きさは
gt0
(床への衝突直後の速度の鉛直成分の大きさ)
反発係数 e で跳ね返る(e = \(\large{\frac{|v'|}{|v|}}\))のですから、床への衝突直後の速度の鉛直成分の大きさは
egt0
この速さが g の加速度で \(\large{\frac{t_1}{2}}\) の時間だけ経つと(最高点で) 0 になるのだから、
egt0 = \(g\large{\frac{t_1}{2}}\) ……②
∴ et0 = \(\large{\frac{t_1}{2}}\)
∴ t1 = 2et0
問3の t0 の値を代入して
t1 = 2e\(\sqrt{\frac{\large{2h}}{\large{g}}}\)
(問5)
(水平方向)
小球Bの速度の水平成分は初速のまま一定であり
『水平投射』項参照
、x = vBt となります。
(鉛直方向)
床に最初に衝突した後の最高点の高さを h1 として、鉛直上方投射のtを含まない式(v2 - v02 = - 2gy)を立てますと、
02 - (egt0)2 = - 2gh1
∴ - e2g2t02 = - 2gh1
∴ e2gt02 = 2h1 問3で求めた t0 = \(\sqrt{\frac{\large{2h}}{\large{g}}}\) を代入して
∴ e2g\(\frac{\large{2h}}{\large{g}}\) = 2h1
∴ e22h = 2h1
∴ h1 = e2h (←これはよく出てくるパターンです。覚えておいてください。)
さらに、床への2回目の衝突直後の速度の鉛直成分の大きさは(問4と同様に考えて)
e×egt0 = e2gt0
であり、床に2回目に衝突した後の最高点の高さを h2 としますと、(上記と同様の式を立てて)02 - (e2gt0)2 = - 2gh2
∴ e4gt02 = 2h2 t0 = \(\sqrt{\frac{\large{2h}}{\large{g}}}\) を代入して
∴ e4g\(\frac{\large{2h}}{\large{g}}\) = 2h2
∴ h2 = e4h
さらに、h3 と置いて同様に計算すると、
02 - (e3gt0)2 = - 2gh3
∴ h3 = e6h
また、床に2回目に衝突してから3回目に衝突するまでの時間を t2 として問4の②式と同様の式を立てると、
e2gt0 = \(g\large{\frac{t_2}{2}}\)
∴ e2t0 = \(\large{\frac{t_2}{2}}\)
∴ t2 = 2e2t0
さらに、t3 と置いて計算すると、
e3gt0 = \(g\large{\frac{t_3}{2}}\)
∴ t3 = 2e3t0
以上まとめますと、
高さは
h 、 h1 = e2h 、 h2 = e4h 、 h3 = e6h 、 …
時間は(t0だけ定義がちょっと違いますが)
t0 、 t1 = 2et0 、 t2 = 2e2t0 、 t3 = 2e3t0、 …
となります。
題意より e = 0.5 であるので、跳ね返るごとに高さは \(\large{\frac{1}{4}}\) になり、時間は \(\large{\frac{1}{2}}\) になる、ということです。つまりグラフは以下のようになります。