単振動する物体のエネルギー
保存されることは既に説明
力学的エネルギーというのは運動エネルギーと位置エネルギーの和のことであり、保存力のみがはたらく場合にこの量は保存されます。
単振動する物体(ばね振り子や単振り子など)において、力学的エネルギーが保存される(各瞬間の力学的エネルギーが一定である)ことを本項で説明しますが、保存されること自体は『ばね振り子の力学的エネルギー』項や『単振り子の力学的エネルギー』項*『単振り子の力学的エネルギー』項は単振動ではないですが、単振動の場合に拡張することはできます。
閉じるで既に説明しています。それらの項では v やら h やらが出てきましたが、本項は単振動関連の式を解析するので ω が出てきます。
単振動する物体の力学的エネルギー
運動エネルギー
単振動する物体の力学的エネルギーのうち、まず、運動エネルギーを求めてみます。Ek [J] とおきます。
Ek = \(\large{\frac{1}{2}}\)mv2 v = Aωcosωt を代入
= \(\large{\frac{1}{2}}\)m(Aωcosωt)2
= \(\large{\frac{1}{2}}\)mω2A2cos2ωt ……①
位置エネルギー
次に、位置エネルギーを求めてみます。Eu [J] とおきます。
といいましても、単振動の位置エネルギーというものはどう考えたらいいのでしょうか。それは弾性力による位置エネルギーと同じと考えます。
弾性力は F = - kx と表され、その弾性力による位置エネルギーは U = \(\large{\frac{1}{2}}\)kx2 と表されます。
単振動の復元力は F = - mω2x あるいは F = - Kx と表され、その復元力による位置エネルギーは U = \(\large{\frac{1}{2}}\)Kx2 と表されます*つまりこれは、復元力というものは弾性力と同様、保存力であるということです。
閉じる。
K という値は、ばね振り子の場合でしたら K = k であり、単振り子の場合でしたら K = \(\large{\frac{mg}{l}}\) であり、単振動一般であれば K = mω2 ということになります。
つまり、単振動の位置エネルギー Eu は
Eu = \(\large{\frac{1}{2}}\)Kx2
= \(\large{\frac{1}{2}}\)mω2x2 x = Asinωt を代入
= \(\large{\frac{1}{2}}\)mω2(Asinωt)2
= \(\large{\frac{1}{2}}\)mω2A2sin2ωt ……②
力学的エネルギー
①式、②式より、力学的エネルギー E [J] は
E = Ek + Eu
= \(\large{\frac{1}{2}}\)mω2A2cos2ωt + \(\large{\frac{1}{2}}\)mω2A2sin2ωt
= \(\large{\frac{1}{2}}\)mω2A2(cos2ωt + sin2ωt) cos2θ + sin2θ = 1(詳しくは数学の教科書を見て下さい)だから
= \(\large{\frac{1}{2}}\)mω2A2
この式は、mω2 を K で表すと、
E = \(\large{\frac{1}{2}}\)KA2
と表せますし、あるいは ω = 2πf を代入すると、
E = \(\large{\frac{1}{2}}\)m(2πf)2A2
= 2π2mf2A2
とも表せます。
単振動する物体のエネルギー
E = \(\large{\frac{1}{2}}\)mω2A2
= \(\large{\frac{1}{2}}\)KA2
= 2π2mf2A2
この式の中に変位 x の文字が無いので、単振動のエネルギーは変位に関わらず一定(どの地点を通過しているときでも力学的エネルギーが一定)、ということが分かります。
さらに、単振動のエネルギーは振幅 A の2乗と振動数 f の2乗に比例することが分かります。