断面積 S 、長さ l 、巻数 N の十分長いソレノイドを考える。導線の抵抗は無視できるとする。また、ソレノイドは真空中にあり、真空の透磁率を μ0 とする。以下の問1〜5に答えなさい。解答の導出過程も示しなさい。
(問1)電流 I を流したときに、ソレノイドを貫く磁束 Φ を求めなさい。
(問2)ソレノイドの自己インダクタンス L を求めなさい。
(問3)磁束密度の単位テスラ T を、長さの単位 m 、質量の単位 kg 、時間の単位 s および電流の単位 A で表しなさい。さらに問2の結果を用いて、インダクタンスの単位ヘンリー H を m 、 kg 、 s 、A で表しなさい。
(問4)ソレノイドに蓄えられるエネルギーは、単位体積あたりに直すと、ソレノイドの断面積 S や長さ l とは無関係に、ソレノイド中の磁束密度 B だけで決まることを示しなさい。
(問5)ソレノイド中の磁束密度が B = 1.00 テスラ のとき、ソレノイド中の体積1立方センチメートルに蓄えられるエネルギーを、有効数字2桁で求めなさい。ただし、SI単位系で μ0 の数値は 4π×10-7 で与えられる。
#神戸大16
(問1)
ソレノイド内の磁束密度を B としますと、
B = μ0\(\large{\frac{N}{l}}\)I
ソレノイドがつくる磁場が
H = nI
で、ソレノイドがつくる磁束密度が
B = μ×H = μnI
で、今、
巻き数の密度 n = \(\large{\frac{N}{l}}\)
で、
透磁率 μ → μ0
なので、
B = μnI = μ0\(\large{\frac{N}{l}}\)I
です。
よって、磁束は
Φ = BS = \(\large{\frac{μ_0NS}{l}}\)I ……①
(問2)
ファラデーの電磁誘導の法則より、時間 Δt の間に発生する誘導起電力は
- N\(\large{\frac{ΔΦ}{Δt}}\) = - N\(\large{\frac{Δ\frac{μ_0NS}{l}I}{Δt}}\) = - N\(\large{\frac{μ_0NS}{l}}\)⋅\(\large{\frac{ΔI}{Δt}}\) = - \(\large{\frac{μ_0N^2S}{l}}\)⋅\(\large{\frac{ΔI}{Δt}}\) ……②
よって、自己インダクタンスは
L = \(\large{\frac{μ_0N^2S}{l}}\) ……③
(問3)
(テスラ T)
「長さ」と「質量」と「時間」で思い浮かぶのは運動方程式(ma = F)による「力」との関係です。
[kg] × \(\large{\frac{[\rm{m}]}{[\rm{s}^2]}}\) = [N] 『単位の演算』参照。
また、「磁束密度」と「電流」と「力」で思い浮かぶのは電流が磁場から受ける力の公式(F = IBlsinθ)です。
[N] = [A] × [T] × [m] sinθ は比率のことなので単位はありません。
よって上の2式より、
[kg] × \(\large{\frac{[\rm{m}]}{[\rm{s}^2]}}\) = [A] × [T] × [m]
∴ \(\large{\frac{[\rm{kg}]}{[\rm{A}][\rm{s}^2]}}\) = [T] ……④
つまり、
T = kg/(A⋅s2) [m] は使いません。
(ヘンリー H)
問2の③式
L = \(\large{\frac{μ_0N^2S}{l}}\)
を、②式
- N\(\large{\frac{ΔΦ}{Δt}}\) = - \(\large{\frac{μ_0N^2S}{l}}\)⋅\(\large{\frac{ΔI}{Δt}}\)
に入れ戻しますと、
- N\(\large{\frac{ΔΦ}{Δt}}\) = - L\(\large{\frac{ΔI}{Δt}}\)
これでインダクタンスと電流を含む関係式が得られました。さらに Φ = BS を代入しますと、
- N\(\large{\frac{Δ(BS)}{Δt}}\) = - L\(\large{\frac{ΔI}{Δt}}\)
よって、単位に関しては、
\(\large{\frac{[\rm{T}][\rm{m}^2]}{[\rm{s}]}}\) = [H] × \(\large{\frac{[\rm{A}]}{[\rm{s}]}}\)
N は巻数であり、単位はありません。
ΔI というのは I の微小なもの、という意味ですから、
その単位は I と変わりません。[A] です。
∴ [T][m2] = [H][A]
④式を代入しますと、
\(\large{\frac{[\rm{kg}]}{[\rm{A}][\rm{s}^2]}}\)[m2] = [H][A]
∴ \(\large{\frac{[\rm{kg}]}{[\rm{A}^2][\rm{s}^2]}}\)[m2] = [H]
つまり、
H = kg⋅m2/(A2⋅s2)
(問4)
ソレノイド(=コイル)に蓄えられるエネルギーは
\(\large{\frac{1}{2}}\)LI2
よって単位体積当たりのエネルギーは
\(\large{\frac{\frac{1}{2}LI^2}{Sl}}\) = \(\large{\frac{LI^2}{2Sl}}\) ③式を代入して
= \(\large{\frac{\frac{μ_0N^2S}{l}I^2}{2Sl}}\)
= \(\large{\frac{μ_0N^2I^2}{2l^2}}\)
= \(\large{\frac{1}{2μ_0}}\)⋅\(\large{\frac{{μ_0}^2N^2I^2}{l^2}}\) ①式 BS = \(\large{\frac{μ_0NS}{l}}\)I の変形 B = \(\large{\frac{μ_0N}{l}}\)I を代入して
= \(\large{\frac{1}{2μ_0}}\)B2
よって、単位体積当たりのソレノイドのエネルギーは S や l によらず B だけで決まるといえます。( ”単位体積当たり”なのだから” S ”や” l ”によらないのは当然のような気もします。。。)
(問5)
上で求めた式に各値を代入しますと、
\(\large{\frac{1}{2μ_0}}\)B2 = \(\large{\frac{1}{2×4\pi×10^{-7}}}\) × 1.002
≒ \(\large{\frac{1}{8×3.14}}\) × 107
≒ \(\large{\frac{1}{25.1}}\)×107
≒ 0.0398×107
≒ 4.0×105 [J/m2]
これは、m 、kg 、s の単位における値であり、これを cm 、kg 、s の単位における値に直す(上記の値を \(\large{\frac{1}{100^3}}\)倍 する)と、
(答え) 4.0×10-1 [J/cm2]