ダイオード

半導体

半導体とは

電気の通しやすさが導体不導体の中間の物質を半導体といいます。

半導体の抵抗率

導体では温度が上がると電気を通しにくくなりますが、これは多くの電子が活発に動き回っているからです。温度が上がると陽イオンにぶつかりやすくなり抵抗率が大きくなってしまいます。しかし半導体はもともと電子の動きがにぶく、温度が上がるといくつかの電子の動きが活発になり、電気を通しやすくなります。半導体では温度が上がると抵抗率が小さくなるのです。

真性半導体

半導体として代表的な物質がケイ素(Si)の結晶やゲルマニウム(Ge)の結晶です。不純物を含まないこれらの物質を真性半導体といいます。

不純物半導体

真性半導体に特定の不純物をごく微量まぜて電気を通しやすくしたものを不純物半導体といいます。n型とp型の2種類があります。この不純物半導体は以下で説明する特性により電子回路に多用されます。 半導体という言葉はコンピューターの代名詞のように使われますが、それはコンピューター回路に不純物半導体が使われるからです。
コンピューター関連企業が多数立地するカリフォルニア州中部の盆地(Valley)をシリコンバレーと呼ぶのは、半導体としてケイ素(Silicon)を用いるからです。
ケイ素は地球に豊富に存在し、半導体としての安定性にも優れています。
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価電子

原子というのは原子核の回りを電子が回っているものですが、一番外側の軌道を回っている電子は結晶を構成する上で重要な役割を担っていて、価電子と呼ばれます。

ケイ素(Si)原子の電子配置はこのようになっていて、価電子が4個です。

デフォルメして表現するとこのような感じになります。

ゲルマニウム(Ge)も価電子が4個です。 ゲルマニウムの電子配置は
このようになっています。
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リン(P)やヒ素(As)は1個多い5個です。
ホウ素(B)やアルミニウム(Al)やインジウム(In)は1個少ない3個です。


元素の周期表において13族の元素が価電子3個、14族の元素が価電子4個、15族の元素が価電子5個となっています。

これらの話は物理の教科書より化学の教科書の方が詳しいです。
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n型半導体

不純物の無いケイ素(Si) の結晶を左図のようにデフォルメして表してみます。実際には2次元ではなく3次元的に配列されてますし、電子は常に動き回っています。
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この中にヒ素(As)原子 を組み込むと不純物原子を添加することをドープする(あるいはドーピングする)といいます。電子が余るようにドープする場合の不純物原子をドナーといいます。
この場合「ケイ素の結晶にヒ素をドナーとしてドープする」となります。

実際のドナーの割合は100万個に1個というようなレベルです。
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、5個ある価電子のうちの1つが余り、それが自由に動き回るようになります。
この電子を自由電子ということがあります。
しかし、導体中の伝導電子を自由電子、半導体中の伝導電子を単に電子、と区別する教科書もあります。「ほぼ自由電子」とでも呼ぶのが妥当でしょうか。
伝導電子というのは電気伝導(電流)を担う電子のことです。
原子核のすぐ近くの軌道を回る電子は電気伝導を担わず、伝導電子とはいいません。
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このような不純物半導体をn型半導体といいますnegative(負の)の n です。
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p型半導体

ケイ素(Si)の結晶の中にホウ素(B)原子 を組み込むと正孔ができるようにドープする場合の不純物原子をアクセプタといいます。
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、価電子が1つ足りず孔(あな)ができます。これを正孔(またはホールhole
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)といいます。ホウ素原子だけを集めてきても正孔はできません。ケイ素の結晶の中に組み込むからこそ正孔ができます。

このような不純物半導体をp型半導体といいますpositive(正の)の p です。
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キャリア

n型半導体において電子が右に流れていけば電流が左に流れたことになり、電子が左に流れていけば電流が右に流れたことになります。

p型半導体において正孔が右に流れていけば電流が右に流れたことになり、正孔が左に流れていけば電流が左に流れたことになります。

正電荷と同じ考え方です。正孔と正電荷は全く同じものというわけではありません。

正孔のイメージ。白色だったり赤色だったり。(7個のうちの真ん中の原子にがはまることがありますがこれは正孔ではありません、電子です)

正電荷のイメージ。常に赤色。
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電流を担う電子や正孔のことをキャリアといいますcarrier(運搬人)であって career(経歴)ではない。
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ダイオード

接合しても全体に拡散しない

正に帯電した導体と負に帯電した導体を接合しますと、正の電荷と負の電荷が中和し、そのあと電荷が残っていれば全体に拡散します。

しかし、(以下、半導体をデフォルメして表現します)

p型半導体とn型半導体を接合しますと、接合面付近で動き回っていた電子がp型側の正孔にはまり、

元の原子の正電荷と引きつけ合って、それ以上遠くに行かなくなります。シャツのボタンを留めたような状態で安定するのです。実際には電子は常に動き回っています。左図のように固定されるというわけではなく、動き回った上で、その位置の平均が左図のようになる、ということです。
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ヒ素原子やホウ素原子などの不純物原子がイオン化(帯電)したこの領域を空乏層くうぼう といいます。 空乏層のn側は正に帯電し、p側は負に帯電していて電位差が発生しています(内蔵電位または拡散電位といいます)。

空乏層部分は電位(電界)が発生しているがキャリアが無く、
それ以外のn型半導体部分は電子というキャリアが存在しているが電気的に中性で、
p型半導体部分は正孔というキャリアが存在しているが電気的に中性、
という状態になっています。ちょっとややこしいです。
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導体と導体の接合では一体化して電荷分布は全体に広がってしまいますが、p型半導体とn型半導体の接合では一体化せずにそれぞれの特性を保ち続けることができます。

pn接合ダイオード

p型半導体とn型半導体を接合した電子回路部品をpn接合ダイオードといいます。最も基本的な仕組みのダイオードですダイオードの語源は「2つ(di)の電極(ode)をもつ真空管」です。半導体が使われる前は真空管が使われていました。
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上で2次元で表現したpn接合ダイオードをさらにデフォルメして1次元で表現してみます。もちろん実際のダイオードは3次元の立体です。
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順方向

p型側を電池の正極に、n型側を負極につなげると、負極側から電子が供給され、その電子は真ん中の接合面で正孔と再結合 この再結合の際、エネルギーを放出します。

半導体の素材によっては可視光線を出します。発光ダイオード(LED電球)の原理です。

逆に、光を受けて電子が原子から分離することもあります。(『光電効果』参照)

新たな電子の流れを作るのです、発電です。太陽光発電(ソーラーパネル)の原理です。
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、p型側へ流れていきます。 空乏層内部ではn型側からp型側へ電界が発生していたわけですが、電池によってp型側からn型側への電界が発生し、空乏層内部の電界が消滅した、と捉えられます。
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正孔は緑の矢印の位置です。右に流れていってます。


また、電子や正孔はすべてが再結合するわけではありません。

上の段をそのまままっすぐ進む電子もいますし、下の段をそのまままっすぐ進む正孔もいます。
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電子がn型側からp型側へ流れていくということは電流がp型側からn型側へ流れるということです。このpからnへの方向を順方向といいます。


逆方向

逆に、p型側を電池の負極に、n型側を正極につなげると、負極から電子が供給され、正極へ電子が吸い込まれます。これによって空乏層が広がります
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空乏層内部ではn型側からp型側へ電界が発生していたわけですが、電池によってn型側からp型側への電界が発生し、空乏層内部の電界がさらに強くなった、と捉えられます。
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こうなってしまうと電池の負極から供給されようとする電子は負に帯電した原子たちと反発し合って流れ込んで来なくなります。

n型領域の電子も正に帯電した原子たちと引きつけ合って正極へ引き込まれていかなくなります。

電子が流れなくなるのです。 p-nの境界面の電子が上へ飛び出せば電子の流れができるかもしれませんが、そうするには特別に高い電圧を掛けるか、あるいはなんらかのエネルギーを与えるなどしなければなりません。


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電子がp型側からn型側へ流れないということは電流がn型側からp型側へ流れないということです。このnからpへの方向を逆方向といいます。

整流作用

このようにダイオードはp型側からしか電流が流れません。このはたらきを整流作用といいます。

横軸を電圧、縦軸を電流としたグラフを描くと左図のようになります(電流の増え方は非線形です)。 逆方向にもわずかですが電流は流れます。

さらにいうと高電圧を掛ければどちらの方向にも電流は流れます。
つまり厳密にいうと電流-電圧グラフは
こんな感じになります。

しかし高校物理では一方向にしか流れないとすることがほとんどです。
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ダイオードの図記号は または です。三角形のとがった方の向きにしか電流は流れません(流れないこととします)。

たとえばこのように、交流電源とダイオードと抵抗を接続した回路において、

点Bを基準としたときの点Aの電位(電源電圧)がこのように変化するとき(横軸は時間)、

点Dを基準としたときの点Cの電位(抵抗に掛かる電圧)の変化はこのようになります。

点Aと点Cは電位が同じです。点Aの電位が高いときは点Cの電位も高いです。
電流が右回りに流れるときの各位置の電位の様子を水位に例えると、
こんな感じです。
電流が左回りに流れるときは、
こんな感じです。

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ダイオードの向きを変えれば

このようになります。